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がんと『人生会議』

アドバンス・ケア・プランニング(ACP)という言葉を聞いたことがありますか?
厚生労働省が2018年に『人生会議』という愛称をつけましたので、こちらの方で知っている方も多いかもしれません。
その厚生労働省のHPには、アドバンス・ケア・プランニングについて下のように説明されています。
「あなたの大切にしていることや望み、どのような医療やケアを望んでいるかについて、自ら考え、また、あなたの信頼する人たちと話し合うことを言います。」
今回は、この『人生会議(アドバンス・ケア・プランニング)』に関してお話ししていきたいと思います。

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▼「死」の話題は色々と難しい
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ヒトは誰しも、自分や大切な家族が死ぬということを考えたいとは思わないのではと考えます。とはいえ、こういうのは日本人だけの発想で、諸外国では違うのかもしれません。
神戸新聞社のアンケートでは、
https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/201912/0012955685.shtml
死について考えたりすることに心理的抵抗がある人は37%に上ったとされています。
特に若い人でその傾向が強かったようです。
これはあくまでも「健康な人」の話しであり、進行がんの患者さん、つまり「死」を意識せざるを得ないような方の場合はもっと違う回答になってくるのではと考えます。
特にがん患者さん本人というより、ご家族の方が死の話題にナーバスになってしまっていることが多いような気がします。
「そんな縁起が悪いこと言わないでください!」
「これから治療が始まるという時に、死ぬ時の話しなんてされたら、治るものも治らなくなるじゃないですか!!」
と怒られたことがあります。

また、2019年にお笑い芸人の小籔千豊さんが起用された人生会議のポスターをご記憶されている方は多いのではないかと思います(人生会議、ポスターなどでネット検索すればすぐに見つかると思います)。
小籔千豊さんが酸素投与を受けながら苦しそうな表情をしている患者さん役として大きく写っており、「命の危機が迫った時、想いは正しく伝わらない。」「人生会議しとこ」などのメッセージが書かれています。
この啓蒙ポスターに対して、SNSなどで、がん患者さんやご家族から「誤解を招きかねずふさわしくない」「不安を煽るものだ」などの抗議の声が拡がり、厚生労働省はこのポスターの配布を中止したという、いわゆる『炎上』騒動がありました。

日本では「死」を縁起の悪いものと捉え、ある意味そのことに触れることをタブー視する傾向があると言われています。
ましてや、嫌でもそのタブーに直面せざるを得ない方々にしてみれば、極力避けたいのに、なぜキズに塩を塗るようなことをするの?って感じるのだと思います。

とはいえ、命の危険が迫った状態になると約70%の方が、これからの医療やケアについて自分で決めたり、人に伝えたりができなくなると言われています。
では、患者さん本人が医療者に伝えられない場合は誰が代わりに伝えるのでしょうか?
そしてその代理の方は、本当に患者さんの意志・意向を正確に把握しているのでしょうか?

「死」の話題を避けてきた我々が、いざ相手の死に直面した時に、相手がどうしたいか?
そんなこと僕に聞かれてもわかるはずがないだろうって思ってしまいます。

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▼人生会議(アドバンス・ケア・プランニング)の必要性
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若い頃とは異なり、人間歳をとってくると、同級生が一人一人減っていき、否が応でも「次はオレか?」という意識が湧いてきますので、普段からよく会話する夫婦であれば、時々は「死ぬ時はこんな風に死にたいなぁ~」なんて話しをしているかと思います。
しかし、進行がんなどが発覚し、いざ本当に「死」が避けられないとなるとまた話しが変わります。
そもそも「ピンピン、コロリ」が理想という話しをしていても、「あれ?理想通りにはいかなそうだぞ」と軌道修正をせまられたりします。
「『がん』だといっても、『死』なんてまだ先だ」と思っていた矢先、不測の事態で急に命の危機が迫り、大きな決断を迫られる。
その時に約70%の人は自分でどのようなケアを受けたいか(受けたくないか)を医療者に伝えられない可能性があるというわけです。
そのような場合、患者さんの代理人として家族に意見が託されるわけですが、
やはり問題は、家族とはいえ患者さん本人の意向をどこまで正確に理解しているか?になるかと思います。
昨日まで普段とそう変わらずピンピンしていた。しかし今日は急に容態が悪化し、命の危険が迫っている。
こんな場面を想定した場合、「ピンピン、コロリ」が理想であれば、このままお亡くなりになることこそが、まさに「ピンピン、コロリ」の状況と言えそうですが、
多くのご家族は、患者さんの急な変化に戸惑い、慌てて(もちろんそれが当然だと思いますが)、「できる限りの医療をしてください!」と希望されると思います。
そしてこれはあくまでもご家族の意向であって、患者さん本人が本当はどうしたいかが蚊帳の外の状態になってしまっていませんか?という問題が提起され、
その問題を解決するには、普段から色々な場面を想定して、身近な方と話し合ったり、自分一人で考えたことでも、ノートに書いておくなどして、いざという時の判断材料を事前に用意しておいた方が良いですよ、ということから
人生会議(アドバンス・ケア・プランニング)をしておきましょうと提案されているわけです。
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▼11月30日は『人生会議』の日
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ちなみに、11月30日は「いい看取り、いい看取られ」のゴロ合わせから「人生会議の日」となっているそうです。
11月30日でも良いし、12月31日でも良いけど、年に1回くらいは、「もしもの時」どうしたいかゆっくり考えるのもありかもしれません。

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▼まとめ
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人生会議(アドバンス・ケア・プランニング)についての話題提供でした。
次回は、じゃあ実際にはどんな風に人生会議をすればいいのか?
実践編をお送りできればと思っています。
お楽しみに!

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
また次回もどうぞよろしくお願いいたします。

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