SynthesizerV表現調整テクニック講座 ノート調整編 #03 ノートの位置と長さ

こんにちは。SynthV音屋の十竜です。
この講座はなんぞや、という方はまずは導入編を読むことをおすすめします。
SynthesizerV表現調整テクニック講座 導入編
※本記事は日本語を使用しています。英語・中国語でも応用可能ですが、解釈が大き変わる場合もあるのでご注意ください

ノート調整編 #03 ノートの位置と長さ

ノートの位置と長さ、すなわちどのタイミングから発音し、どれくらい伸ばすか、ということですが、基本的でありながら頭を悩ませることも多々ある要素です。歌唱表現として、はたまた歌いやすさからといった理由で楽譜上の音符からは少しずれていることはよく見られる現象です。
今回は基本からそのような歌い方を視野に入れた内容を解説していきます。

音素ごとのタイミングと長さを想定する

ノートの位置と長さを考える際、想定すべきことは多くありますが手順として最も近くにあるのはノートごとに設定される音素のパラメータです。音素とは、SynthVにおける発音の最小単位であり、ノートの発音を決定づけるものです。

ノートの位置と長さはまずこの音素ごとのパラメータがどうなるかを考えることが基本となります。
それでは、本題に入りましょう。

ノートの基本

まずは楽譜通りにノートを打ち込むことを考えます。見たまんまその通りに打ち込めばいいので難しくはありません。midiを用意すればそのまま読みこんで歌詞を入力すればよいです。

AM 8:00 - APP START 歌い出し 楽譜 
AM 8:00 - APP START 歌い出し SynthV

楽譜通りに打ち込んでいるのでその通りのタイミング・長さで発音されるはずです。再生してみれば当然そうなっていることが確認できます。

では、歌いやすさや歌唱表現を考えた場合、それらは理想的な配置になっているでしょうか?

答えとしては、そうはなっていない、となります。
ノートの位置や長さを調整するケースにはどのようなものがあるのかをみていきましょう。

等分か、跳ねるか

まずは同じ長さ・高さのノートが連続する場合です。特に8分音符以下の細かいノートときに考えます。
次の例では8分音符が連続したメロディとなっています。

8分音符の連続

連続するとはいっても延々と同じ高さの8分音符が続くことを指すわけではありません。あくまで1拍の中で続く場合です。

このノートの変化ですが、結果としては2つのパターンのどちらかをとることになります。1つ目は変化せず8分音符2つ、2つ目は符点8分+16分です。

結果となる2つのパターン

どちらを取るべきかを考える時、符点8分+16分になるかを考えます。指標としては3つです。

  • 楽曲のテンポは?

  • (子音+)母音+母音か?

  • (子音+)母音+子音+母音か?

まず楽曲のテンポですが、基本的にテンポが速いほど跳ねるような歌い方をする方が歌いやすくなります。逆に遅い場合は下手に跳ねない方が綺麗にまとまることが多いです。

次に(子音+)母音+母音か?ですが、これは「あい(ai)」や「かい(kai)」のような発音を指します。同じ高さで発音される場合は後ろの母音の発音が弱くなることがありますので、前のノートを長く取ることで滑らかな発音になることがあります。

(子音+)母音+母音か?

そして、(子音+)母音+子音+母音か?ですが、「あき(aki)」や「かき(kaki)」といったものです。先程とは違い、2文字目に子音が含まれます。
発音に子音が挟まるため、母音同士のときのような滑らかさはありませんが、テンポが速かったり、細かな発音が求められる場面においては2文字目を短くとるという選択が多くなります。特に「さ行(s)」「ざ行(z)」「しゃ行(sh)」「つ(ts)」「ち(ch)」においては子音が長くなるので、それを見越してノートを短くするとよい効果が得られます。

子+母+子+母


フレーズ終端のノート

一拍の話の次は拍から溢れるケースです。
どういうときなのかといえば、例えばフレーズの終わりで歌詞が少し溢れるとか、ロングトーンのノートに2音あるとかです。
言葉だと分かりにくいので、例を出すとこんな感じです。

フレーズ終端のノート…のつもりで

まず一音目を伸ばしてその後どうするかが考える要素となります。先程の例の全音符であれば、2音目を次の小節の頭に持っていくか、4拍目に入れるか、さらに詰めて最後の半拍にするか、といったような選択肢が生まれます。

ノート配置の選択肢

ではどれを選べば良いのでしょう?
もちろん単純明快な答えは感覚によるもので、拍を数えながらシミュレーションしてみるのが一番です。しかしこれだけでは案外理想通りにならないこともあります。

少し音声学が絡みますが、前項と同じで2音目がどういった発音をするのかがポイントとなります。2音目が母音のみであれば感覚による配置だけで問題ないでしょう。

子音が絡む場合は少し事情が変わります。こちらは前項とは異なり「さ行(s)」「ざ行(z)」「しゃ行(sh)」あたりが特に変わってきます。
これらの子音は摩擦音と呼ばれ、発音の開始タイミングが他と比べても非常に速く、子音の音が持続します。そのため、これらの子音で思ったタイミングで発音されないと感じた場合は、ノートを後ろにずらしていく工夫が必要になります。また、目標とする表現によっては子音のみでノートを配置することもあるでしょう。

摩擦音とノート

ノート配置を作詞から考える

先程から子音が母音がと言っていますが、ここでの内容は作詞の段階からある程度考慮することが可能です。
最初から2音の場合で解説していますが、この考えを応用してメロディを打ち込んだ段階では一つのノートであっても、そこに2音を割り当てることが容易になります。
さらに一つ前のノートにも2音目を割り込ませることで、より巧妙な作詞にも対応できます。(ただし複雑になる分ゆったりとした曲調に合わなかったり、かえって歌いにくくなったりしますので、使う場所は選ぶようにしましょう。)

1つノートに2音割り当てる
前のノートに1音割り込ませる

最後に

今回はノートの位置と長さに関する考え方を解説しました。
#02と同様に、ノートを打ち込むという作業においては完成形をイメージし、この後の作業を想定するということが重要です。
長くなってしまいましたが、また次回にご期待ください。次回は……高さ位置長さだけで結構ボリューム出ちゃったのでどしうようか……


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