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新曲レポート「月下花 - Gekka HANA」

月下花 - Gekka HANA / みるくかふぇ feat. flower
作詞・作曲 みるくかふぇ、イラスト 星月流菜

「v_flower8周年」をお祝いするために、現在のメイン路線であるメタル曲として作った作品です。
「月光」と「野の花」をモチーフに、内面の美しさと力強さを描きました。

メロディ作り

曲のBPMが146と比較的ゆったりしていたので、16分音符によるシンコペーションを多用したメロディにしました。
v_flowerの声は立ち上がりが鋭いので、この手のリズムがよく似合います。

僕の作るメロディの本来の強みは、Bメロからサビへの流れです。
ですがここしばらくは、v_flowerの声の魅力を活かすためにサビのメロディ作りに力を入れています。
今回は声の力強さの表現のために、初めて2オクターブ幅のメロディを書きました。

ボーカル調声

声の力強さを強調するためのポイントは2点。

1つ目は、主にメロディの跳躍進行時に対しての調声。
基本的には跳躍直前のノートに一瞬グロウルを高めに設定して戻し、跳んだ瞬間の音のピッチを揺らして不安定にしたのち、跳んだ先がフレーズの最後の音の場合は吐き捨てる様にピッチを落としています。

VOCALOID Editor、跳躍進行時のピッチの揺らし。

2つ目は、コーラス。
v_flowerの声はアタックが鋭いものの太さが足りないため、2度上のコーラスラインはv_flowerと穏やかながらも声の太い紲星あかりの声を重ねています。
「ロック、メタル系のボーカルにダブリングは必須」との考えからです。

アレンジ

「コードは感情表現」「ビートは心の中の、時の流れの速さ」が僕の曲作りの際の基本ポリシーです。
1つの物語の中でずっと同じ情景が続くことは稀なため、曲中で細かく場面を切り替えるようにアレンジを作っています。

Aメロ序盤はDのペダルトーンを中心に、1番はオーケストラ楽器、2番は6弦ベースと7弦ギターの低音でアレンジ。
Aメロ後半でヘヴィな展開に突入することで、前半の美しさとの対比を強調しています。

Bメロは16beatノリのリズムパターンに変えて、左側に定位するシングルコイル系エレキギターをブラッシングを多用したロックスタイルのカッティングで、右側に定位する7弦ギターをメタルスタイルのリフで作り分けました。
また「歌詞中の台詞を歌う」部分は、ドラムを一瞬リズムボックス(TR-808)による機械的なビートに切り替えて、過去の記憶が蘇るような雰囲気に変えてみました。

サビでは倍速ドラムと、ツーバス上でジャングルビートを刻むリズムを切り替えつつ、スピード感の緩急をつけています。

間奏、特にギターソロはこの曲のもう一つの盛り上がり部分。
ソロの最中に一度転調してから元のキーのBメロに繋ぐ必要があるため、ソロ前半はメロディアスなフレーズだったものが、転調を伴うソロ後半はオルタードノートを織り込んだ調性的に浮遊したフレーズにして、そこから元のキーに戻った際に安定感を感じるように作りました。

今回の学び

当初はAメロからサビまで「ドマイナー」なメロディを書いたためか、曲全体がのっぺりした感じになってしまいました。
そのためサビのメロディだけは、メジャーキーのように聴こえる音遣いを選ぶように書き直しています。
この辺の頭の切り替えが、曲を面白くするのですね。

現在は作詞の勉強中です(2年前までは、作詞は専門の方にお願いして分業していました)。
今回気をつけたのは「自分の内面が発した言葉」を盛り込むこと、直接的に心情を表す言葉(「嬉しい」「悲しい」など)を使わずに情景描写から聴き手に想像させること……辺りですね。
この書き方はとても綺麗な歌詞になりました。
周りに優秀な作詞家さんが多いので、そのギャップを埋めるべく努力中です。

最後に

メタル曲を書き始めて2年半になりますが、VOCALOID音楽の中でも特にニッチなジャンルということもあり、誰かの作ったお手本をなぞるだけでは聴き手の胸を打つことはできない、というのがしばらく続けてみて得た印象です。
なので「自分なりのカッコいい」を考え抜いて突き詰めて、誰も想像したことのない作品を作れるようになったらいいな、と思っています。

ここまで読んでくれてありがとうございます(๑˃̵ᴗ˂̵)و

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