〔余白の創造性〕昔ながらというもの

余白の創造性連載第三十五回目のテーマは

”昔ながらというもの”

昔ながらという言葉を耳にする機会はあれど、
これまで、それがどういった意味の言葉なのかをしっかり考えたことはありませんでした。
何となく古き良きものだったり、懐かしいもののような意味で理解していました。

実際に辞書で調べてみると、昔と変わらないものや古くから変わらない様のような意味が出てきました。
しかし、何となく感覚的にはただ古いということ以上の意味を含んで使用されている言葉だと思うのです。

古いものというと、旧式だったり、前時代的、一昔前や昔風など、少し時代遅れと言いますか、何となく良い意味で使われているばかりではないと感じます。
年月が経っていることや、いささか風化していること、それに代わる新しいものがすでに存在していることを表す意味の方が強くはないでしょうか。
古いということが、経年による劣化以上のことは表現していないように思います。


しかし、”昔ながら”というのはビンテージやレトロといった言葉と似たような使われ方をしていると思います。
ビンテージというと、時間経過によって趣や希少性が高まり、それが付加価値として認められたものですよね。
レトロは、古き良きものを懐かしむことだったり、ノスタルジーを感じるようなものかなと思います。あとは何となく可愛らしさみたいなものも感じます。
”昔ながら”という言葉もやはりこの二つの言葉と通ずるものがあるのではないでしょうか。
古くから人々に愛されてきて、変わらず好まれているものと言いますか、良いモノだからいまも親しまれていると言ったようなものでしょうか。

例えば、喫茶店というのは”昔ながら”という形容詞が似合うものの一つでしょう。
最近はそこかしこにオシャレなカフェがありますが、あのような西洋的なオシャレさやキュートなものとは違い、
喫茶店は”お洒落”で”可愛い”、そして何となく懐かしさみたいなものを感じますよね。
この感覚を上手く言語化するのは難しいですが、恐らくある程度皆さんにもこの感覚は共有できていると思います。

プリンなんかも、近頃のオシャレなものは、なめらかな舌触りでクリーム感が強くとろけるようなものが多いですが、
”昔ながらの”プリンというと、タマゴ感が強く、食感は固めで、カラメルの苦味が少し強いものを想像します。

その他にも様々に”昔ながらの”という形容詞が使われているモノはありますが、
共通していることは、そのものに似たものや現代的にアップデートされたものと差別化するために使用されていること、
可愛らしさや懐かしさ、馴染みやすさみたいなものが付加価値となっているものが多いこと。
この辺りが”昔ながらの”という形容詞の意味ではないでしょうか。

どこに価値を見出すのかというのも余白の創造性によるものですよね。
ただ古いモノとしてしまうのか、その古さに”昔ながらの”という付加価値を見出すのか、余白の広がり方は視点の位置によっても大きく変化するのでしょう。

とりあえず、書いていて昔ながらのプリンが食べたくなってしまったので探してこようと思います。


今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。

今回のテーマは先日喫茶店に行った際にふと思ったことでした。
カフェにはカフェの喫茶店には喫茶店の良さがあり、コーヒーを提供するお店ということは一緒だけれど、その良さは性質の違うモノだなあと感じました。

来週のテーマは

“空気を読むこと”

それではまた来週の金曜日に。

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