キタナカ、奄美を喰らう【第八夜】「帰還」

生来ネガティブなくせに、他人から見るとポジティブに見える。
ひどく不器用なくせに、他人からは器用だと思われる。
そんなのは、長年生きていれば当然のテクニックな訳だが。
よく考えてみれば周りに、自分より「長年生きている」人間が少ない訳で。
それで敵を増やしちゃったりしてるんだよねぇ。
どうも。
こういうコトを書くと「落ち込んでるの?」とか心配されるので、「べべ別に?なんでもねぇよ」なんつって母性本能をくすぐるキタナカです。
おっぱいを揉ませてくれれば立ち直ります。
でへへっへぇ。
あ!
チャンネルは、そのまま。

7月25日(土)。
本日をもって奄美を去る。
よく考えれば、「十番勝負」のノルマは果たしている訳で。
旅行の最終日の朝なんて、特筆事項はない訳で。
ほんの少しの寂しさを感じつつ。
必要最低限の荷物を残して、荷物を段ボール詰めしていた訳です。
輪行バッグとメッセンジャーバッグに着替えと携帯。
一時間に一本しかないバスの時間を確認しながら、宅配便を出しに行く。

バスが来る四十五分前。
そろそろ輪行バッグに詰めて、バスに乗る準備をしないとだ。
そういや。
自転車には、ほとんど乗れなかったな。
まぁ楽しかったから良いか。
ロックもかけっぱなしだったから、鍵を外さないとだ。
え?
…鍵?

あー。
そのー。
えーと。
鍵、宅配便で送っちゃいました。
ひゅー。
最後まで退屈させない展開だぜ。
ってか、どうすんのよコレ!

ワイヤーロックを切ってもらわなきゃ!
という訳で、ワイヤーロックで繋がれた自転車二台を肩に担ぎ、徒歩2分の自動車工場へと向かう。
あっさりと断られる。

次は自転車屋かガソリンスタンドか。
自転車屋はチェックしてあったので、もう一度肩に背負い直す。
二台の自転車を背負うのは、結構キツい。
荷物としての重さよりも、「本来二つのモノが、脆弱なワイヤーで繋がってる状態」がキツい。
汗だくになりながら自転車屋に移動。
本来五分で済む距離を十分かけて移動。
アッサリと切ってもらう。

「お代はいかほど?」
「そんな手間もかかってないから、別にいいよ」
こういう本当に困った時の、親切は嬉しい。
俺が女だったら股間大洪水で「抱いて!」と言い出すところだ。(ビッチ)
ありがとう自転車屋のお兄さん。

帰りは乗って戻ったので二分。
自転車って乗ると便利だけど、持つと邪魔なんだよね。
あ、当たり前か。
大慌てで輪行バッグに詰めて、なんとかバスの時間に間に合った。
バスで名瀬まで。
どうやら、この名瀬が奄美の中心街らしい。
俺にしてみれば、初めて足を踏み入れる土地な訳だが。
恐らく。
普通に奄美に遊びに行くなら、この名瀬にベースキャンプを構えるべき。
親戚とかが居る場合は別だが。

フライトは夜なので、自転車を組んで取り敢えず鶏飯(けいはん)を求めて「ひさ倉」へ。
と思ったが、ロックを切ってしまった今、自転車を駐輪する術がない。
自転車を店内に持ち込む訳にもいかんだろうし…。
「自転車旅行」の名目を返上、掟破りの「タクシー輪行バッグ戦法」炸裂。
ハイハイ、ヘタレですよー。

タクシーの運転手さんと世間話。
奄美は自然に溢れる離島なのに、メジャーになりきれて居ない。
沖縄本島と比べたら全然、田舎でしょ?
いっそ鹿児島県じゃなくて沖縄県だったら、もっと観光客が来るのに…。
鹿児島県民の方スイマセン、俺が代わりに謝っておきます。
でも、なんとなく分かる気もします。
我々のような観光客にしてみればさ。
沖縄本島なんかより自然が溢れてて素晴らしい土地だ、なんて思うけどさ。
地場産業の発展してない島だと、やはり観光地化したいってのが本音。
観光業者としては、「沖縄県」の冠がある方が人が来やすい。
実際。
羽田直通のフライトは、一日に一本だそうだ。
そういや、行きは鹿児島空港経由のフライトだったな…。

そんなこんなで「ひさ倉」到着。
輪行バッグを堂々と店内に持ち込んで、鶏飯セット鶏刺身付をオーダー。
冷え気味(「炊き立てではない」の意)のご飯をどんぶりによそう。
錦糸玉子、鶏肉、ネギ、パパイヤの漬物等を好みでご飯の上に盛り付ける。
鍋で沸いた鳥のだし汁(具はまったく入っておらず、透明で醤油っぽい色のつゆ)をかける。
食す。
ウマー。

名物として成立してるから、そこそこの値段ではあるが。
多分。
鶏飯は本来、普通に家で出る食事なんだろうな? とか。
材料に特別高級な素材は使っていない。
鳥を一羽、丸ごと使ってるとかじゃないからね。
鳥を捌いた翌日。
出汁をとって、漬物とネギと昨日の残りご飯。
家庭で手軽にできる美味しいご飯とかだったんじゃないかな?
「ひさ倉」レベルまで、濁りのない透明な出汁(だし)汁じゃなかっただろうけど。
なんて庶民の料理チックに書いてるけど、美味いんですわコレが。
逆に言えば、名産物を無理やり高級に調理するより地元に根ざした郷土料理の方が美味しいよな。

満腹になりつつ、「ひさ倉」の外で自転車を組み始める。
あ…暑い。
後は、空港に向けて出発。
久々に漕いだからなのか、ペダルが重い。
流石に島の南部に比べれば坂は少ないが、暑さがスタミナも奪うのだろう。

空港に到着。
荷物を預けて、もう一度自転車に乗ってGO。
笠利をぐるっと巡るルート。
ほとんどアップダウンがない道は、気持ちよく走れる。
まずは、あやまる岬へ。
絶景かな。
休憩してるとテレビのクルーっぽいグループが来たので退散。
「うわー、キレイですねぇ」
「**ちゃんなんで、ここが『あやまる岬』って言うか知ってる?」
「どうしてなんですかぁ?」
「別にゴメンとか『謝る』岬じゃないからね、念のため~」
「あはは~」
おもんないわ!

そして、更に北上して笠利崎へ。
なんかサザエさんのオープニングみたいだな…。
浦島伝説が残る土地らしい。
浦島太郎と亀のポップな石像がある。
こと、亀は「願いごとが叶う亀」だそうで、触ると願い事が叶うそう。
触る箇所によって、叶う願いごとの種類が違うそう。
「右後ろ足だと金運」とか、そんな感じ。

国道に戻ると、上り。
鳴呼、またか。
山を登る最中に、昆虫採集をしている方に出会う。
その瞬間だけ呼吸を整えて「こんにちは、何か取れるんですか?」と聞く。
余裕な振りをして、「それじゃ」なんちてスピードアップ。
姿が見えなくなったら、グッタリした顔に戻る。

坂の頂上で休んでいると、地元中学生がママチャリで同じ坂を上ってくる。
すげー。
第二の小野田坂道か?
ってか女子でした。
汗まみれの女子中学生。
ぽっ。(ウェット&メッシー趣味だからです)

下りは「ひゃっほ~い」と50km/hペース。
屋仁地区辺りから、また海が見えなくなる。
地図は空港に置いてきた。
ココが、どの辺なのか?
どれくらい走れば空港に着くのか?
ひどく不安になってくる。
ずっと一本道なので、交通案内板も出てこない。
喉が渇いてきたが、自販機一つ見当たらない。
モシカシタラ。
コノママ、ヒコウジョウニタドリツケナイ?
こういう時ってのは、どんどん不安になるもんだ。
結果が分かってるから安心して読めるだろうけど、本気で不安に押しつぶされそうだった。

やっとこさ自販機発見。
バス停を発見。
案内板、発見。
道が分かると、急に気持ちに余裕が生まれる。
自販機でコーラを買って一気飲み。
甘さが身にしみるわ~。

結局。
当初に予定していた十七時に空港到着。
あ。
フライトは十九時ね。
シャツが絞れるほど汗まみれだったので、空港の土産物屋でTシャツ購入。
「皆既日食Tシャツなんて買わねーよな、常識的に考えて」
――昨日の俺…ゴメン。
皆既日食Tシャツ…買っちゃったよ。

手荷物を預けて、食事を取って、フライト。
東京着二十一時半(フライトが遅れて、空港着も遅れたのです)。
帰宅。

長々と書いていた割には、終わりはアッサリです。
旅行って、そんなもんだと思うのです。
それから二週間。
仕事モードへの復帰に時間がかかったり、「-禁書目録」を観たり。
やっとこさ、日常生活モードに戻った訳です。
この日記も、ようやっと旅行日記から通常の「日記ですらない日記」に戻る訳です。
どうか。
今後とも、俺ことキタナカヒロユをご愛顧のほど宜しくお願いいたします。

――一週間も旅行したのは生まれて初めてだと気づいた。

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