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【台湾のジャズライブ】菩花樂集 Poorva 181 台灣印度融合計劃

2023年2月18日、台北の台湾大学キャンパス内にある室内楽ホール雅頌坊で、台北在住のタブラ/エスラジ奏者でインド音楽の普及活動をしている若池敏弘さんのプロジェクト"菩花樂集"の演奏がありました。
若池さんがインドの弦楽器エスラジと打楽器タブラを駆使し、共演者に二胡奏者鐘於叡、琵琶奏者梁家寧を迎えています。この二人とも若池さんのインド音楽教室の生徒なのだそうです。若池さんがたくさんの生徒さんの中からこの二人を選んで自らのテーマを託す音楽を演奏した。それがこの"菩花樂集 Poorva 181 台灣印度融合計劃"です。

若池敏弘

若池さんのライブ活動は2019年12月に聴いたことがありました。友人であるフルート奏者張瑛蘭とギタリスト林華勁が若池さんからインド音楽を学んでおり、この3人でのトリオ演奏があったからです。この時に若池さんと面識を持ちました。下の映像はその時のものです。

僕はそもそもインド音楽の、ラーガと呼ばれるスケールを定めて、そのうえで即興音楽を展開するという、伝統音楽の様式にとても関心を持っていました。それで、台湾でそのインド音楽の普及に努めているという日本人がいるということにとても興味をもち、ジャズではありませんが、彼の活動をずっとフォローしていました。

若池さんは、15年ほど前に台湾でのインド音楽の可能性を試すために単身やってきたのだそうです。様々な場所で演奏活動を行い、手ごたえを感じるようになり、次第に台湾の学術界、音楽界に奇特な日本人がいると認められるようになっていきました。
「Orbit Folks 世界軌跡樂團」では後に台湾ジャズ界のリーダーとなる曾增譯、黃偉駿との共演をしています。この作品でこのグループは2006年金曲獎最佳演奏獎を受賞しています。この時、曾增譯は若池さんからインド音楽を学ぶ生徒だったそうです。

2021年には日本のギタリスト大竹研さんとのデュオアルバム《Yü》で金音創作獎最佳樂手獎を受賞しています。
このころから、若池さんは共演者の音楽に自らの演奏を合わせていくのではなく、自らのよって立つインド音楽を、台湾の音楽界に提示していきたいと考えるようになったそうです。大竹さんはこの様な若竹さんの意向に積極的に応えてくれるミュージシャンであり、その結果としてのアルバムが台湾でも高評価を得たということです。

鐘於叡

この演奏会で二胡とエスラジを担当、そしてMCのサポートをしていたのが鐘於叡です。彼の演奏はここで初めて聞いたのですが、若池さんからは中国伝統音楽演奏の専門家と聞いていました。
ですが、FBの紹介写真を見て驚きました。彼は津軽三味線も演奏しており、2022年度の津軽三味線津軽民謡全国大会で優勝しています。様々な民族楽器に興味を持っている、多才な音楽家なのですね。

梁家寧

琵琶を演奏していたのが梁家寧です。ひどく美形で舞台で映える女性ですね。演奏もテクニカルにとてもしっかりしているように思います。
FBの紹介を見ると、この若池さんのプロジェクト以外にも鐘於叡とのコラボレーションをよく行っているようです。持続音の二胡と減衰音の琵琶で良い組み合わせなのでしょう。
フュージョンバンド"Tonic 5"にも加わっていました。このバンドも中国の伝統音楽と楽器の音色をフュージョンの曲風の中にうまく取り込んでいました。

アルバム《𨑨迌𝐒𝐭𝐫𝐨𝐥𝐥𝐬》

上記の様な音楽遍歴を経て、若池さんが台北に生活してインド音楽を教える日本人として創作したのがこのアルバムです。音楽の様式はインドから、音楽のモティーフは台北での生活から、それを日本人の自分が表現することで、オリジナルな音楽ができるのではないかと考えたということです。
これは確かに若池さんしかできない音楽のアプローチです。

このアルバムの作品は、たくさん彼のYouTubeページにアップされていますのでここで紹介します。

恒河百景 / Dream of the River

ガンジス河の畔での情景がテーマなのだそうです。インドの雄大な風景が思い浮かびます。

五色鳥 / Taiwan Barbet

五色鳥というのは台湾固有の、非常に色鮮やかな鳥です。この鳥が樹をついばむ情景をイメージしているそうです。

月光下的祝福

若池さんの住んでいる、南勢角烘爐地南山福德宮のよるの情景にインスピレーションを得ているとのこと。

福德宮から見た台北の眺め

午夜榕樹 / Midnight Banyan Tree

深夜のガジュマルのおどろおどろしい雰囲気を表現したそうです。

華新街 / Huaxin Street

南勢角にあるビルマ人街、華新街の様子を表現しています。

台北のビルマ人街、華新街

Mor Bina Othe Kon Sure Baji

インドの偉大な国民的詩人、タゴールによる作曲の作品です。

6點半 / Six and a half

若池さんは早朝の時間帯の街の様子の移り変わりを観察するのが好きなのだそうです。その印象を基に6時半という時間を6拍子半というリズムに乗せて作曲しています。

Raga Desh Alap, Jod & Jhala

これらは、前回よりも更に若池さんのインド音楽を全面に打ち出しています。そして、台湾の情景を表現している。この作品も高い評価を得られると良いですね。



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