〔余白の創造性〕選ぶこと

余白の創造性連載第二十四回目のテーマは

”選ぶこと”

僕たちは日々、毎秒”選択”をしながら生きています。

恐らく何も選んでいない時間はないでしょう。

翌日の朝何時に起きるのかを選び、前日の夜にアラームをセットします。

朝ご飯も気分に合わせて何を食べるのか決め、着ていく服を選び家を出ます。

何をするにしても僕らは自分で選び、それを実行しているのです。

僕らの人生はそうした選択の連続でできていて、

その道を進むことの責任は僕ら自身にあるということです。


今回このテーマを選んだ理由は、

僕が高校生の頃に読んだ、パウロ・コエーリョの”アルケミスト”を最近になってふと読み返したからです。

当時、高校生だった僕は雷に打たれたような衝撃を受けました。

この本を読んでから”選び方”が丸っきり変わりました。

人生を変えてくれた本といっても過言ではないかもしれません。

この本はサンチャゴという羊飼いの少年が主人公のお話で、

彼の旅の様子や道中で出会う人々との交流を描いたものです。

彼が出会うのは、奇妙な占い師や年老いた王様、クリスタルを売る商人や錬金術師で、

少年が彼らとの会話や交流を通して人生に必要な知恵を得ていくのですが、

それは高校生だった僕にとっても大きな学びでした。


僕たちが何かを選ぶとき、何に従って選ぶでしょうか。

それは僕ら自身の好奇心であったり、探究心であったり、

そういう自分の内側から湧き上がってきているようなものによってだけでしょうか。

アルケミストのなかであるパン屋の主人が登場します。

年老いた王様が言うには、そのパン屋の主人は、子どものころは旅をしたがっていたけれど、

まずはパン屋の店を買い、お金を貯めて、そして歳を取ってからアフリカで一ヶ月過ごすことにしたといいます。

その話を聞いたサンチャゴは羊飼いになれば旅が出来ると言います。

それに対して年老いた王様は、

”結局、人は自分の運命より、他人が羊飼いやパン屋をどう思うかという方が、もっと大切になってしまうのだ”

そう話すのです。

そのパン屋の主人は、何十年もの間、飲み水と食べるもの、毎晩眠るための一軒の家を確保するために、その運命を深くしまい込んでしまったわけです。

人は人生のある時点で自分に起こってくることをコントロール出来なくなる。僕らは宿命によって支配されてしまうと思い込んでしまっているのです。

錬金術師はサンチャゴに、自分の運命を生きてさえいれば、知る必要があるすべてのことを人は知っている。夢の実現を不可能にするものが一つだけあり、それは失敗するのではないかという恐れだと教えます。

年老いた王様も“決心するということは、まるで、急流に飛び込んで、そのときには夢にも思わなかった場所に連れてゆかれるようなものだ”と言います。


人々が恐れているその“失敗”というのは一体何なのでしょうか。

なにが失敗なのでしょうか。

パン屋は家があり、毎日食べるものを考えずとも食料が手に入り、安定しているからということで嫁をもらいました。

一方で、羊飼いは家もなく、行き当たりばったりで食料を得ていて、サンチャゴが旅の途中で出会った少女には、文字が読めるのにどうして羊飼いなんかしているのかと疑問を持たれる始末です。

しかし、旅がしたいという夢を実現するために羊飼いになったサンチャゴと、

旅がしたかったけれどパン屋になった男、

この二人をどちらが成功で、どちらが失敗だと決める共通の基準など存在するでしょうか。

この二つは全く別の事象で、比較して優劣を付けるようなものではないと思うのです。

僕らは食べるために、毎晩眠るために生きているのか。

はたまた、生きるために食べ、眠るのか。

結果は同じように見えるけれど、

どちらが自分自身の中心にあるのか、

それによって、その二つの道は全く別の方向に続いているのです。


ただ一つだけ、年老いた王様の言葉で

“お前の心に耳を傾けるのだ。心は全てを知っている。それは大いなる魂から来て、いつかそこに戻ってゆくものだから”

その道は自分が、自分の心が進みたい道なのかどうかが大切なのです。

サンチャゴが砂漠を横断しているときに出会ったキャラバン隊のラクダ使いも、

”人は自分の必要と希望を満たす能力さえあれば、道を恐れることはない”

と言っていました。


僕は人生において偶然というものは存在しないと思っています。

僕らの人生で起こる全てのことは、

他の何かによって引き起こされているわけではなく、

僕らが”選ぶこと”によってその道に進んでいるのです。

それは必然や運命と呼ばれるモノなのかもしれません。

アルケミストで色々な場所を旅してきたサンチャゴが最後にこう言います

”人生は運命を追求するものにとっては、本当に寛大だ”


アルケミストは僕がもっとも強く影響を受けた本です。

何か重要な選択をするとき、僕は必ず彼らの言葉を思い出します。

生きることは“選ぶこと”

どのように選ぶかが、どのような人生になるのかを決めます。

常に行っている“選ぶこと”

その一つ一つを大切に選んでいきたいものです。


今週も最後まで読んでいただきありがとうございました。

今回は僕の人生のバイブルである“アルケミスト”の言葉を引用しながら”選ぶこと”の余白を考えていきました。


来週のテーマは“言葉について”

それではまた来週の金曜日に。

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