大乗仏教の主な思想の中に、中観思想の他に、如来蔵思想と唯識思想があります。ここまで、「空の思想」ということで、初期般若経典・浄土経典→龍樹→中期中観派と一気に話を進めてきましたが、本来であれば、その途中に如来蔵思想の原点となった初期大乗経典(龍樹以前の経典)、そして如来蔵系経典や唯識系経典が存在しています。
如来蔵思想と唯識思想の原点となった初期大乗経典は「華厳経」と言われています。また、「法華経」も如来蔵思想に影響を与えていると言われています。
「空の思想」の方も、まだ肝心な「般若心経」が残っていますが、同時並行で「如来蔵・唯識」にも入っていこうと思います(後期中観派は唯識派とほぼセットになり、この頃になると各学派同士の統一が進んでいきます)。他派への否定的な要素が強かった中観派と異なり、唯識派は自派の主張があるため、そういう意味では掴み処がありますが、認識論的要素が強く、中観思想とは異なった難しさがあります。