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『神血の救世主』に見るWEBTOON演出〜縦の力学〜

はじめに

皆さんこんにちは!
ナンバーナインで漫画編集をしています、遠藤です。

LINEマンガで連載中のWEBTOON作品『神血の救世主〜0.00000001%を引き当て最強へ〜』の担当をしております。

※いつも応援して下さっている皆さま、ありがとうございます!

今回「縦にスクロールする」というWEBTOONの特性を『神血の救世主』のバトルシーンではどのように演出に活かしているか?実例を交えてご紹介したいと思います。

「読む向き」を意識したキャラのポジション取り

漫画のバトルシーンではよく「キャラAが攻撃をしてキャラBがそれを受け止める」というようなシーンが描かれますが、これが見開き漫画の横長のコマだと仮定してより迫力のある演出をしたい場合に、キャラAとキャラBはどのような位置関係で描くべきでしょうか?

見開きの漫画では「右から左」に向かって読むため、攻撃をするキャラAを右側、攻撃を受けるキャラBを左側に配置することで「読者の目線の動き」と「キャラの攻撃の向き」が一致し、逆に配置した場合よりも攻撃のスピード感や威力を強調したり、攻撃側と受け側の関係をハッキリさせやすい効果があります。(※あくまで演出の一例で、全てにおいてこれが正解というわけではありません!)

ではこれがWEBTOONの場合にはどうなるか?

WEBTOONは縦にスクロールして「上から下」に向かって読むため、攻撃をするキャラを上側、攻撃を受けるキャラを下側に配置する「上下のキャラ配置」を意識することで、見開き漫画のように「右と左に配置する」よりも攻撃のスピード感や威力を強調したり、攻撃側と受け側の関係をハッキリさせやすいと考えています。

僕はこれを「縦の力学」と呼んでいます。

ではここからは実際のコマを見ていきましょう!

①味方が敵を押すパターン

30話より、ヴァンキッシュVS雷鳴のキリム

このシーンでは味方であるヴァンキッシュ(上)が敵であるキリム(下)を押しているシーンのため、このようなキャラ配置になります。

この関係値をより強調するため、コマ全体に対するキャラの描写位置自体も下部に寄せ、上部に大きく余白を作っています。

縦スクロールで読む場合はコマ全体が一気に視界にはいるわけではなく、一画面分を超えるサイズの絵も上から下にどんどん流れていくため、このようにコマ全体に大きく余白を作るような構図でも成立しやすいです。(ページ数の縛りがないのも大きな要因だと思います。)

②敵が味方を押すパターン

28話より、比良坂蓮爾VS暴風のデルタ

一見実力が拮抗しているように見えるシーンですが、味方である比良坂を下、敵であるデルタを上に配置することで、

「いきなり攻め込んできた敵を味方が同じ力で受け止めているが、若干押され気味」というような細かいニュアンスを表現しています。

また、WEBTOONでは縦長のデバイスで表現を行うため「横長のコマを回転させて縦向きに見せる」ような表現も行われます。

③実力が拮抗しているパターン

8話より、有明透晴VSラージコボルト

WEBTOONではキャラを上下に配置することで攻め側と受け側を強調出来る、という例を2つ紹介しましたが、最後に

「縦にスクロールさせつつキャラを左右に配置する」パターンをご紹介したいと思います。

このパターンではキャラが上下に分かれず並列に表示されるため「実力が拮抗している」ような印象を与えることが出来ると考えています!

同じ「キャラを左右に配置する」場合でも、見開き漫画のように「右から左に読む」場合とWEBTOONのように「上から下に読む」場合で印象が変わるのがおもしろいですね!

おわりに

3つのバトルシーンを紹介させて頂きましたがいかがでしたでしょうか!

WEBTOONのバトルシーンでは他の作品でもこの「縦の力学」が意識されていることが多々あり、今回の記事の内容を意識して読んでみると、新たな発見があったり、読むのがいつもより少し楽しくなったりするかもしれません。

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