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沖澤のどか「新世界より」 アメリカ・オーケストラ漫遊(25), Quebec City, Canada

 モントリオールのコンサートの後、鉄道で3.5時間、旧市街が有名なケベックシティに到着。鉄道は独立シートでスピードも速くアメリカのAmtrakよりも快適。夜10時過ぎに着いて、駅から徒歩圏内に取ったホテルに到着。
 翌日は朝から-20℃近い極寒の中、旧市街を散策した。気温の数値は低いがビル風が無いせいかモントリオールよりは過ごしやすく感じた。旧市街の商店街は歴史的な建物が立ち並び、いろいろなお店やカフェなどが見られた。ランドマークである高級ホテル、シャトーフロンテナックと流氷に覆われたセントローレンス川に挟まれた街並みは一見の価値があると感じた。

 午後のコンサートに向かう頃には雪が降り始めた。会場のケベック劇場は旧市街から歩いて20分ほどの新市街に建てられていた。新市街にも商店やカフェ、土産物店が軒を連ねるモールがあるエリアがあり、その近くだった。

劇場外観
劇場の内部、開場待ちのロビー

2024年2月18日 ケベック交響楽団

2/18/2024, Sun, 2:30 pm, @ Grand Théâtre de Québec, Québec, Canada
Orchestre Symphonique de Québec
Nodoka Okisawa, conductor
Edgar Moreau, violoncelle


  • La Moldau / Smetana

  • Concerto pour violoncelle / Korngold

  • From Jewish Life / Bloch

  • Symphonie n° 9 « Du Nouveau Monde » / Dvořák

 30分前にホールが開場した。劇場型で舞台の幅が広く客席は一階と2階、3階の横と後方にテラス席があるスタイル。一階中央の下手寄りの座席だった。
 今回のコンサートの目当てはなんといっても沖澤のどかさんの指揮だ。これまでアメリカで数々のコンサートに足を運んだが、日本人指揮者の演奏を聞くのは初めてだ。欲を言えばアメリカの名門オーケストラで聴きたいところだが、それはまたの機会に取っておこう。沖澤さんは数年前に国際コンクールで賞を取られたときに名前を聞いていた。その方の演奏をケベックシティで聴けるとはなんと幸運なのだろう。
 「新世界より」は実はオーケストラで生でちゃんと聞くのは初めてかもしれない。高校のときに吹奏楽でやったものだからその記憶が強く、あまり聞けないでいたのだが、このコンサートに向けて改めて聴いてみると、やっぱり押しも押されぬ名曲だった。ソロの旋律などひとつひとつが鳥肌モノだ。

 さて、演奏が始まってみると最初のスメタナ「我が祖国」でもうこの日は名演間違いないと確信できた。当たり前だが普通に指揮が上手い。立ち居振る舞いが堂々としており、身振りに無駄がなく奏者を自在に操り音楽を奏でていると感じられた。
 チェロ独奏のある2曲はあまり馴染みのない、Korngoldの協奏曲とBlochの”From Jewish Life”だった。チェロの音色の柔らかさと、ソリストの気迫を感じられたし、ここでも指揮がソロに寄り添うようにオーケストラをうまくコントロールしていたと思う。Blochの曲はチェロ界隈では有名なのだろうか。チェロ独奏とピアノの音源がApple Musicで出ていたが、オーケストラとの協奏曲形式はあまり音源がなかったように思う。でも、現代音楽のようでありながら、チェロで歌い上げる旋律があったりと、とても聴きやすいいい曲だった。
 曲間で司会の人が長い時間曲の説明など喋っていて、フランス語だから何を言っているのかわからないのだが、日本語であれだけ毎回喋られたら邪魔に感じてしまうだろうなあと思った。指揮者の紹介も「ノドカ・オキサワ」と言えてなかったし、最初だけだったら面白かったと思うのだが。
 ドヴォルザーク「新世界より」はもう休憩の間からワクワクしながら待っていた。曲自体とても有名だし、やれば聴衆受けはいいに決まっているのだが、それでもそれぞれの曲の管楽器のソロの流れ、曲の間合いなどがよかったのは指揮によるところ大だと感じた。特に第2楽章のスローテンポでの流れの良さはとても印象的だった。この演奏会は始めから興奮状態になってしまいあまり冷静には聴けなかったが、それくらいすばらしいパフォーマンスだった。この日は本当に大当たりの演奏会だった。
 沖澤さんはドイツを拠点に活動されているようだが、今後はもっと有名なアメリカやヨーロッパのオーケストラで活躍されるのが楽しみだし、日本でも指揮される機会があるのならぜひ聴きに行きたいと感じた。

参考音源

ヤクブ・フルシャ指揮 バンベルク交響楽団
バンベルク交響楽団はこの音源で初めて聴いたが、大編成オーケストラの充実感を楽しめるいい演奏だ。ヤクブ・フルシャはアメリカでもトップオーケストラを指揮する現代の名指揮者の一人だ。

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