〔余白の創造性〕季節の音
余白の創造性連載第十三回目の今回のテーマは、
”季節の音”
季節には音があります。
正確には僕らが季節を感じる音があります。
きっと、いまこれを読んでいる皆さんも何か音を思い浮かべていることでしょう。
日本での暮らしで特別なことの一つが、この季節を感じることだと思います。
もちろん他の国にも季節はあります。
しかし、日本ほどはっきりと、それも四つもの季節の変化を感じられる国は稀でしょう。
さて、それでは今回のテーマの季節の音について、余白の創造性考えていきます。
まず、季節それぞれの持つ音とは何でしょうか。
春は、小川を流れる水の音やハチが花の周りを飛ぶ音、花びらが地面に落ちる音など。
夏は、蝉の声、生い茂った草木が風に揺れる音、風鈴の音、波の音やカモメの声、大粒の雨が地面を打つ夕立の音、太陽が照り付ける音。
秋は、スズムシの声、葉が色付いていく音に地面に落ちる音、落ち葉を踏む音。
冬は、雪を踏む音、灯油を売る車のアナウンス、暖炉で薪が燃える音、空気が凍り付いていく音。
いくつか書きましたが、これ以上にもっとそれぞれの季節に、それぞれの季節の音が響いていますよね。
しかし、この季節の音というのは、本当にその季節の音といえるのでしょうか。
それは、僕らの共通認識によって作られているものとも考えられませんか?
例えば、蝉の生息していない国、夏に蝉が鳴くことのない地域で暮らす人々にとっては、蝉の声は”夏の音”ではなくただの虫の声です。
その他の音も同様に、その季節にその音のする地域以外に住む人にとってはただの音です。
つまり、僕らは自分の住む国で、その季節になると響いてくる音を”季節の音”として感じている。
”季節の音”というのは、その土地の人々だけで共有している感覚だということです。
それらの音は、僕らの記憶の中で、その”季節の音”であって、本来は季節を表す音ではないのです。
きっと、僕らのそれぞれの季節の記憶の中で響いている音が、その季節の音になっているのでしょう。
勢い良く鳴く蝉の声を聞けば夏の訪れを感じ、
静かに繊細なスズムシの声とともにひんやりと涼しい空気が漂いはじめる。
もちろん、虫や植物は気候条件によって変化するものなので、それに起因する音は正確に”季節の音”と言えるのかもしれません。
また、天気による音も同じく気候条件によるものでしょう。
それでも、夏に雪が降る国があって、雪を踏む音が響いているかもしれない。
冬になると蝉の声が聞こえてくる国があるかもしれない。
春に葉が落ちて、落ち葉の絨毯が敷かれている国があるかもしれない。
そんな風に、どこかで響いている、その土地の”季節の音”に思いを馳せてみるのも素敵ではないでしょうか。
今回も最後まで読んでくださりありがとうございました。
皆さんにとって思い出深い季節の音は何でしょうか?
きっと、僕らの記憶のなかでその音は、その季節に鳴り響いています。
今年は秋の訪れはどんな音が知らせてくれるのか楽しみです。
さて、次回のテーマは“一駅分歩くこと”について。
それではまた来週の金曜日に。
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