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ひるぜんアクションツーリズム’24体験レポート!「slow to the future」蒜山の可能性と課題に触れた3日間。

昨年に続き2年目のとなる「ひるぜんアクションツーリズム’24」を9月下旬に開催しました。

ひるぜんアクションツーリズムとは、全国のクリエイターやビジネスパーソンを対象に、岡山県真庭市の蒜山(ひるぜん)で現地事業者の課題や地域にあるマテリアルに出会い、新しいプロジェクトを生み出すこと目的とした2泊3日のプロジェクト創出プログラムです。

今回は「slow to the future」というテーマで、蒜山の自然や歴史、文化を学んだ上で、蒜山ならではの課題やマテリアルに出会い、共にアクションを生み出すことを目指しています。
(ひるぜんアクションツーリズムの詳細はこちら)

現地ツアーに関しては「スローアクション共創コース」と「スローマテリアル活用コース」に分かれて実施。全国から20名の方が参加してくださいました。

本レポートでは、運営メンバーより、3日間の現地ツアーの様子をお届けします!


蒜山の歴史・産業・文化の変遷を体感できる「蒜山郷土博物館」

最初に、蒜山の人たちの歴史と暮らしを知るため、「蒜山郷土博物館」へ行きました。

案内してくださったのは館長の前原さん、蒜山の歴史や文化を知り尽くした方です。
軽快に、蒜山の土地柄の特徴やそこから育まれた産業や文化について語ってくださいました。

前原館長より、郷土博物館内を案内頂いている様子

「蒜山は、厳しい自然環境の中で、創意工夫により生活や産業を柔軟に適応させてきた歴史がある」と、前原艦長は語ります。例えば、蒜山は、大山の麓にあり火山灰が降ることにより酸性の土壌だったため、作物が育ちにくい厳しい環境でした。その中で、草原をつくり、牛の飼料として使い、牛の糞を土に混ぜ肥料とすることで土壌の質を変化させました。

その他にも、豪雪地帯である蒜山の冬の作業として、蒜山に自生する「がま」を使い、草履や手提げ、雪靴などの生活用具「がま細工」や、短い夏を楽しみ神に祈りを捧げるための無形文化遺産である大宮踊など独自の文化が生まれました。
まさに、「自然環境と共に営みを育んできた」蒜山の地域性を紹介してくださいました。

大宮踊りの映像を見ている様子

蒜山の風景を象徴する美しい「草原」は暮らしの必需品だった。

蒜山の風景を象徴する「草原」に向かいました。自然再生協議会の千布さんに案内してもらい、山焼きや茅刈りなど、草原を保全する活動の一端を伺いました。

千布さんより草原の説明を受けている様子

蒜山の草原は、一年に一度「山焼き」が行われることで維持され、その自然が保全されています。もともと、草原は、牛の飼料として、また草原からとれる茅は家屋の屋根材として使われ、人々の暮らしに必要とされていました。一方で、近年自然を使うことが減ってきており、草原自体が少なくなってきているそうです。

蒜山らしい風景や特有の自然環境を保全するため、人と自然はどう共生していくべきなのか。そんなことを考える時間になりました。

一面に広がるススキ

蒜山の地元民に愛されるまちの拠り所「粋呑房」

1日目の締め括りは、蒜山の地元の方々がこよなく愛するジビエ料理を提供する居酒屋 粋呑房(すいとんぼう)さん。

蒜山で生まれ育った店主の智子さんから蒜山の魅力をお伺いしつつ、いのしし餃子など粋呑房さんの名物のお料理も美味しく頂きました。

1日目の交流会。これからの3日間に期待を込めて乾杯!

また、今回のツアーではクリエイターから学生、起業家、会社員まで幅広い方にご参加頂いています。
異なる属性の方々で3日間を共にすることもあり、初日の感想を共有しながら、参加者同士の相互理解がぐんと深まる時間になりました。

粋呑房さん、素敵なお料理と空間をありがとうございました!

マテリアル活用コースの訪問先のご紹介

珪藻土採掘跡地から自然発生した壮大な景観を前に

昭和化学工業の珪藻土採掘跡地を訪問しました。かつて湖底だったこの場所は、採掘後に放置された結果、貧栄養の土壌と地下水が独特の生態系を生み出し、絶滅危惧種を含む多様な生物が生息する場所となっています。参加者の皆さんはじっくり観察したり、自然の音に耳を傾けたり、この土地のポテンシャルに思いを馳せ、昭和化学工業の山本さんに熱心に質問したり、思い思いに時間を過ごしました。

珪藻土跡地の成り立ちを聞く様子

その中で「珪藻土が年間わずか2ミリしか積もらない」という話は、この場所の再生と活用を考える上で、短期的な視点だけでなく、長期的な視点の必要性を改めて感じるものでした。まさに「slow to the future」を象徴するこの場所。自然のリズムと人間の営みが交差し、持続可能な未来への希望が垣間見えました。

圧巻の景観を見ながら、活用アイデアを考える

蒜山の農地を守りたい。野菜の利活用・農業の担い手不足に向き合う蒜山アグリセンター

続いて、蒜山アグリセンター(JA)の本守さんを訪問しました。
蒜山は戦後、西日本を中心にシェアを誇った蒜山大根というブランド大根の産地でした。気候変動などの影響を受け、寒冷地で生育しやすい野菜を育てることが難しくなり、時代に合わせて収穫する作物の見極めや変化への対応が求められています。
その他、農地が縮小傾向にある中で少しでも担い手を確保するために、重量野菜の販路拡大から兼業農家が生まれやすい仕組みづくりまで様々な課題が山積です。

蒜山の農業の歴史や変遷・課題を伺う様子

ツアーでは、本守さんにお話を伺うとともに予冷装置という出荷する野菜を保存する設備のある倉庫にご案内いただきました。
参加者からも、普段当たり前のように食卓に並ぶ野菜の流通過程や課題を目の当たりにし、
「JAの立場として、扱うモノの繊細さ、市場の公平さ、担い手不足等の話を初めて聞き、消費者と農家としてのシンプルなポジションだけで考えてはいけないことを強く感じた。」という声が上がっており、他人事ではない問題であると改めて感じる時間でした。

大根等の蒜山の重量野菜を保管する予冷装置の説明の様子

夏のスキー場活用アイデアは無限大

蒜山ベアバレースキー場を訪問し、支配人の亀山さんにお話を伺いました。亀山さんからは、夏場のスキー場活用に向けた想いを共有頂き、参加者一同で、意見交換を行いました。

会議室での一枚

シアターや天空レストラン、音楽フェスなど参加者の皆さんが「スキー場でやりたいこと」を自由に発言し、多様なアイデアが飛び交いました。

お昼寝、座禅、星空観察など、蒜山のゆったりした時間を楽しむような、まさにSlow to the futureの世界観が参加者にも共有されたことを確認できた時間でした。

斜面を登り、思い思いに過ごす様子

アクション共創コースの訪問先のご紹介

地域材の価値向上のためにできることとは?

真庭市二川地域で「木工房もものたね」として家具づくりを行う元井さんご夫妻からお話を伺いました。

元井さんは、家具職人として活動する傍ら、蒜山の森に入り魅力を伝える「真庭の森案内人ネットワーク」というプロジェクトを立ち上げました。その活動は、地域材のストーリーや体験に触れる人を増やすことが、地域材の価値向上につながるという思いで実施しています。

元井さんより森の案内をしてもらいました

今回のツアー中、実際に参加者とともに蒜山の湿原に入りながら、森について学んでいきました。檜や杉、コナラなど、日常でよく耳にする木がどんな風に森で育っているのか、実際に目で見て体感します。参加者は、この森から生まれた木材が家具やプロダクトに使われることを知り、地域材を使う価値について実感できる機会となったのではないでしょうか。

湿原再生で生まれた木材(左端)の活用を考えながらの集合写真。

蒜山の日常を味わう滞在型の楽しみ方とは?

続いて、蒜山にて11棟のコテージを運営するピーターパン オーナーのスケンバリありささんを訪問しました。
ありささんからは、小学4年生の時に蒜山に移住してからコテージの経営をするに至るまでのお話や、観光シーズンのピークが偏っているが故の人材確保の難しさなどの課題を共有頂きました。

ありささんに蒜山の観光事情を伺う様子

蒜山は、観光地として有名な一方で、ありささんが伝えたいのは「日常の暮らしの豊かさ」だと言います。
"蒜山時間"と言われることもある程、蒜山にはその土地・空気感ならではのゆったりとした時間の流れを感じます。
その時間に身を委ねながら過ごす"滞在型の観光"を広められないか、について参加者とともにディスカッションをしました。
ありささんの散歩コースである白樺(しらかば)の丘に立ち寄り、参加者それぞれが自由に過ごし、蒜山時間を味わいました。

ありささんの散歩コースの白樺の丘から見える景色が圧巻。

人と自然の出発点。観光文化発信拠点の「GREENable HIRUZEN」

誰もがサステナブルの価値を身近に体感できる観光文化発信拠点施設として、2021年にオープンした「GREENable HIRUZEN(以下、GREENable)」。ここでは、阪急阪神百貨店から真庭市役所に出向し、立ち上げから携わっている佐藤さんにGREENableのこれまで取り組んできたことや未来への展望を伺いました。

GREENableで取り扱う商品についてお話を聞きました

最初にGREENableの施設全体を案内して頂いた後、GREENableの取り組みについて学び、4年目となる今年は、「ブランドとしての拡張期」として捉え、自然共生の新しいスタイルを模索したいと、佐藤さんは話します。その後、実際に売り場の見学をしながら、これまで取り組んできた地元の企業と連携した商品や、GREENableのブランド基準にあったセレクトされた商品の説明を受け、思わず手に取りたくなるプロダクトに参加者も共感していました。

佐藤さんからこれまでのGREENableについて伺いました

「ものづくりの魅力と技術を次世代へ繋ぐ」を体感する

わらじあーむ。の慈観さんによる藁編みワークショップを実施していただきました。ワークショップを通して、参加者それぞれが個性豊かな作品を制作。

最初は慣れない手つきながらも、次第に藁を編むことに没頭していく参加者の姿が印象的でした。 

また、慈観さんからは、フェアフィールド・バイ・マリオット岡⼭蒜⼭⾼原から軌道に乗ったものづくり作家としてのキャリアの話をお伺いしつつ、その過程で培われた独自の思想や価値観についてもシェアいただき、参加者にとってとても学びの深い時間となったのではないでしょうか。 

地域の資源である藁を用いて芸術的なしめ縄アートを作り出す慈観さんの活動に触れ、ものづくりの魅力と技術を次世代へ繋いでいく大切さを改めて実感しました。

慈観さんによるわら編みのデモンストレーションの様子

蒜山野菜をふんだんに使ったケータリングを囲む交流会

2日目の夜は、蒜山エリアで出張料理やケータリングを提供する「月の石」さんにご協力いただき、シェアオフィスひとときにて交流会を開催しました。

2日目の訪問先の皆様と対話をしながら、さらに蒜山エリアの課題や可能性を探索しつつ、参加者同士の相互理解を深める機会となりました。

月の石さんの繊細で美しいお料理

「月の石」主宰の樋口さんより、蒜山野菜を活用したお料理をとお願いしていたこともあり、色鮮やかでありながらお野菜中心の心身に優しい食卓をプロデュースして頂きました。

訪問先の方と交流を深めている様子

蒜山でどんなプロジェクトが生まれるのか。2日間のインプットを経てアイデアを生み出します。

アクション共創コース、プロダクト活用コースともに最終日は、プロジェクトのアイデアをまとめるためのワークショップを行いました。2日間のインプットから、自身の活動や経験と組み合わせた「プロジェクトの種」を考える時間です。

グループワークの様子

午前中は個人ワーク、その後考えたアイデアを2〜3人のチームごとに発表しブラッシュアップしていきます。最後に、ゲストコメンテーターも交えて最終発表を行いました。思いもよらない視点からのアイデアやプロジェクトの構想が生まれ、有意義な時間となりました。

どんなアイデアやプロジェクトが生まれたのか。1月29日(水)に開催される報告会で発表予定になります。ご興味のある方はお待ちしております!

最終発表の風景

来年1月29日(水)18時30〜、ツアー成果報告会を開催します!

最後までお読みいただき、ありがとうございました!
今回ご紹介した蒜山アクションツーリズム'24の成果報告会のご案内をさせてください。

来年1月29日(水)19時〜、参加者が立ち上げたプロジェクトの発表をメインとする成果報告会を実施します。
トークセッションとして、真庭市と株式会社阪急阪神百貨店の共同のサステナブルブランド「GREENabele」を題材に官民連携の事例を双方の担当者2名にお話しいただきます。

正式な告知開始は来週となります。
開始次第、instagramにて発信いたしますのでもしご興味お持ちの方はフォローをお願いいたします!