エッセイ ジャニス イアンとその時代 2023年5月
私の人生の懐メロに、森田童子と並んでジャニスイアンがいる。高校生の時によく聴いた。今日、頭に”Love is Blind”の歌詞が浮かんできたので、ユーチューブで久しぶりに聴こう、と思ってユーチューブを開いてJanis Ian を検索すると、”Stars”が目に留まった。Laove is Blindという気分でもないか、と思って”Stars”をクリックした。
歌詞 和訳
動画にあるように1974年のライブのようである。調べてみると、この曲は、1974年に発表された同名のアルバムに収録されていて、アルバムのレコーディングは1972‐73にされている。
歌詞の内容と共にその真摯な歌い方に惹きつけられた。ジャニスイアンは弱い自分の内面を歌う歌手である。日本で人気があったが、アメリカではそれほどでもなかったようだ。日本人の心象に合っていたのだろう。
歌詞(意訳)に、25歳にもなる男が本気でスターのあなたに恋をしているのだ、という箇所がある。つまり当時はまだ恋は身近な人にするものであって、歌手のような遠い存在にするものではなかったのだろう。目の前に実在するものが信じられたのだ。よき時代だと思う。
他に、その恋した男があなたの頬にキスをする、と歌われていて、今では考えられないファンとアイドルの距離の近さである。今は手荷物検査をしたうえでの、握手会が限度だろう。遠く離れた存在に、独りよがりの恨みを募らせて殺意を持つような時代ではまだなかったのだ。みんな人とつながっていて、独りよがりな奴は周囲から諫められたのである。
さて、1973年と言えば、ベトナム戦争でアメリカが負けてベトナムから撤退した年だ。ベトナム反戦運動が高揚していた。この歌はその時代背景ともちろん無関係ではないと思う。この時代の若者は、どのような態度を取るにせよ、ベトナム戦争と無関係ではいられなかった。反戦平和は多くの若者の切実な願いだったと思う。その真摯さがこの歌詞にも影響を与えていると思う。そしてこの歌い方にも。
アメリカは国内に大きな問題を抱え、大きな犠牲を払いながら、それを乗り越えようとしてきた国だと思う。公民権運動然り、ベトナム戦争然り。そしてAIDSをきっかけにしたゲイの解放運動然り。どちらの側にいるにせよ、人々は傷つきながらも学習していっただろう。
漠然とことが進んで、結局は同調圧力で何も変わらないような日本という国に住んでいると、何ともうらやましく思う時がある。
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