見出し画像

エッセイ 巧妙な擬態 ムラサキシャチホコ 2024年4月30日

近くにいるはずだが一生会えないだろうな、と半ば諦めている生き物たちがいる。その一群が擬態している昆虫である。

憧れの生き物たちだ。

先日アパートの階段で突然遭遇した。

えっ、こんなに小さかったのか、が第一印象である。

図鑑でこのシャチホコガの仲間を見た時、どうすればこんなに羽が捻じれるのだろう、ととっても不思議だった。捻じれた羽でどうやって飛ぶのだろう。とまっているときだけ羽を捻っているのだろうか。とても興味を掻き立てられたが、こんな巧妙な擬態の昆虫を見つけ出す自信は全くなかった。

飛んでいかれたら一生後悔しそうなので、まずスマホで羽が写るように側面から写真を撮った。次に真上から写真を撮った。
写真の写り具合を確認した時に、あれっ、と思った。羽が捻れてないのだ。で、上から実物を確認してみると、平面な一枚の羽根に模様が付いているだけなのである。しかし側面から見直してみるとどうしても捻じれて見える。
この蛾の模様が巧妙というよりも、私の目は一体どうなっているんだろう、こんなことに騙されるなんて、と思ってしまった。幾つかのポイントがあって、その部分が満たされてしまうと、勝手に立体的に見るようにできているのだろう。

ムラサキシャチホコが想定している外敵は小型の鳥類だろうが、人間の目も十分に欺ける。

幼虫の食草はオニグルミということなので、川のそばから飛んできたのだろう。たぶん多摩川だ。長旅、お疲れさま、である。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?