○正根と扶根(扶塵根)
扶根:
現代で言う原子から成り立つ物質次元の感覚器官です。肉体が有する感覚器官であり、眼で言うならば、角膜・水晶体・網膜などから成り立つ器官となります。
正根:
意成身が有する霊的な感覚器官です。真の感覚器官としての能力は扶根ではなく、正根が有します。仏教で説く「根」はこの正根を指し、六根に分けられます。六根とは「眼根・耳根・鼻根・舌根・身根・意根」です。
○命根(寿命)と六根
命根(寿命)と六根はいずれも業(カルマ)、つまりは過去世の悪行による罪障と善行による功徳から創造されると言われます。
▽煩悩→悪行→罪障→不幸な境涯・寿命・経験
▽反煩悩→善行→功徳→幸福な境涯・寿命・経験
功徳は資産、罪障は負債に例えると分かりやすいと思います。功徳は楽経験や恵まれた幸福な境涯を買うための資産となります。逆に、罪障は恵まれない不幸な境涯や苦経験によって清算しなければいけません。しかし、功徳のおかげで他者より恵まれた境涯・経験を得ようとも、それに執着すると、煩悩が沸き起こり、悪行へと繋がり、未来の不幸な境涯や苦体験へと繋がっていきます。また、それを維持しようとあくせくすると、違う苦しみが生まれ、今の好環境の崩壊した際には、崩壊に伴う苦しみ(壊苦)も味わうことになります。釈尊が苦受も楽受も非苦非楽受も全て苦しみであると説くのはこのためです。
○楽味観・過患観・出離観
六根に関する楽味観(耽溺観)・過患観(危難観)・出離観は以下のように説かれています。
この三観の対象は六根だけでなく、五蘊などにも適用されています。四諦観と上記の三観をあわせて、七処三観と言われます。