ラステッド・ギア
雨だ。ただの雨じゃない。酷い選択を繰り返した果てに降る赤色をした雨だ。それは僕の身体を無慈悲にも濡らしていく。まるで頭から血でも被ったかのように、雑な殺戮の後かのようにしていく。
珍しいものじゃない。むしろよく起こる現象だ。こんな、録でもない街、マッドシティでは。
「どっかの研究所のど偉い科学者が言うには、この世界は作り物なんだと。そんでもって演算装置なんかの老朽化が進んでていよいよ世界の終末が近いんだと。だからどうにかしてこの世界を飛び出して生き延びるんだと。
この発表に世界中大混乱だった。初めのうちはウケを狙いすぎてダダ滑りしたジョークだと笑い飛ばしていたが、矢継ぎ早に飛び出る証拠は真実だった。まあこの辺はどうでもいいか。
そんで終いにそいつは全世界へこんな質問を……ああいや、脅迫だったか?をしてきた。
Q.新世界へ向かいますか?
ここの答えは満場一致でこうだった。
A.知るかそんなもん。
そこから二年経った。
世界はほぼ終わった。
さらに三年経った。
世界は更にほぼ終わった。
そして、そこから二二年。
世界はまだ僅かに残っている。
━━ま、その中心地がここだ。覚えてたか?フレッド」
「うん」
そんなこと最初から知ってるさ。
だって僕はたった今とてつもなく酷い選択をしてきたばかりなんだから。でも、まさか、君には言えないよ、カイル。いや君以外にもか。この事実は今はまだ知ってはならないことなんだから。
「そっか。久々に再起動かけた割にまともに動いてるっぽくてひとまず安心だな」
「何だよそれ、僕はそこそこ高性能なんだから信頼してくれ」
赤色の雨が僕を赤色に染めていく。僕の選択を責めているかのように感じなくもない。けれど、もう遅い。もう歩む道は決めてしまった。だからこそ言えるわけがない。
「そんじゃ行くか。生きるために」
僕たちがただ君のために、君のためだけに全てを犠牲にしてきたなんてこと。
【続く】
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