ネバダの空に祈りを捧げる
あんな風に飛んでいきたかった。
あなたが見ていてくれるからこそ
あなたが見ていてくれると思えばわたしの手はどれだけだって文字を紡ぐことができる。あなたの目の前でならわたしはどれだけの音でも重ねられる。あなたがいればわたしは万年筆のインクのようにどこまでもほとばしることができる。あなたがいれば。あなたさえ見てくれたら。わたしにはあなただけがいればいい。あなたはわたしだけ見ていればいい。
決して裏切りなんかじゃない。単なる火遊びだ。
砂埃から逃げ出して
ローレンスは平和な町だ。ぎらぎらとした黄金の輝きともけたたましい群衆の雑音とも無縁だ。ただあらゆるものはそこにあるだけでそれ以上でもそれ以下でもない。見渡せば地平線の限りを青空が埋め尽くし塊の雲がゆるやかに流れていく。時は常に一定の密度を保って推移しながらそこに住むものの思考を象る。ただそこに存在するだけで許される世界に誰だって生きていたいのにどうしてすべてのものはそれと逆行するように動いていくのだろう。
だってもういい加減に嫌気が差してしまったんだ。ローレンスは平和な町で、そしてとても退屈だった。
空へ、再び
誰かがいなくなれば別の誰かを代わりに据えるだけ。そうして次々と見てくれる誰かの名を変えながらわたしはいつまでもインクを流し続ける。あなたが降りたところで別の誰かなんてすぐに見つかる代替可能な哀れな存在。
わたしは永遠に飛び続けていたい。昔も今もこれからも。それだけが勝つ方法なのだと教わったから。
あらゆる存在よ、わたしが空へ向かうための踏み台となれ。