現状維持バイアスの存在を意識する
「転職しようかな」「起業するぞ」と言いながら何年も経ってしまった。
「格安携帯電話(MVNO)の方が毎月の利用料が安いのか」と知りながら、なんだかんだいまだにキャリア携帯を使っている。
「結婚するつもりはないけど彼(彼女)と別れずにだらだら続いている」
etc...
決して現状に満足しているわけではないけれど、なんとなく続けていることってありますよね。
人は現状に固執する傾向があります。例えば仕事において、いきなり「Change!」と言って変化という選択肢を提示しても組織がなかなか変わらないのは、なんてことはなく、現状維持バイアスが働くからです。だからこそ変化を促す前に、氷を溶かすアプローチが欠かせません。
勉強においても同じです。
受験勉強に成功したり、自力で勉強進めてきて合格した人ほど、「自分はこのやり方でうまくいった」と成功体験があることから、自分の当時のやり方にこだわりがちです。
「俺はこのやりかたでやってきた。だから次もうまくいくんだ!」
以前、マンツーマンで勉強法を教えるサービスを提供していた際、年齢が上の方ほど、これまでのやり方に固執される傾向があり、それが学習効果の障壁となっているケースがありました。
なぜそうなるかというと、人間は無意識のうちに、リスクを回避して現状維持を選ぶことで、変化から自分を守ろうとするからです。
なぜなら変化することには、失敗の可能性がつきまといます。行動を起こしたことで、今よりも悪い方向にいくかもしれません。他人や周囲から批判を受けるかもしれません。つまりそこにはリスクが生じます。
一方、現状維持を選択すれば、変わらないので、そうしたリスクが生じませんし、当面の安定を確実に手に入れることができます。
「だったら今のままの方がいいじゃん!」
こうして、人間はあえて非合理的な選択をしてしまうことがあるわけです、このことを「現状維持バイアス」といいます。
合理的に考えれば変化に適応したほうが得な場合であっても、現状に執着しそれを維持しようとする人間の強い心理が働きます。
変化を恐れるのは人間の本能
なぜそうなるかというと、大昔、人間が狩猟をしていた時代の再優先事項は生存でした。人間は生存するためには、危険を察知してそれを回避しなければなりません。当時は「危険=死」を意味したからです。
こうして現状維持バイアスは、私たちの持つ遺伝子にインストールされています。今でもこうして変化を恐れ、変化することに敏感に反応するのはそれの名残です。
生き残る種は、変化にもっとも適応したものである
一方で、例えば私たちは進化し続ける人は強いということを現実に目にしています。
昨年アメリカ・メジャーリーグ、エンゼルスに移籍した大谷選手は、新人王を獲得しました。
大谷選手は開幕前、オープン戦でまったく打てず、メディアからたくさんの批判を浴びていました。
その際、彼はこれまでの打撃フォームを変え、右のすり足をやめてメジャーの速球に対応できるようにしたそうです。
その後、公式戦が開幕してからの活躍ぶりは知っての通り。
彼のすごいところは、今まで日本で抜群にうまくいっていたやり方をすぐに変えて、新しい環境にものの見事に適応したわけです。本当にすごいですよね。
変化への適応が、私達が生き抜く上でいかに重要かは理解いただけたかを示唆してくれています。
(出典には諸説あるようですが)進化論で有名なダーウィンの言葉としてこのようなものもあります。
生き残る種とは、
最も強いものではない。
最も知的なものでもない。
それは、変化に最もよく適応したものである。
変化への適応。特に、変化のスピードが増している現代においてはその重要性は増していくんじゃないでしょうか。
勉強するにあたっても同様です。今までやってきた自分のやり方を一度捨て、新たにインストールすることが重要です。学生のときの勉強のやり方と、社会人になってからの勉強の仕方は変えるべきです。
詳しくは別の記事で書きますが、例えば10代の学生と40代の社会人では、使える時間も体力もそして脳の能力も異なるわけなので、勉強に対してもこれまでとは異なるアプローチが必要になってきます。
その前提としてまず大事なことは、自分にも現状維持バイアスが存在するのだということを認識し、存在を意識した上で行動を選択することです。