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がんと「自分軸」

僕がコーチングを勉強するようになって知ったことの中で、
がん治療にこれから臨む方やすでに治療中の方に知っていただきたいと思ったことの一つに「自分軸」というものがあります。
「自分軸」とは、「その人が生きていく上で大切にしたいこと」と言い換えられるかもしれません。

例えば、(お金や時間など)何の制約もなく、どこにでも行けるとしたら・・・
①どこに行きたいですか?(行先)
②それはどうしてでしょうか?(理由)
これらの答えに決まったものはなく、人それぞれ別々のものになるかと思います。
中には「日本なんてどこも一緒。だから絶対に海外!」という方もいれば
「日本にはいいところがたくさんある。それらを一つ一つ回ってみたい」という方も当然いらっしゃると思います。
海外を選ぶ人は、全く違う文化に触れてみたいとか、まだ見ぬ世界を体験したみたいなどが理由かもしれませんし
日本が良いという人は、外国語に苦手意識があったりするのかもしれません(もちろん日本が大好きという理由が一番だと思いますが)。

つまり、この質問に対する答えは、その人の「自分軸」をもとに考え、回答されているということです。

これを旅行ではなく、「がん治療」で考えてみると
①行先→「がん治療」を受けた結果、どうありたいですか?どうなればいい?
②理由→なんのために?何が大事?
となり、これを考えるベースになるのが「自分軸」です。

やり方=「どうしたら○○できる?」は、
学校や会社で教わるため、比較的すぐに思いつきます。

がん治療であれば、手術、放射線、抗がん剤
早期であれば内視鏡で治療したりできるかもしれません

でもその「やり方」が、もし複数提示された時、どれを選択したらいいのか?
とても迷うと思います。
その時の判断基準を「自分軸」にした方が良いですよという話です。

「そんなの当たり前でしょ!」と思うかもしれませんが、本当に当たり前でしょうか?

僕は抗がん剤治療を行うことが専門ですので、抗がん剤治療を行う場合においての経験談ですが、
どれも妥当だと思われるいくつかの抗がん剤治療の方法がある場合、選択肢を提示して、それらの効果や副作用の違いを説明します。
説明でわからないところは都度回答します。
最後にどの治療がいいですか?と伺うと、多くの方から
「俺にはわからないから、お任せします」
「先生が良いと思う方でお願いします」という返事が返ってきます。
僕はどの選択肢を選んでもらっても問題ないと思われるものを提示しているので、僕に任せられても困ります。
「じゃあ、あなたと私でジャンケンして、あなたが勝ったらA治療。私が勝ったらB治療でいきましょう!」
とか、もちろん実際にはしませんが、他人に判断をゆだねる(たとえそれが専門家と呼ばれる人であっても)というのは、こういうのと同じ状況ではないかと僕は思います。

抗がん剤治療を選択する場面だけでなく、がん医療の現場では様々な選択を日々迫られます。
・喉頭がん(のどのがん)で手術すれば治るが、声を失うことになる
一方、放射線治療だと声は残るが、治りきらないかもしれない
・手術ができれば治る状況ではありますが、(タバコの影響などで)肺の機能が低下しており、手術にかなりのリスクがあります。それでも手術しますか?
このようなかなりシビアな選択肢が提示されることもあります。
こういうシビアな選択の場合は、担当医に決めてもらうことは難しく(相談には乗ってくれると思いますが)、最終的にどちらにするかは自分で(家族と相談して)決める必要があります。
決定した方針に則って治療が行われると、もう元の状態には戻すことができません
もし残念ながら治療が良い結果にならなかったとき、やっぱりあちらの方にしておけばよかったとか後悔してもやり直すことができないということです。
ですので、皆さん治療方法の選択にはとても迷います。
迷って結論がでないかもしれないけど、がんという病気の性質上何カ月もゆったりと考える時間的な余裕がない事が多いですので、短時間で何らかの結論を出す必要に迫られます。

こういう決断をする際に、最も大切なことが「自分軸
あなたが生きていく上で大切にしたいこと」は何ですか?
なのだと最近特に思っています。
「自分軸」に沿って考え、導きだした結論であれば、万が一望んだ結果にならなかった場合でも納得が得やすいからです。
一方、家族と相談して決めた場合、最終的には本人も納得して選んだ結論であっても、家族軸(他人軸)が優先された状態の結論という場合も多いのではないかと思います。
その時に結果が悪かった時、
「あの時別の選択肢にしておけばよかった・・・」
「自分はあっちの治療法がいいと思っていたんだ・・・」
という後悔がやっぱり出てきてしまうのではないかなと思います。
これは、その結果の原因が「自分」以外の誰かのせいにできてしまうからなんだと思います。

結論としては、
自分がそう思ったから、こう決めた!
という確固たる意志をもって選択していくと、結果に左右されず納得したがん治療が受けられるのではないでしょうか、というお話でした。

じゃあ、自分軸ってどうやって見つけるの?
という話題は次回にさせてください。

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