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「Haifa Group」という世界最高の農業技術集団

突然だが、私の本業は肥料の仕事をしている。

このnoteを見てくださる方は、不特定多数で、どのような方が見てくださるか、またいつ所属先に見られるかもわからない。

だからこそ、今までは本業の仕事についての言及は避けてきた(基本的には、青年海外協力隊時代の活動であったり、趣味の話だったりだ)。


しかし、今日は語りたい。「Haifa group」という、世界最高の農業技術集団について。

まず、大前提として、Haifa groupは私自身にとって、ライバル(同業他社)である。これは単にcompetitorを棚に上げて、自身の知識をひけらかすためのものではないことを前置きさせて頂きたい。


ーHaifa Groupとは、何か。

Haifa Group(Haifa Chemical)は、イスラエルの肥料会社である。「肥料会社」と聞いて、あなたは何を思い浮かべるだろう。

おそらく、世間一般にはベールに包まれた世界かと思う。そして、もしあなたが化学産業に近しい人間であれば、こう思うはずだ。「肥料というのは、産業としてのブレイクスルーがない、斜陽の業界」だと。


ハッキリ言って、それは正しい。

肥料(土壌肥料)の歴史は長い。その歴史は、ゆうに100年以上の時を越える。そして、古い。産業としても学問としても、他の科学技術分野に比べて、先進的な動きがないのが肥料の世界ともいえる。


話が逸れた。

Haifa groupについて、話を進めていきたい。

Haifaはイスラエルの肥料会社。とりわけ国際肥料業界では、硝酸カリの世界的なサプライヤーとして知られる。※英語版wikipediaですが、下記のリンクを参照・また、アプリで翻訳していただきたいです。


Haifa Group(Haifa Chemical)は、イスラエル政府運営の国営企業として1967年に産声を上げた("Haifa"というのはイスラエルの都市名でもある)。イスラエルは小さな国土ながら、死海からは炭酸カリウムが、南部に位置するネゲヴ砂漠からはリン鉱石といった肥料原料が採取できる。

それらの、肥料資源を生かして生産される「硝酸カリ」を全世界に供給する国営企業としてHaifa Chemicalは誕生した。そのような生い立ちを経て、1989年に民営化。その歴史の長さは、日本の老舗肥料会社達と変わらない。


国際肥料業界の中で、Haifa Groupが異質なのは、自分たちの技術を惜しみなく公開・共有する姿勢にある。

参照:

動画を見ていただければわかるように、彼らはただの肥料会社ではない。IOT技術やソフトフェアを駆使した農業技術集団ともいえる。

そして、彼らの技術的・学術的知見はHaifa Academy(オンラインWebinar)として、定期的に全世界に向けて生講義される。

彼らは農業系学会の運営組織や国際肥料協会ではない。一つの民間企業だ。

実をいうと、イスラエルのHaifa Group以上に規模の大きい肥料会社(俗にいう、肥料メジャー達)は世界に多数ある。ノルウェーのYara International、カナダのNutrien、米国のMosaic、ドイツのK+S、ロシアのUralChem、中国のSinofert辺りが代表格だ。ただ、どちらかと言うと、これらの企業は国営系、もしくは政府の資本が介入した巨大企業という位置づけのほうが強い。(余談だが、国際肥料メジャー達は、自国で採取される鉱石資源を有する国々に多い。すなわちランドパワーがものを言う)

参照: https://deallab.info/fertilizer/


どちらが良い、悪いというものではない。

しかしながら、国営系の企業が名を連ねる国際肥料業界において、Haifa Groupは極めて異端な存在だと言える。


単刀直入にいうと、私はHaifaを尊敬している。

それは、ただ単に民間の肥料会社としてイノベーションを起こし続ける姿勢や、技術を公開するオープンマインドにあるわけではない。

自分たちの従業員を敬う心や、周囲の人々にいかに驚きや喜びを与えるか、そこに焦点を当てていることが、伝わるからだ。

畏れ多くも書かせていただくと、日本の肥料業界・企業群が忘れているものは、このような事ではないだろうか。


最後に、彼らは私にとってライバルだ。

資本主義の競争の中で、感動や共感はいらない。

しかしながら、彼らと同じフィールドで戦える事を誇りに思う。


憧れであり、時として打倒すべき存在。

それがあれば、人はどこまでも行ける。

イスラエルのHaifa Groupはそれを教えてくれた。

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