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「本がすき。」書評集

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光文社のサイト「本がすき。」に寄稿した書評を転載しています。ちょっと真面目な文体です(笑)
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#本

ナメクジに考えさせられる 『考えるナメクジ』

ナメクジほど、「考える」という動詞と縁遠いイメージの生物はなかなかいないだろう。 これし…

高井宏章
3年前
18

これで書けなきゃ、お手上げ 『書くのがしんどい』

書名だけみると、ベストセラー『読みたいことを、書けばいい。』の著者、田中泰延さんがこぼす…

高井宏章
3年前
41

「勉強のやり方」を知らない子どもたちに 『東大式節約勉強法』

私事で恐縮だが、著者の布施川天馬さんと私は、年は二回り以上離れているものの、境遇が少し似…

高井宏章
3年前
46

タペストリーのような大風呂敷 『三体2 黒暗森林』

翻訳モノには、独特のマゾヒズム的な楽しみ方がある。 もう「新刊」は出ている。 でも、読め…

高井宏章
3年前
17

教育の「悪平等」への偏見をほぐす 『日本の15歳はなぜ学力が高いのか?』

PISAをご存知だろうか。 OECD(経済協力開発機構)が3年ごとに行う国際的な学力調査で、Progra…

高井宏章
3年前
44

鳥肌モノのエピソードの宝庫 『エリザベス女王』

秀作ぞろいの中公新書の歴史シリーズのなかでも、指折りの傑作だ。 今年で94歳、在位68年を迎…

高井宏章
3年前
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研ぎすました短刀のような12編 『刑罰』

各国で絶賛され、日本でも2012年の本屋大賞・翻訳小説部門トップに輝いた『犯罪』の筆者の最新作は、期待を裏切らない珠玉の短編集だ。 『犯罪』と『罪悪』の2作を何度も再読してきたシーラッハファンの私にとっては、文字通り、待望の1冊。6月に入手して以来、お気に入りの収録作はすでに3~4回読み返している。 『刑罰』東京創元社 フェルディナント・フォン・シーラッハ ドイツで刑事事件専門の弁護士として活躍してきたフェルディナント・フォン・シーラッハは、自身が体験した事件を下敷きに創

アトピっ子だった自分に、タイムマシンで届けたい 『最新医学で一番正しいアトピーの…

2月14日に光文社のサイト「本がすき。」にこの本のレビューを書いた。 『最新医学で一番正し…

高井宏章
4年前
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「清々しいほど分からない」のに最高に面白い 『宇宙と宇宙をつなぐ数学』

最初に正直に白状しておこう。 私は本書のテーマ「宇宙際タイヒミュラー(IUT)理論」を全く…

高井宏章
4年前
32

「ゴッドファーザー」の華麗な生涯 『天才数学者、ラスベガスとウォール街を制す』

本稿は光文社のサイト「本がすき。」に10月28日に寄稿したレビューです。編集部のご厚意でnote…

高井宏章
4年前
12

SFに息吹を吹き込む新たな古典の誕生 『三体』

本稿は光文社のサイト「本がすき。」に8月8日に寄稿したレビューです。編集部のご厚意でnoteに…

高井宏章
4年前
23

賢者が説く、しなやかな生存戦略 『反脆弱性』

本稿は光文社のサイト「本がすき。」に7月29日に寄稿したレビューです。編集部のご厚意でnote…

高井宏章
4年前
11

「可能主義者」の希望あふれる遺言『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』

本稿は光文社のサイト「本がすき。」に2月19日に寄稿したレビューです。編集部のご厚意でnote…

高井宏章
5年前
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「異端児」が語る正統マネー論『いま君に伝えたいお金の話』

本稿は光文社のサイト「本がすき。」に2月7日に寄稿したレビューです。編集部のご厚意でnoteにも転載しています。 かつて「モノ言う株主」として日本の産業界を揺るがした村上世彰氏の若者向けのマネー論だ。インサイダー取引で有罪判決を受けた「村上ファンド事件」の記憶が鮮明な読者は、異端児の先鋭的な言説が展開されると予想するかもしれない。その期待はあっさり裏切られる。全編にわたって、真っ当至極で、むしろ退屈と取られかねない正論が続く。 『いま君に伝えたいお金の話』幻冬舎 村上世彰