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がんによる死への不安は克服できるのか? 2

がんによる死への不安は克服できるのか?という問題に対して
エリザベス・キューブラー・ロスの提唱した「死の受容プロセス」が進行したとしても、その不安を克服して幸福な状態に至るのは難しそうな印象でしたので、
今回はまた別の視点から、この問題を考えていきたいと思っています。

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▼がんによる死に対する不安とは?
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前回、がんによる「死」の不安は、大きく3つの理由があると延べさせていただきました。
 自分自身がいなくなってしまう、消滅してしまうこと、つまり「死」そのものに対する恐怖心
 がんが進行していくことで、「痛み」などの耐えがたい苦痛が訪れるのではないかという恐怖
 残された家族や仕事(人生のタスク)がどうなってしまうのか?という心配

一つずつ詳しくみてみましょう!
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▼耐えがたい苦痛への恐怖
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①は少し難しそうなので、②から考えさせてください。
「がん」は、「死」とともに「痛い」「苦しい」などの強い苦痛のイメージとも結びついています。
「現時点で痛みがなかったとしても、がんが進行すれば痛みはドンドン強くなるに違いない。終末期ともなれば、痛みで動けなくなり、ベッドの上でもだえ苦しむ。」というどこかのドラマでみたことがあるようなシーンを自分と重ねて、
死ぬこと自体は「がん」だから仕方が無いと思っているが、「痛い」のだけは避けたいとおっしゃる方はとても多いです。
実際の所はどうなのでしょうか?
日本緩和医療学会が発行している「専門家をめざす人のための緩和医療学」という教科書によると
痛みの有病率は、進行がん、転移のある患者、終末期で66.4%
■病期(ステージ)による差はない

とされています。
つまり、がんが進行すれば必ず痛くなるわけではない(35%の方は痛くない)というのが正しい認識です。
さらに、ステージによらないため、進行すればするほど痛くなるというわけでもないようです。
もちろん、「がんによる苦痛」は「痛み」だけではありません。
緩和ケアの分野では、1)身体的苦痛 2)精神的苦痛 3)社会的苦痛 4)スピリチュアルペイン の4つに分類されます。
この4つの順番に決まりはありませんし、どれがひどいとか、対処が難しいなどの優劣もありません。
強い弱いはあっても、基本的には4つとも抱えていることがほとんどでしょうし、これらは互いに影響しあっており、一つの苦痛がまた別の苦痛を引き起こしたり、増強させてしまったりします。
ですので、4つの苦痛を全人的苦痛(トータルペイン)と呼び、一つ一つ個別に対応するのではなく全体的に考えていくことが重要とされています。
「痛み」は、1)身体的苦痛の中の一つに該当します。
身体的な苦痛には、「痛み」の他に、「息苦しさ」、「だるさ」、「動けない」などの症状や、それらの症状から派生して「日常生活に支障をきたすこと」なども含まれます。
2)精神的苦痛と3)社会的苦痛は、③残された家族や仕事(人生のタスク)がどうなってしまうのか?という心配に相当します。
4)スピリチュアルペインは、①自分自身がいなくなってしまう、消滅してしまうこと、つまり「死」そのものに対する恐怖心に相当すると考えます。
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▼耐えがたい苦痛に対する恐怖への対処法
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話が逸れてしまったので、元に戻します。
耐えがたい苦痛に関して、「痛み」以外にも様々なことがあるとなると、余計に心配、不安、恐怖を感じてしまうかもしれません。
「恐怖心」の話ですので、「耐えがたい苦痛があなたに訪れる可能性はかなり低いですよ」というデータがあったとしても、0%でない限り「恐怖心」をなくすのは難しいのではと考えています。
おそらく「苦痛」に対して、恐怖心をいただく人は、このように考えてしまっているはずです。
「自分は、その痛みに耐えられるだろうか?」
「自分は、その痛みを我慢できるだろうか?」
「自分は、その痛みにうまく対処できるだろうか?」

つまり、「自分一人」で何とかしようとしてもきっと無理だろうから、もしそのような状態になってしまったら大変だ!
ということなんだと思います。
「がん」の痛み(苦痛)を自分一人で何とかしようと思ったら、そりゃあパニックになってもおかしくありません。
ですので、解決策としては、
●自分一人で抱え込まない
●この人(病院)なら私の苦痛を緩和してくれるだろうという、人(病院)を探しておく

いざとなったら頼れる人(病院)があるというだけで、かなり恐怖心は和らぐのではないでしょうか?
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▼まとめ
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どんな苦痛でも一瞬で消せる魔法があれば、苦痛への恐怖心はなくなり、安心して過ごせるのだと思いますが、少なくとも僕は魔法が使えません。
しかし、魔法は使えなくても「どんな苦痛でも必ず緩和できる」と僕は考えています。
それは、僕個人がそのようなスキルを持っているからではなく、「緩和ケアチーム」を信頼しているからです。
是非、何か「がん」でお困りごとがあれば、お近くの「緩和ケアチーム」にご相談してみてください。
きっとよいアイデアをみんなで考えてくれます!

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
また次回もどうぞよろしくお願いいたします。

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