見出し画像

SynthesizerV表現調整テクニック講座 音素編 #01 SynthVの音素

こんにちは。SynthV音屋の十竜です。
この講座はなんぞや、という方はまずは導入編を読むことをおすすめします。
SynthesizerV表現調整テクニック講座 導入編
※音素編は基本的に日本語特化です。


音素編 #01 SynthVの音素

SynthVに限らず音声合成ソフトに歌詞通りに歌ってもらうために音素というものが存在します。通常は意識せずともノートに歌詞を入力していけば自動で音素が割り当てられ、そのメロディと歌詞で歌ってくれます。

しかし、ただ入力するだけでは全てのノートがデフォルトの設定のままとなり、発音による表現が失われたままになってしまいます。またそのままでは目標とする発音になってい可能性もあります。

そして発音とは口や喉の動きによって変化するものなので、前述のことも含め、音素を調整するというのは「音素による表現」、また「口の動きを作る」ことを突き詰めることになります。

音素の表記について

今後の記事においてSynthVの音素記号と国際音声記号を使用するため、それぞれの音素を表記する際には記号で囲って表記します。

SynthVの音素は || ~ || で表記します。
例 : || chifuyu ||

国際音声記号は / ~ / で表記します。(IPAの簡略表記の記法です。)
例 : /tɕiɸɯjɯ/

SynthVの音素

まずは基本中の基本、そもそも歌詞を入力したらどんな音素が割り当てられるのかを知っておかなければなりません。

言語別の音素

SynthVの公式サイトで音素一覧が公開されているので、最初にこれを確認しましょう。興味があれば、英語、中国語、広東語の音素も一度目を通しておくとよいでしょう。

Synthesizer V Studio 音素記号一覧表
https://dreamtonics.com/ja/svstudio-resources/

母音、子音と分けられた上で見たことのある記号が並んでいます。それもそのはずで、SynthVを触っているなら歌詞を入れたときにこの記号を毎度のこと見ているはずです。今まであまり意識しておらず記憶にないという場合でも、これらはヘボン式ローマ字やキーボードでの日本語入力と一致するものが多いので、そこまで突飛なものという印象は受けないでしょう。

その上で子音の方には破裂音、摩擦音という聞きなれない単語も併記されています。これはどのようにしてその子音を発音するかという調音方法を表します。

日本語での音素
ヘボン式等と大きな差はない

共通の音素

先ほどのページで既に目にしているかもしれませんが、全言語で共通で用意されている音素があり、|| cl, sil, br || の3つです。

|| cl || は声門閉鎖音と定義されており、その名の通り声門を閉じて発音される音です。日本語の「っ(促音)」に割り当てられています。

|| sil || は無音を表し、通常はノートの配置されない箇所に全面的に置かれています。

|| br || は息を表し、主に歌う直前のブレスに使用されます。

共通音素の 'cl, sil, br'

もちろんこれらの音素も表現調整の過程で多大に活用します。

音素の「長さ」と「強さ」

ノートプロパティの下部では割り当てられた各音素の「長さ」と「強さ」を調整することができます。得られる効果はその名前の通りです。子音、母音をどれくらいの長さで発音するか、またどれだけはっきりと、もしくは曖昧な発音にするかは表現において重要なポイントになります。

「さ」と入れた時の 's' の「長さ」「強さ」の比較

音素発音のタイミング

ノートプロパティには「ノートオフセット」というパラメータも存在します。これは、ノートの発音タイミングを前後させるパラメータです。
発音時間が短くて少しずらしたりとか、少し遅めに発音させることで強いためを表現したりで使用します。

BPM:120で「ノートオフセット」を-100msにした場合
発音開始が大きく前にずれる

音素編において重要な点はノートに対しての各音素の発音のタイミングです。
子音+母音の音素で構成されたノートの場合、子音はノートの直前で発音され、母音がノートと同じタイミングで発音されます。

子音と母音の発音位置

このことは先に説明した音素の「長さ」と強く関連し、この二つをうまく調整することで自然な発音を作り出せるようになります。

「下書き」となる音素調整

ここまでSynthVの音素の基本的な部分の解説をしてきましたが、そもそも音素調整は何を目的として行うのでしょうか?

音素というのは主に子音と母音から構成されます。その子音と母音は口の動きで変わる音です。

つまり「音素を調整する」というのは「口の動きを作る」ということになります。音を作る「口の動き」というのは歌のある楽曲において歌詞を認識するための重要な要素となります。

それ以外にも音素ごとにピッチが変わったり、テンションやブレスなどが変化したりするため、音素の調整はどの作業よりも早く行う必要があります。

これらのことから、音素調整はSynthVの調整における「下書き」といえます。下書きを蔑ろにしてしまうと、理想通りの歌い方ならなかったり、表現に限界が出てきたりするため、多少時間がかかってでも丁寧に行うべき作業でしょう。

変更履歴

2024/01/21 SynthVの音素表記方法の変更

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?