見出し画像

【内部監査の基礎知識】内部監査とは?~④グローバル内部監査基準™~

こんにちは、HIROです。今回は、2024年に発表された「グローバル内部監査基準」について、初心者にも分かりやすく解説します。この基準は、内部監査の世界で新たなグローバルスタンダードとなるものであり、2025年1月9日から正式に適用される予定です。また、内部監査の外部品質評価も当該基準をベースに実施されることになります。この記事では、この基準の背景、目的、構成、そしてその重要性について説明していきます。


1. グローバル内部監査基準の概要

1.1 背景

内部監査人協会(IIA)は、グローバルなビジネス環境に対応するために、「グローバル内部監査基準*」を策定しました。この基準は、企業が直面する多様なリスクに対処するために必要な指針を提供し、世界中の企業が一貫して高品質な内部監査を実施できるように設計されています。2017年に改定された国際基準を基に、現代のビジネスニーズに合わせてさらに進化したものです。
*「グローバル内部監査基準™」(日本語版)はこちら

1.2 目的

グローバル内部監査基準の主な目的は、内部監査の質を向上させることで、企業のガバナンスやリスク管理、内部統制を強化することです。企業が健全で持続可能な運営を行うためには、リスクを適切に管理し、信頼性を高めることが不可欠です。この基準は、そのための具体的なガイドラインを提供します。

2. グローバル内部監査基準の構成

2.1 「15の指導的原則」

グローバル内部監査基準は、内部監査が効果的に機能するための15の原則から構成されています。これらの原則は、内部監査の各側面を包括的にカバーしており、それぞれの原則が具体的な実施方法や考慮すべき事項を含んでいます。これにより、内部監査人は、この基準に従って業務を行うことで、確実に高品質な監査を提供することができます。

2.2 「5つのドメイン」

この基準は、内部監査の重要な側面を以下の5つのドメインに分けてカバーしています。

  • ドメインⅠ: 内部監査の目的

    • 内部監査は、取締役会および経営管理者から独立し、リスクベースで、かつ客観的なアシュアランス(保証)、助言、インサイト(洞察)およびフォーサイト(将来予測)を提供することによって、組織が価値を創造、保全、維持する能力を高めます。このドメインでは、内部監査の目的とその組織への貢献が明確に定義されています。

  • ドメインⅡ: 倫理と専門職としての気質

    • 内部監査人には高い倫理基準と専門性が求められます。このドメインでは、内部監査人が遵守すべき倫理基準や、専門職としての行動規範が定められており、内部監査業務を行う際のガイドラインとして機能します。

  • ドメインⅢ: 内部監査部門に対するガバナンス

    • 内部監査部門の独立性とそのパフォーマンスを監督するために必要なガバナンスの基準が示されています。内部監査部門長が取締役会と緊密に協力し、部門の業務が適切に行われるよう監督する役割が強調されています。

  • ドメインⅣ: 内部監査部門の管理

    • このドメインでは、内部監査部門の戦略的計画の策定、監査資源の獲得と配備、関係の構築、ステークホルダーとのコミュニケーション、そして部門のパフォーマンス管理に関する基準が定められています。これにより、内部監査部門が効率的に運営されることが保証されます。

  • ドメインⅤ: 内部監査の実施

    • 内部監査業務の具体的な実施プロセスが詳細に示されています。個々の監査業務の計画、実施、報告のステップを通じて、内部監査の効果と品質を確保するためのガイドラインが提供されています。

3. グローバル内部監査基準の適用とその重要性

3.1 適用範囲と影響

この基準は、内部監査を行うすべての個人や組織に適用されます。企業の規模や業種にかかわらず、この基準は内部監査の質を確保するための指針として機能します。また、公共セクターにも適用され、その特有の条件に対応したガイドラインが提供されています。

グローバル企業では、異なる国や地域での内部監査活動における一貫性を保つために、この基準が特に重要です。統一された基準で監査を行うことで、企業全体のリスク管理を強化し、グローバルな視点での信頼性を高めることができます。

また、5年に一度の実施が推奨されている「内部監査の外部品質評価」においてもこの新基準が適用されることになります。基準に適合しているという評価を得るためには、今のうちから基準をしっかりと理解して自社の内部監査への適用を進めましょう。

3.2 グローバル内部監査基準の重要性

グローバル内部監査基準は、内部監査の質を評価し、継続的に改善するための基盤を提供します。内部監査部門がこの基準に従うことで、ガバナンスやリスク管理、内部統制が強化され、組織全体の信頼性と持続可能性が向上します。また、この基準は、経営陣や取締役会に対して内部監査の結果を効果的に伝えるためのフレームワークとしても機能し、経営の意思決定をサポートします。うまく活用することで、社内における内部監査の認知度や価値向上のためにも役立つでしょう。

4. 2025年の適用開始と今後の展望

4.1 2025年からの適用開始

グローバル内部監査基準は2025年1月9日から正式に適用されます。この基準に基づいて業務を実施することで、企業のガバナンスやリスク管理の改善に貢献し、組織全体の信頼性を向上させることが期待されます。今から準備を進めることで、スムーズな移行と適用が可能です。

4.2 内部監査に求められること

今回のグローバル内部監査基準の改定により、内部監査部門には、さらに高い品質で監査業務を遂行することが求められています。新しい基準に対応するために、内部監査部門は自らの監査プロセスを見直し、基準に沿った実践を行うことが不可欠です。

特に、内部監査部門長には、改定された基準の内容を正確に把握し、それを取締役会や最高経営者に適切に伝える役割が求められます。内部監査の「必須条件」とされる事項については、取締役会や経営陣がその重要性を十分に理解し、内部監査部門の活動に反映させることが重要です。

また、内部監査部門は、企業の戦略や方針を十分に考慮し、それに沿った内部監査の戦略と方針を策定する必要があります。取締役会や最高経営者と積極的に協議し、内部監査活動の役割や期待を明確にすることが、今後の内部監査の信頼性と効果を高める鍵となるでしょう。

これにより、企業は持続可能な成長を遂げるとともに、リスク管理やガバナンスの強化に貢献できるでしょう。今後も、内部監査が企業の信頼性向上とリスク対応力の強化において重要な役割を果たし続けるために、基準の適用と改善を継続して行うことが求められます。


今回の記事では、2024年に発表された「グローバル内部監査基準」について簡単に解説しました。この基準は、内部監査の信頼性と質を向上させるために不可欠なフレームワークです。今後は、この基準に基づいた具体的な監査の実施方法や、実務における適用事例などについても詳しく紹介する予定です。引き続き、お楽しみに!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?