Bot狩り
「ねえ、澤田くん」
「なに?」
「最近きみ、Botじゃないかってうわさだよ」
「え、なにそれ?」
「川北さんの個人チャットでそんな話があってさ。どうなの?」
「どうなのたって、Botじゃないとしか言えないよこっちは。でもひどいな」
「でも、一理あると思うんだよね、おれは」
「え、なに、きみも俺のことBotだと思ってるわけ?」
「いや、そうじゃないけどさ、その可能性を打ち消すだけの根拠ってないでしょ」
「・・・・」
「だってグループチャットができたのってコロナ禍以降だし、オフ会もまだ一度も開催してないわけだしさ」
「チャットの日常会話で相手の何となくの素性っていうのはお互い把握してるけど、それってなにも裏付けはないんだしさ」
「まあ、それはそうだけど・・・」
「澤田くんだって俺が実在する証明はできないでしょ?」
「でも、それ言いはじめたら、みんなBotかもしれないじゃない」
「川北さん曰く澤田くんはひとつみんなと決定的に違うことがあるんだって・・・」
「なによ、それ」
「あくまで川北さんの意見だよ?怒らないでね」
「うん、なに?怒るか怒らないかはまだわかんないけど」
「澤田くんとの会話って『僕はこう思う』っていう部分が欠落してるんだって。『思想がない』っていうのかな・・・」
「それはそうだろうね・・・」
「え?」
「このグループチャットは僕が思想を形成するための壁打ちコートみたいなものだから」