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がんと『他者貢献』

アドラー心理学では、幸福になるための条件として
『自己受容』『他者信頼』『他者貢献』
の3つの条件が必要であるとしています。
『がん』になるといずれの条件も得られにくくなってしまいます。
前回、前々回と、がん患者さんが『自己受容』および『他者信頼』を得るための方法を考えてきました。
今回は、『他者貢献』ができるようになるためにはどのようにしていったらいいかを考えていってみたいと思います。

『他者貢献』とは、読んで字のごとく、他者に貢献することです。
アドラーは、
他者への貢献感がある時に自分に価値があると思える
といっていますし
自分に価値があると思える時に勇気を持てる
ともいっています
『勇気』に関しては、以前にもお話しさせていただきましたが、アドラー的には『課題に取り組む勇気』とされており、
がん患者さんにおいては、
がん治療を受ける勇気
治療を選択する勇気
副作用に対処しようとする勇気
医療者とコミュニケーションをとろうとする勇気
などなど、非常に重要な要素だと思っています。

とはいえ、『がん』になってしまうと
・仕事もできなくなってしまうかも
・体力がおちて、できることが少なくなっていくようだ
・だるいし、やる気力もなく、横になって過ごしていた方が楽
・家族の手助けがないと、何もできない。情けない・・・
などなど
自分の価値がどんどん低くなっているように感じてしまったり
自分は何の役にもたっていないと思ってしまいがちです
そうなると、貢献しようにも自分には何もできることはないとか、そもそも貢献なんかできっこないなどと考えてしまい、どんどん貢献感から遠ざかってしまうことが考えられます。

では、がん患者さんが『貢献感』を得るためにはどうしたら良いのでしょうか?

ご家族や周囲の人のサポートが重要だと思っています。
サポートと言っても、患者さんができないことを代わりにやってあげるというサポートではないです。
・○○してくれて、ありがとう
・○○してくれて、助かったよ

という言葉がけです。
特別なことをしてくれた時だけではなく、普段の何気ない動作、行為に関しても、気がつき、それに対して言葉がけを行うということが重要だと思います。
とはいえ、がんが進行してきてしまうと、体力が低下して、何かをするということ自体が難しくなってきてしまう時がきてしまいます。
そのような時には、『○○してくれてありがとう』などの行為に対する言葉がけ自体がしにくくなってしまうかもしれませんので、
そうなる前から
行為に対する言葉がけだけではなく、
存在に対する言葉がけをしていければと思います
「あなたが生きていてくれるだけで、私はうれしい」
「そこにいてくれるだけで、あなたは貢献しているのだ」

という言葉がけができると、いよいよ体力的に何かをすることが難しくなってしまった場合でも、貢献感を感じられるような状態になっていけるのではないでしょうか。

患者さん本人だけでは、『自分はだれかの役に立っている』『自分には価値がある』『生きているだけで他者に貢献している』とはなかなか考えられないと思います。

では、そのようにサポートしてくれる家族がいない方はどうすればいいのでしょうか?

そのような方は、ぜひとも患者会に参加してほしいと思います。
患者会では同じようなことで悩んだり、苦しんだりしている方々がたくさんいることに気がつかれるかと思います。
そんな人の中に行っても、自分には何もできないとお考えになるかもしれません。
でも、同じがん患者さんでも経過は様々ですし、状況も様々です。
あなたが過去に困ったことで、すでに何らかの方法で克服したことがあったとしたら、その方法を共有することが、現在その悩みで困っている方の役に立ちます。
別に問題が解決していなくてもいいんです。
同じ悩みを共有することだけでも、「あ~この人も同じように悩んでいるんだなぁ~」と感じることで他の人の悩みが少し軽くなります。
それだけでも充分な貢献です。

また、逆に、同じような境遇でもなぜこの人はこんなにも楽しそうなのだろう?と思えるような方もいらっしゃると思います。
楽しそうにしている方を見て、あなたはどう思うでしょうか?
うらやましい?=自分もそうなりたい? でしょうか
であれば、あなたも楽しそうにしてみたらいかがでしょう?
他の人が楽しそうにしている姿は、それだけで見ている人に勇気を与えます。
小さな子がキャッキャッとしているだけでほっこりうれしい気持ちになるのと同じです。

楽しそうにすることが難しければ、笑顔だけでもいいんです。
笑顔をほかの人に向けてあげてください。
きっとその方も笑顔になると思います。
その人があなたの笑顔を見て、少しでもうれしい気持ちになったのなら、あなたはその方に少し勇気をあげたことになります。
勇気づけは十分な他者貢献だと思います。

また、相手の方にも
「○○してくれて、ありがとう」
「○○してくれて、助かりました」と言葉がけをしてあげてください。
相手の方の貢献感がアップすることでしょうし、そのことにあなたも貢献したことになります。
可能であれば、何かしてもらった時だけではなく
「あなたがそこにいてくれるだけで、私はうれしい」
などの、生きているだけ、存在してくれているだけ、それだけであなたは私に貢献していますよというメッセージが送れるようになると
自分についても、生きているだけで他の人の喜びになっており、貢献していると思えるようになってくるのではないでしょうか?
こんな他者貢献感が持てたらすばらしい事ですね~

ということで、3回にわたり、がん患者さんが幸せ・幸福を感じるためにはどうすればいいのかについて考えてきました
アドラーの提唱した幸福の三条件:『自己受容』『他者信頼』『他者貢献』
これらは、単独ではなく、それぞれが相互に作用しあって幸福感が高まっていきます。
三条件を一度に得ようとするのではなく、これなら自分にできそうだという項目から少しずつ行っていくことで、他の項目にも関与していく勇気が持てるようになるのだと思います。
なので、まずは自分ができそうなことから、幸福への第一歩を踏み出してみませんか?

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