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違和感

衆院選から1週間が過ぎようとしている。この1週間、ずーっと違和感を抱いている。与党が安定多数を得たことが気に入らないとか、立憲民主党が思ったより伸びなかったことが気に入らないとか、維新が躍進したことが気に入らないとか、マスコミの獲得議席予測が大きく外れたことがどうとか、そういうことを言いたいのではない。結論から言えば、5日間考え続けてきて、これは選挙制度に対する違和感、というかこの選挙制度であることがもたらした結果に対する違和感なのだということが理解されてきた。

それは象徴的に言うならば、例えば自分の手の届かないところで辻元清美が落選してしまったこと、わかりやすく言うなら「なぜ、辻元清美の当落を決めることに自分が関われないのか…」というような違和感である。これはあくまでも象徴的な例え話であり、僕が辻元清美を支持しているという意味ではない。選挙制度への違和感として更にわかりやすく言うなら、「なぜ、辻元清美のごとき全国区の議員の当落を、たかが大阪10区数十万人の投票で決められなければならないのか」というような感覚である。

誤解を避けるために繰り返し言うが、僕は辻元清美を支持していない。昔からどちらかというと嫌いである。ただ、話をわかりやすくするために彼女を例に挙げているだけだ。辻元清美はこの四半世紀に及ぶ議員生活と活躍において、いまやもう、大阪10区数十万人などというローカルな人たちのものではなく、もはや全国民で彼女がこの国に必要であるか否かを判断しなければならないような、そういうレベルの人材なのではないか、僕が言いたいのはそういった意味である。

彼女がもしも比例復活していたならば、おそらくは僕もこれほどまでに考えなかっただろうと思う。その証拠に小沢一郎にしても、中村喜四郎にしても、或いは甘利明にしても、僕は辻元清美と同じクラスの政治家だと感じているけれど、取り敢えずは彼らについては辻元清美に感じるほどの感慨は抱いていない。

例えば、言うまでもなく甘利明は今回、小選挙区で立憲の新人太氏に敗れたことを機に自民党幹事長職を追われることになったわけだが、そしてマスコミでもYouTube番組でもそれを嘲笑うかのような風潮も見られるわけだが、仮にもし彼が幹事長から引きずり下ろされねばならない人物だったとしても、それは辻元清美に対する論理同様、神奈川13区数十万の有権者によってではなく、国民的議論によって、国民の総意によって引きずり下ろされねばならないのではないかと思うのだ。

こう考えてみよう。読者の皆さんは自分の地元選出の議員以外で、顔と名前の一致する議員を何人持っているだろう。安倍晋三は知っているはずだ。麻生太郎も知っているはすだ。枝野幸男も、志位和夫も、河野太郎も、小泉進次郎も、石破茂も知っているだろう。そういう風に顔と名前の一致する議員を一人一人積み重ねて行った場合、その人数は何人になるか。50人か、100人か、200人か。200人の顔が浮かぶなんて人はほとんどいないはずだ。いずれにしても、衆院定数の465人にははるかに及ばないはずだ。

そして辻元清美は、多くの国民にとって、この、数十人から百数十人の顔と名前の一致する、印象的な議員の一人であったはずなのだ。その議員が、大阪10区という一小選挙区で、維新の新人に敗れたのである(最初に言ったように、僕は維新がどうこう言いたいのではない)。

実は今回の選挙で、安倍晋三が前回に比べて2万票ほど得票を減らしている。何回先のことかはわからないが、安倍晋三にだって今回の小沢一郎や中村喜四郎のような日がいつか必ず来るのだ。いや、小沢や中村のように比例復活さえままならず、石原伸晃や野田毅、辻元清美のように議席さえ失う日が必ず来るのである。僕は安倍晋三が大嫌いだが、しかしそれでも、安倍晋三の落選を山口4区の人たちだけで決めていいとは思えない。

どうだろう。僕の言いたいことが少しは伝わって来ただろうか。

僕の選挙区は北海道3区である。自民の石崎、立憲の荒井の一騎討ちで大接戦を繰り広げ、小選挙区勝利は石崎、荒井も比例復活した選挙区である。どちらに投票しても議員にすることができた、ある意味恵まれた選挙区である。

しかし北海道外の方々に問いたい。皆さんはこの二人の顔が思い浮かぶだろうか。おそらくはまず浮かばないはずだ。中国や九州の人たちはもちろん、津軽の人たちだってその顔が浮かばないはずである。名前さえ知らないだろう。そもそも当該選挙区に住み、つい10日前に投票した僕でさえ(僕は期日前投票している)、石崎・荒井ともに「下の名前」を思い出せないほどなのだ(笑)。その程度の知名度なのである。この二人は、少なくとも僕にとって「人」ではなく、あくまで「自民党」と「立憲民主党」に過ぎなかったのである。実はもう一人、維新の候補者もいたのだが、その人間は顔どころか名前さえ浮かばなくなっている(ちなみに石崎・荒井は下の名前は浮かばないが、顔は浮かぶ)。

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