映画評 レビュー 「キカ」ペドロ・アルモドバル監督 1993年製作 2023年10月

「AII About My Mother」(1999年)で日本で名が知られた監督だ。私はこの作品を見ていない。

「キカ」は日本でもほとんど知られていない作品なので、レビューの需要も低いだろう。欧米ではほとんど評価されてないようで、故に知名度が低い。

「キカ」のあらすじは、

https://mihocinema.com/kika-183509

この映画を観る直前に同じ監督の「神経衰弱ぎりぎりの女たち」(1988年)を観た。私は何の感慨も抱かなかった。お友達を出演させるために映画を撮ったのかな、と思った程度である。

「キカ」とはメイクアップ アーティストである主人公の名前である。映画の前半部分は上記の作品を踏襲しているように思った。キカの恋人の一人である中年ライターの華麗なる女性関係だけだった。上記の作品はそれだけで終わった。取って付けたような結末があったが。
本作の雰囲気が変わったのは、ライターの殺人が明らかになってからである。躊躇いもなく次々と殺していく。動機は不明で、描かれていない。
他の登場人物としては、中年ライターの妻の連れ子の若い写真家、パパラッチで美人なテレビリポーター。そしてキカのもとで働くレズビアンのメイドの女性だ。ほぼこの5人で物語は進んでいく。
キカはポジティブで無垢である。傷付けられても前向きだ。若い写真家はネガティブだ。感情の表出が少ない。死と隣り合わせである。中年ライターとテレビリポーターは過剰である。メイドは物事に動じず、堂々としている。
物語ではキカのヒマワリのような明るさが際立っている。それが監督にとっての主題だろう。

それにしてもなぜ監督は中年ライターにこれほど人殺しをさせたかったのか。多分ただの色恋沙汰だとテレビリポーターの出番が無いからだろう。テレビリポーターをどうしても出したかったのだ。それはなぜか。
1 当時盛んだったパパラッチに象徴される興味本位の報道を批判したかった。
2 お友達の女優を出演させたかった。
確かにパパラッチはウンザリだが、私はこのどちらにも興味が無い。

英語版のウィキペディアには、この映画がブラック コメディーだと書かれているが、私には殺しの動機の不明な、謎解きのされないサスペンス映画であった。
展開が読めないサスペンス映画という意味でのみ私には楽しかった。

追記

スペイン語に詳しいわけではないが、「Kika」はスペイン語としては通常の綴りではないと思う。もしキカと発音させたかったら、「Quica」と表記するだろう。Kは普通、外来語に対して使われる文字である。何か意図があったのかもしれない。外国から来た女、だろうか。


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