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「打率7割オジサン」が迷惑なワケ

長年の持論を手短に。
オジサンは「何かを判断する人」の意です。
オバサンでも良いし、年齢も関係ない。
オジサンにありがちなので、自戒を込めたタイトルです。

スーパーマンの落とし穴

「打率7割」は立派です。すごい。
世の中は複雑です。何かを評価したり、決めたりするとき、凡人の打率は余裕で5割を切ります。
凡人の私は専門の経済・金融関係でも打率7割ぐらい、それ以外では甘く見て3割、苦手分野なら1割にも届かないでしょう。

そんな凡人と違い、世間にはいろんなテーマで打率7割程度で「正解」を出せる人がいます。
見識、経験、頭脳、勘。
すべてに恵まれたスーパーオジサン(スーパーオバサンでもスーパーLGBTでも、なんでもいいです)がいます。
超人、ですね。

残念なのは、そんな超人は意思決定で独善的になりがち、人の意見を軽視しがちなことです。
アタマがいいから、まわりがバカに見えてしまうのでしょう。

7割なんて超人的打率でも、3割は打ち損じるわけです。
厳しい世界なら、ときに1度の打ち損じが致命傷になります。
そうじゃなくても、「微妙な打ち損じの積み重ね」は組織に致命的なダメージの蓄積をもたらします。

なぜか。

感染対策でおなじみのスイスチーズモデルを思い浮かべると分かりやすい。

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手洗いだけ、マスクだけ、ワクチンだけ、三密回避だけ。
それぞれ単独では防げない感染も、ガードを重ねれば「漏れ」を抑えられる。最後の薄い1枚が、感染をブロックすることがある。

同じことは物事の判断や意思決定にも言えます。

「打率7割オジサン」は、ひとりでチーズ3枚分や4枚分のフィルターになる。超人です。えらい。すごい。
でも、必ず死角はある。人間だもの。
そして、その死角は、凡人の知見で防げることもあるわけです。

「穴だらけのチーズ」の私は、特定の分野ではかなり的確な判断ができます。穴の配置が偏っている、典型的な凡人です。
超人はどんな場面でも「凡人に任せちゃダメだ、俺が決めなきゃ」と考えてしまう。
たとえ凡人の意見が正しいときでも、スルーしてしまう。

この「スルーの積み重ね」が、命取りになる。

凡人は、凡人なりに人間です。
低く見られているのは分かるし、自分が正しいときでも意見がスルーされれば、気分は良くない。
超人は独善的な場合が多いので、何か言えば機嫌を損ねかねない。

その結果、「超人様、ビミョーに間違ってるけど、放っておこう」となる。モノ言えば、です。
下手すると、致命的間違いを喜んで見過ごす。ひどい結果をみて、「そら見たことか」と溜飲をさげる。人間だもの。

「スーパーオジサン」を止められるもの

いったんこの落とし穴にはまると、スーパーオジサンの軌道修正は大変です。
自力では修正のきっかけがつかめない。
そもそも自分が落とし穴の中にいるのを自覚できないケースも多い。

スーパーオジサンの暴走が続くと、組織は少しずつ、運が悪いと一気に、劣化していきます。

歯止めになりうるのは何か。
それはたとえば「もう一段上の超人オジサン」あるいは「そこそこできるオジサンの集団」でしょう。
「キミ、今、ちょっとアレだから、アタマを冷やしなさい」とブレーキをかけられる人、仕組みがあるか。

これが組織の命運を分ける。

さて、話は飛びます。

だから、我々は民主主義なんて面倒くさい仕組みをとっているわけです。

一昔前、「決められない政治」なんてフレーズが盛んに言われました。だから日本の政治はダメなんだ、と。
でも、私は政治家の大事な仕事は「簡単にスパッと決めないこと」だと思っています。
世の中、複雑です。
スパッと決められることなんて、ほとんどない。スパッと決めてスッキリすると、ほとんどのケースで、ろくなことがない。
チマチマと「みんなの意見の真ん中あたり」を探る面倒くさい作業が民主的な意思決定なワケです。

また話が飛びます。

プーチンさんは超人です。

まず、はっきりさせておきます。
彼がやってきたことを肯定するつもりは毛頭ありません。世界にとっても、ロシア国民にとっても、好ましいリーダーではないと考えます。

しかし、「自らが権力を掌握しつつ、ロシアの勢力・影響力を拡大する」という彼の目的からは、7割どころか9割ぐらいの打率で「正解」を積み重ねてきた。まぎれもない超人です。
そんな超人でも、致命的な失着をやらかしてしまう。
中国の「ゼロコロナ」も同じような状態になっている。

どんな超人でも、個人の力には限界があります。

「自分の知らないことを、誰かが知っている」と知っておく。
間違いを正してもらったら「ありがとう」と受け入れる。

たったそれだけのことができるか、できないか。
スーパーオジサンには、それが難しいようです。
凡人には、そんなに難しくない。「穴だらけ」の自覚があるから。

もちろん最強は「聞く耳のある超人」です。
そうした人が名君だとか、名経営者だとか、名監督だとか、歴史に名前を残すような仕事ができるのでしょう。
残念ながら、そんな人は「レアもの」のようですが。

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