キタナカ、奄美を喰らう【第三夜】「原点」
とにかく一週間のノルマを消化しないと! と躍起になっております。
しかもブランクが長いから、思ったようなノリが得られず。
こんなことなら、携帯からでも毎日上げておくんだった…。
なんか、夏休みの宿題に負われる小学生みたい…。
どうも。
身体の一部は小学生並み(ヒント:ピンク、朝顔の蕾)なキタナカです。
そんなこんなで7月20日(祝)。
100%自由行動日です。
この日のために、重い思いをして自転車を背負ってきた訳ですよ。
実は…。
古仁屋に来る途中に、後悔してたんですよ。
というのも、この奄美大島「平地が、ほとんどありません」。
坂バカな方なら「むしろ、ご褒美です」状態だと思うのですが、生憎キタナカさんは坂が嫌いです。
行きにタクシーに乗りながら観察したところ。
斜度十%以上が続く山を三本くらい越えなければ、空港から古仁屋には辿り着けません。
もっとも。
車車を運転することができない俺には、最初から自転車しか移動の選択肢は無いんですけどね。
【タナカヒロユキ奄美十番勝負】の4:「奄美の坂道編」
行きに通った国道58号は諦めて、と。(諦めの良さは天才的です)
地図で見た限り、山が少なそうな古仁屋から北上するルートを選択。
午前中に出発。
「海沿いを走れば坂は少ない。これ、真実」
ネイティブアメリカンの長老の言葉が、役に立つ時が来た!
えとね。
…長老のウソツキ。
伊豆辺りを走ったことがある人が居たら、あれのパワーアップバージョンと思ってください。
突然、海沿いから山に突入。
唐突に下り始める。
時速50km/hくらいで気持ちよく下っている内に、すぐ海沿いに出る。
300m先に、次の山の入口が見える…。
(以下、延々と繰り返す)
土砂崩れで片側通行区間、多数。
道路工事(トンネルを掘ったり、道路の拡張工事)で交通規制、多数。
短いスパンで斜度が大き目のアップダウンが続く。
しかも、南国らしい強い日差し。
下ってきた山を振り返ると、どの辺を走ってきたのか分からない鬱蒼っぷり。
十本ほどアップダウンを繰り返しただけで、魂が「しんなり」してくる。
「行きに下ったところは、帰りには全部上りなんだよな?」と考えると憂鬱になる。
「行きに大変だった上りは、帰りに凶悪な下りになるんだよな?」と考えると恐くなる。
予定(片道40km)の70%ほど走ったとこで、同行者に「そろそろ戻るべ」と提案。
「あと二個、大きな山を越えれば目的地じゃない?」
あのな…。小さな山はその三倍はあると思うぞ。お前、単に意地で言ってるだろ?
「うん…」
引き返す勇気も必要だぞ? まぁ俺は行けるけどな。
「むかっ!」
会議の結果、引き返すことに。
帰りにアクシデント発生。
50km/hくらい出る、狭い下りの高速コーナー。
俺は、疲れた後の下りは恐いので、安全圏内の速度で後ろを走っていた。
そのコーナーは右の大きなカーブなのだが、入口にかなり荒いグレーチングがあった。
※グレーチングは金属製の排水用のフタです。細いタイヤの自転車乗りの天敵
俺は行きに「ここ、下りは恐いなぁ」と、ぼんやり考えていた。
しかし、先行車は疲れで判断力が落ちていた模様。
ブレーキをかけながらグレーチングに突入。
見事に後輪がスリップ。
なんとかバランスを取りながら、しかしグリップを失っているので曲がり切れずにコースアウトして藪へ突入。
俺は、事前に十分な減速をしてグレーチングをパスしてカーブを曲がりきって止まる。
おーい、大丈夫か?
「な…なんとか」
しっかし、よく藪に突っ込む決断したな。
「それしかないかな? って思って」
落車はしてないようだけど、自転車はどう?
「あ!パンクしてる」
前? 後ろ?
「前…だけじゃなくて後ろもだわ」
前後輪両方! そりゃまた…。
などと言いつつ、自転車を置いて事故現場へと向かう。
あのさ。
「ん?」
ココを上ってコースアウトしたんだよな?
「うん」
凄げーな、普通に段差が10cm以上あるぞ。
「そうなん?」
あんな高速で、前輪リフトさせて上ったんか?
「いや。真っ直ぐ突っ込んだ」
それじゃあ、前後輪リム打ちパンクだろうな。
「そうなの?」
結果論から言えば、最善の対処をしてるな君は。
「?」
ホイールの強度が弱ければ10cm以上の段差に真っ直ぐ突っ込めばタダじゃ済まない。
「ふい」
段差への新入角度が鋭角だったら、これまたタダじゃ済まない。90度に限りなく近かったんだろな。
「ふむぅ」
俺だったら、ギリギリまでグリップが戻るのを待ってたろう。
「それがベストなんじゃ?」
そうするとな。走ってるときは気付かなかったが、この段差が切れてるとこにな。
「?」
ススキに隠れて、深さ50cmほどの穴があるんさ。
「ひえぇ」
クリアするか穴に落ちるかの二択だったろうな。
で、だ。
「ん」
まだ東京からの荷物が届いていないので、替えのチューブは1本しかない訳だ。
「えぇっ!」
しかし、応急処置用にイージーパッチはあったりする訳だ。
「ほっ…」
だが、安心するのはまだ早い。
「どして?」
イージーパッチは、あくまで応急処置だし1箇所の修理しかでけんのだよ。
「一本は新しいチューブにして、一本を修理すればいいんじゃ?」
この段差を越えてパンクした以上、十中八九リム打ちパンクだろう。
「だと、どうなの?」
『リム打ちパンク』は、二箇所に穴が開くんだよ。
2箇所の穴がヘビの噛み跡に似てるから、「スネークバイト」と呼ばれる。
その場合、イージーパッチじゃ修理でけん。
隣接した二箇所の孔を塞ぐことができないからね。
まぁ、前後輪のチューブを見て判断しようじゃないか?
結果:
どう見ても前後輪共にスネークバイトです、本当にありがとうございます。
とりあえず、予備チューブで前輪を修理。
問題なし。
前後輪のチューブにイージーパッチを工夫して当てて、空気の漏れが少ない方を後輪にセット。
俺が後ろから走り、空気漏れに気付いたら止めてエア補充。
これを二回繰り返すも、とうとう後輪のパッチが寿命。
軽トラの貨物便(こちらでは「軽貨物」と呼ぶらしい)を携帯で呼び、夕方に無事帰還。
なんか散々でしたが、怪我が無くて良かった。
下りで左が崖のとこもあったので、そこでコースアウト…って考えるとゾッとする。
東京からの荷物が届いたら、後輪の修理をしようと思う。
【キタナカヒロユ奄美十番勝負】の5:「奄美の人に俺のバカ話は通用するのか? 編」
帰宅後しんなりとしていたのだが、「居酒屋に行こう!」という提案。
今までの提案は「え~」な部分もあったが、酒ならば話は別だ。
「ハイ喜んで~!」
という訳で、疲れた体に鞭打って居酒屋へGO! と相成った訳です。
さて。
俺は、基本的に自分より若い人と飲みに行く事が多い。
これだけの老若男女。
地域的にもアウェイで飲むことは、皆無に等しい。
ウズウズと「飲み会でヒーローになる」欲が湧き上がってくる。
話題の幅は、狭くは無いはず。
気をつけないといけないのは、文化的なギャップだ。
ご老人にネットタームを使っても「?」だろう。
中学生に、アダルティな話題は振れない。
まずは、至極まともに対応しながら冗談を織り交ぜてみる。
笑われると「え? 今の話、どこが面白かったんですか? 教えてください!」的な。
「またまたキタナカさんってばー」と言われても、本当に分からないのだ。
意地でも「な~んちゃって」なんて言わない。
「横浜では『面白みの無い奴』って評判なんですけど、面白がってもらえるなら嬉しいです」
掴みはOK。
段々と場が和んできたところで。
「スイーツ(笑)って感じですよね?」
はっ!
今、俺NGワードを発しちゃった?
そこで。
お婆ちゃんが大笑い。
あれ? 通じてるの?
それとも語感で笑ってるの?
ヒィヒィと息苦しそうに笑う姿に、罪悪感すら感じる。
なに、このリアクション恐い。
どうやら。
なんとか、東京で通じるのと同じくらいのレベルでは俺のバカ話は通じたようです。
でも、ヲタク話NGでの会話は、結構辛かった。
ちょっとだけ。
ほんのちょっとだけヘコみつつ、奄美の夜は更けていくのでしたとさ。
――奄美の日記が終わったら、いつもどおりに戻るから、ね?
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