映画評 レビュー ピーター・グリーナウェイ監督作品 2024年6月14日

グリーナウェイ監督の作品を3作続けてみた。「ZOO」1985年、「建築家の腹」1987年、「数に溺れて」1988年である。
「建築家の腹」は高名な建築家が自分の腹に異常に執着し始めて、自滅していくお話である。
「数に溺れて」は数に意味を見出して人生を進めていくお話である。数や溺死にこだわり、人生の重大事を綱引きで決着する。
「ZOO」は生き物の腐敗過程の撮影に執着するお話で、果ては妻の、ついには自分の腐敗過程を撮影する。

すべてナンセンス映画である。話の筋に意味はない。というか意味不明である。監督の主眼は、ナンセンス映画を装った、人間、現代文明批判だと思う。

私たちは、人間を最も進化した生き物と思っているが、腐敗した時に辿る過程は他の生物と何ら変わらない。
また、どれだけ努力して築き上げた地位も僅かのことで簡単に地に堕ちてしまう。
また、人は自分の決断でより良い人生を生きていると思っているが、それは数占いや、綱引きで決めるのと似たようなものだ。
つまり、人間よ、おごるなかれ、である。

この辺りが監督の主張だと思う。

意味不明の物語を作る創作者が時々いるが、彼らの情熱を支えるものが何なのかにとても興味がある。もし私が現代文明批評の物語を作るなら、意味のあるストーリーをどうしても作ってしまうと思う。
破滅的人生を歩んでいるのか、とか、双極性障害の傾向があるのか、などと空想してしまう。


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