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SynthesizerV表現調整テクニック講座 手動ピッチ調整編 #02 ピッチ推移の基本 + しゃくり、フォール

こんにちは。SynthV音屋の十竜です。
この講座はなんぞや、という方はまずは導入編を読むことをおすすめします。
SynthesizerV表現調整テクニック講座 導入編
※本記事は日本語を使用しています。英語・中国語でも応用可能ですが、解釈が大き変わる場合もあるのでご注意ください

手動ピッチ調整編 #02 ピッチ推移の基本

自動ピッチ調声を手直しするために手動で調声する……とはいってもどこから手をつければよいのかわからないなんてことになってしまいます。
最終的にはものによる、という便利な枕詞は置いておいて、まずはピッチ推移で変化する部分に目をつけていきましょう。

ピッチ推移で変化するのは、一般にしゃくりやフォールと呼ばれる技術をはじめとしたノート間やノート終端のピッチ移動です。これらは自動ピッチ調整でいい感じにやってくれたりはするものの、やはり意図通りにいかない部分というのは出てくるものです。

なら己の手でやってしまえばいいじゃない。ということでピッチ推移の基本的な扱い方の解説です。

ピッチ推移の性質

まずはピッチ推移の性質を細かく見ていきましょう。
早速ですが、新規にノートを置いてピッチ推移の値を見てみましょう。

ピッチ推移の初期値。
値がすでに入っている。

置いたばかりですが長さと深さにすでに値が入っていますね。つまり初期状態でわずかながらにパラメータが影響しています。何もせずに自動ピッチ調整をすれば、この状態でピッチが生成されます。とはいっても小さい影響なので、自動ピッチ調整でここを気にする必要はありません。

その影響は一体何なのかの確認がてらパラメータをいじっていきましょう。
まずは「長さ」のスライダーを変化させてみてください。

ピッチ推移 - 長さ

長さを変えると、ノート間でピッチの変化する時間が変化します。つまり、このパラメータでしゃくりやフォールの時間を制御します。
そして頭の片隅に入れておいてほしい要素として、長さを変えると前後でつながっているノートのピッチ移動も変化します。

では、次に「深さ」を変えてみましょう。

ピッチ推移 - 深さ

深さを変えると、ピッチがノートの高さに移る前のピッチを変えることができます。つまりどれだけの差でピッチを変化させるか、ということです。
こちらもですが、前後のノートのピッチ変化に少し影響します。

最後に、「タイミング」を変えてみましょう。

ピッチ推移 - タイミング

タイミングを変えると、長さ、深さを含めたピッチ変化が発生する位置が変わります。
ピッチ変化の位置はノート打ち込み時に決めておいたほうがよいので、「タイミング」を直接そのままの意味で使うことはあまりありませんが、「長さ」「深さ」による前後のノートへの影響等を調整する目的で約に立ちます。

手動調整をする前に

手動調整をする前に、自動ピッチ調整で生成されたピッチの精査を行う必要があります。精査と言っても難しい作業ではなく、生成されたピッチが想定とどれくらい差があるのかを考えるだけです。

例えばしゃくりを入れたい箇所で全く想定通りになってない場合、生成されたピッチは一旦削除してから作業したほうがよい場合が多いです。というのも、手動で大きくピッチを変える場合、生成されたピッチは邪魔になることが多いです。

ピッチ推移に手をいれる前に生成されたピッチを削除

逆にほとんど想定通りだけど少し調整したい場合にはわざわざ全部消して手動でやり直す、なんてことは不要です。生成されたピッチを生かして、少し手を入れればいいのです。

しゃくりを入れる

しゃくりとは、低い音から入って本来の音程の発音をする、という歌唱技術です。ピッチ推移の機能を利用すればすぐにできそうですね。

やり方は簡単です。「長さ」と「深さ」を変えるだけです。なお、しゃくりにおいてはピッチ推移の「左」のパラメータで設定します。

しゃくり(ノート単独)

より実用的に、連続するノートでもやってみます。

変化の少ないノート間のしゃくり
変化の少ないノート間のしゃくり

やり方自体は簡単ですが、問題となるのはこれらのパラメータをどう設定すればいいか、です。無頓着にやってもただ下手な歌い方になってしまうので、うまく値を設定する必要があります。

まず「長さ」ですが、基本的にはピアノロールのグリッドを目安に設定するとよいです。ピッチ移動といえどリズムに従って長さを設定すれば、不自然にはなりにくいです。

そして「深さ」ですが、通常は1-2つほど下の高さから上がっていくようにします。直前のノートの高さから始めると、大きい音程差がある場合に無理のあるピッチ移動になる可能性があります。

フォールを入れる

フォールとは本来の音から少し低い音に下げる歌唱技術です。フレーズの終わりで使われるものなので、ノート終端側の「右」で調整します。

技術としては別のものですが、しゃくりと同じ様な方法で表現できます。「右」の「長さ」「深さ」の値を調整するとノート終端のピッチが下がります。

フォール

フォールは長く、深くしてしまうと不自然になってしまいますので、短く、大きくても1-2ほどピッチが下に移動する程度で留めると自然になります。
ゆっくりと下がって最後は大きく落とす、というような表現をする場合はピッチ推移のみでは対処できないので、パラメータのウインドウも活用しましょう。

最後に

ピッチ推移で行う調整はパラメータも少なく、また一般に知られるような技法の表現にも繋がるので、比較的手をつけやすいかと思います。自動ピッチ調整で気になったらどんどん試してみましょう。
……ただし、用法用量には注意です。入れ過ぎればかえって音痴な歌い方になりかねません。

手動ピッチ調整編 #03 はビブラートの基本です。


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