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メルカリのペンキで壁塗り、のススメ

東京の自宅は築10年のマンションをほぼ20年前に買ったものですから、天井も壁もフローリングもカーペットも……どこもがつごう30年分薄汚れているわけです。

思い立って、渋谷の東急ハンズで輸入モノのペンキを買い求め、自ら壁を塗り始めたのがおよそ15年前。いっとう最初はトイレを真ピンクに塗り上げてみました。が、これがなかなかの出来栄えでして(?)。家人・友人らの評判も上々(?)。以来、独りペンキ職人修行を15年ほど積んでいます。

もっとも塗るのは年に2回か3回。周囲に同業の師も同好の士もいないものですから、すべては見よう見まね。上達は遅々としたものですが、そもそも塗料自体が日進月歩でして、ズブの素人でもやってみればなんとかなります。案ずるより塗るが易し、ですね(わ、オヤジ)。

要は塗料。色々使ってみましたが、やはり輸入モノ(特に英国製)と国産の差は歴然。塗り終えた後の達成感や幸福感が段違いです。

ただ、問題は輸入モノと国産とでは価格も段チだということ。愛用のHIPもFarrow & Ball (ともに日本の取扱店はカラーワークス)も容量比で国産の2倍〜3倍といったところが肌感覚です。

朗報は、しかし、この15年内のAmazonやメルカリの台頭でしょうか。特にメルカリには前述のFarrow & Ballなんかを破格の値段で出品してくださる方がときどき降臨で大助かり。想像するに、ご自宅の新築時や改築時に塗装面積からだいたいの必要量を割り出した上で、それよりも若干多めに買い込むものと思われます。最後の最後、ハガキ一枚分を塗り残してペンキが足りない! となったら残念過ぎますもの。その「若干多め」部分が恒常的にメルカリやヤフオクに出品され続ける、という構図かと。

もっとも、禁断の「他ならぬ自分が塗る」の世界に足を踏み入れる方々は日本ではまだまだ少数派と見受けます。それが証拠に、メルカリから届く外国塗料の新着案内は、他にも登録している、例えば、FLOSの照明器具なんかに較べると頻度が断然少なめです。

そこで大切なのが、「出品見合いで壁塗り方針をフレキシブルに決める(または、変える)」ということ。すなわち、こちら側の需要に沿ったものでメルカれればそれにこしたことはないのですが、こと輸入塗料の場合、そもそも国内の流通量が少ないですから滅多にそんな希望通りにはいきません。であるならば、供給ありきで壁の色を決める、という実に良い加減(よいかげん)の、他力本願なやり方が断然グッド。より具体的には、

①希望の色が出るまで気長に待つ、果報は寝て待て作戦

②価格的にも容量的にも出物が出たら、あとは「この色をいまの自分は許容できるか?」を後付けで考える、出たとこ勝負作戦

③価格、容量、色味を全体的に勘案して、「これならいずれ出番がやって来るに違いない」ととりあえず買っておく、(見通し)不良在庫甘受作戦

考え方は、大きくはこの3通りかと。結論的には上記①②③、僕はぜんぶやっています。もちろん、結果、「ライトなグレーで廊下を塗り込めたつもりが、意外とダークで夢野久作世界に迷い込んだ」といった失敗や、「容量足らずは初めから承知で海老茶と青緑(緑青?)のツートンに恐るおそる挑戦してみたらなかなか雰囲気出た」とか色々ですが、塗り壁の良いところは、

「納得がいかないならいつでも何度でも上塗りが利く」

という点。長い人生と一緒ですね。

さらには、緑内障を進めてしまって視野欠損のある僕にとって、細かいことはつべこべ言わず、黙々と白く塗り込める! だとか、無心にピンクに塗り潰す! だとかの没入感、高揚感が実に素晴らしい。

しかも、ペンキ塗りは(マスキングテープを使った)「養生が9割」的な側面が多分にあります。なので、緊張と緩和といいますか、辛抱と開放といいますか、一連の作業がとてもドラマティックな構成となっております。ストレス発散にも瞑想にも強くお勧めです。

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