抗がん剤の副作用はどうしてでるの? その6
前回は、体重が減ってしまうことのがん治療に与える影響に関してお話しさせていただきました。
今回は、なぜがんになると体重が減ってしまうのか?
その原因についてお話ししていきたいと思います。
最後までお読みいただけたら嬉しいです。
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▼CAWLとCIWL
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「がん」に関連して体重が減少してしまう原因としては、大きくわけて2つあるとされています。
それは、「がん関連体重減少(cancer-associate weight loss : CAWL)」と「がん誘発性体重減少(cancer-induced weight loss : CIWL)」です。
がん関連体重減少(CAWL)には、がん告知のショックによる食欲低下やがん自体による腸閉塞、抗がん剤治療の副作用としての食欲不振などが含まれます。
がん誘発性体重減少(CIWL)には、がん性疼痛の結果、食事が摂取できなくなってしまったり、がんからのサイトカインによる代謝異常によるものが含まれます。
それぞれをもう少し詳しくみていきたいと思います。
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▼がん告知による摂食不良
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「がん」と告知されたストレスによって食欲が低下してしまうことは十分想定されます。がん診断時のみならず、がん再発時、病状進行時なども同様です。
そのような時期には食欲低下だけではなく、集中力が低下してしまったり、不安や悲嘆・落胆などから日常生活に支障をきたしてしまうこともありますが、人間として正常の反応でもあるため、ある意味仕方がないことだと思います。
多くの方の場合、そのようなショックから2週間前後で徐々に回復し、ある程度日常を取り戻すことができるとされています。
告知後、がん治療が控えているわけですから、この2週間の間に食欲がないからと食事を摂取せず大きく体重が減少してしまうと、前回お話ししたように、がん治療に不利な影響を及ぼしかねないため、つらい中、それでもなるべく食べるようにすることが重要かもしれません。
しかし、2週間を超えて影響が長引いてしまう「適応障害」やより高度な支障が持続してしまう「うつ病」などを併発してしまう方が約10%存在するするとされており、このような状況の方は心療内科や精神科ドクターに相談する必要があります。
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▼腸(消化管)閉塞や狭窄
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人間(だけではないでしょうけど)の構造として、口から入った食べ物はうんちとして肛門から排泄されるまで、一本道になっています。
胃や大腸に「がん」ができてしまい、その部分ががんで塞がってしまったり、塞がるまでではないけど狭くなってしまったりしてしまうと、食べたものがその部分で引っかかってしまいます。
腸の全長は6~8メートルとされておりますが、一本道であるため、どこか一カ所が、例え数センチでもつまってしまうと、腸全体が機能することができなくなってしまいます。
つまり、腸のごく一部が閉塞したたけで、食事が全く摂取できなくなってしまうわけです。
その状態のまま抗がん剤治療を行うことは基本的には難しいので、手術や内視鏡治療(ステント挿入など)で、閉塞を解除することを先に検討することになります。
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▼抗がん剤治療による食欲不振/摂取量低下
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抗がん剤治療の副作用として、食欲不振、食欲低下が起こる可能性は、抗がん剤の種類にもよりますが、かなり高いといわざるを得ません。
一昔前は、抗がん剤による吐き気に付随して食欲が低下してしまう方が多かったのですが、近年の吐き気止めの進歩により、吐き気がひどくて耐えられないという人は格段に減りましたし、ほとんど吐き気なく継続できる人も増えました。
とはいえ、吐き気がなくても食欲が出ない人もいらっしゃいます。食欲不振という副作用が単独で出てしまうタイプということになります。
また、食欲はあっても、口内炎で思うように食べられなかったり、食べると下痢をしてしまうから食べるのを控えている方など、吐き気以外の副作用に関連した食欲不振や食事摂取量の低下も多く経験します。
食欲不振単独のタイプでも、吐き気止めを内服したりすることで食べられるようになる場合がありますが、多くの患者さんは『吐き気止め』といわれて処方されているクスリであるため、吐き気がないから飲んでいないという方が多いです。もし心当たりがあれば一度試してみるといいかもしれません。
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▼まとめ
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今回はがんによる体重減少の中でも、がん関連体重減少(CAWL)を中心にお話しさせていただきました。
次回は、がん誘発性体重減少(CIWL)についてお話ししていきたいと思っています。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
また次回もどうぞよろしくお願いいたします。
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