ドラフトガイダンスまとめ
そもそもドラフトガイダンスとは
ドラフトガイダンスとは、米国食品医薬品局(FDA)が発行するガイドラインで、規制の補足説明や具体的な指示を行うものです。
FDAのドラフトガイダンスには、次のようなものがあります。
コンピューターソフトウェアの品質保証に関するドラフトガイダンスでは、コンピューターソフトウェアの使用目的の評価や、リスクベース分析の使用など、コンピュータソフトウェア保証のリスクフレームワークについて概説されています。
Rare Diseases: Common Issues in Drug Development
FDA から2019年に発出されたドラフトガイダンス
希少疾病の治療または予防を目的とする医薬品及び生物学的製剤を開発する治験依頼者がより効率的な医薬品開発プログラムを推進することの支援を目的としている。
そして以下の8点が重要であると述べている。
ガイダンスの序文には医薬品の製造販売承認のための要件は希少疾病に対しても一般的な疾患と同じであることが記載されている。
そしてこのガイダンスで議論されている点は他の医薬品開発プログラムでも遭遇することがあるが、医学的及び科学的知識、自然歴データ、医薬品開発経験が限られていることが多い希少疾病の状況下ではより対処が困難なことが多いと述べられている。
ガイダンスで紹介されているいくつかの話題について以下に紹介する。
自然歴研究について
そもそも自然歴とは?
本題
希少疾患の自然歴は十分に理解されていないことが多く、前向きにデザインされた治験実施計画書に基づく自然歴研究を医薬品開発計画の初期に開始することは非常に重要である。
自然歴研究による疾患への理解は以下の点で治験依頼者の助けとなりうる。
また、試験内で同時対照群を設定することが非現実的または非倫理的である場合などの特別な 状況では適切にデザインされた自然歴研究を介入試験の外部対照群として用いることができる。
なお、エンリッチメント戦略の詳細及び適用事例については 3.3 節を参照。
ヒストリカルコントロール群の利用について
そもそもヒストリカルコントロールとは?
ヒストリカルコントロールは既存の臨床試験データや実世界データ(RWD)を新規試験の対照群として設定するもの。
主に以下のような状況で利用が検討される
ヒストリカルコントロールの利用は特に希少疾患やがん領域での臨床試験において増加が予想される。
しかしデータの信頼性や統一されたプラットフォームの構築など課題も残されている。
本題
医療上の必要性が満たされていない重篤な希少疾病に対しては登録されたすべての患者が試験薬の投与を受けて同時対照群(例:プラセボまたは標準治療)へのランダム化を伴わないようなヒストリカルコントロール群の利用に関心が示されることが多い。
しかし同時対照群でないために生じる系統的な差を排除できないことがヒストリカルコントロール群を用いるデザインの大きな問題である。
一般的にヒストリカルコントロールの利用は重篤な疾患の評価に限定され以下の1から3を満たす必要がある。
しかしながら、臨床経過の予測性が高く客観的に検証可能なアウトカム指標を有する疾患であってもヒストリカルデータでは知られていないまたは記録されていない重要な共変量が存在する可能性に留意が必要である。
なおヒストリカルコントロールの利用に関する詳細及び適用事例 については 3.1 節を参照。
Rare Diseases: Natural History Studies for Drug Development
FDA から 2019 年に発出されたドラフトガイダンス
希少疾病用の医薬品及び生物学的製剤の開発を支援するために用いられる自然歴研究のデザインと実施に関する情報提供を目的としたもの。
Rare Diseases: Common Issues in Drug Developmentでは希少な疾患を対象とした医薬品開発において遭遇する共通の問題を検討しているのに対し、本ガイダンスでは自然歴研究を主題として取り上げている。
このガイダンスでは希少疾患を対象とした医薬品開発の全ての段階における自然歴研究の幅広い潜在的用途や様々な種類の自然歴研究の長所と短所、データ項目、及び研究計画、並びに自然歴研究を実施するための枠組みについて述べられている。
また、試験デザインを試験の目的と整合させて試験結果の解釈可能性を高めるための考慮事項や自然歴研究における患者のデ ータ保護の問題についても論じられている。
承認申請等におけるレジストリの活用に関する基本的考え方
厚生労働省から2021年に発出されたガイダンス
希少疾病のような患者数等の限界から比較試験の実施が困難な場合に薬効を評価する方法としてレジストリデータの活用を促進する目的で作成された。
ガイダンスの適用範囲としては主にレジストリデータを活用する場合が想定されているが過去に行われた治験のプラセボ群等のデータを活用する場合においても参照可能な部分はあるとされている。
このガイダンスにおいては承認申請等にレジストリデータを活用する場合に一般的に考慮すべき点として以下の4点が挙げられている。
また、臨床試験においてレジストリデータを外部対照等として承認申請等における有効性及び安全性の評価に活用する場合に考慮すべき内容として以下の5点が挙げられている。
なお上記の点は全ての状況で必要不可欠な点を示しているわけでないとされており、活用に当たってはPMDAが実施する対面助言を活用することが強く推奨されている。
Interacting with the FDA on Complex Innovative Trial Designs for Drugs and Biological Products
FDA から2020年に発出されたガイダンス
治験依頼者及び申請者に対し、医薬品または生物学的製剤に関する複雑で革新的な試験デザイン(CID)についてのFDA との対話に関する指針を示す目的で作成された。
このガイダンスでは医薬品及び生物学的製剤の開発や審査における新規の試験デザインの使用、モデリング&シミュレーションに関連する技術的課題に関して治験依頼者がFDAからどのようにフィードバックを得ることができるか、並びに審査のために提出すべき定量的及び定性的情報について論じられている。
CID は複雑なアダプティブ、ベイズ流、及びその他の新規の臨床試験デザインを指すと考えられているが、革新的または新規と考えられるものは時間とともに変化する可能性があるためCID の固定された定義はないとされている。
そしてガイダンスの中ではマスタープロトコル、Leveraging Data From Phase 2 to Phase 3及びSequential Multiple Assignment Randomized Trials (SMARTs) が CID として例示されている。なお,CID の詳細及び適用事例については 3.6.1 節を参照。
Master Protocols: Efficient Clinical Trial Design Strategies to Expedite Development of Oncology Drugs and Biologics
FDA から2022年に発出されたガイダンス
成人及び小児の2つ以上のがん種に対して及び2つ以上の試験薬を同時に評価することを目的とした臨床試験のデザインと実施に関して推奨事項を提供する目的で作成された。
なお,このガイダンスは, First in Human の臨床試験は対象としていない。 このガイダンスでは,マスタープロトコルの種類についての紹介がされた後に,以下の点が議論 されている。なお,マスタープロトコルの詳細及び適用事例については 3.4 節を参照されたい。
1.試験デザインに関する留意点
2.バイオマーカー開発における留意点
3.統計解析に関する留意点
4.安全性に関する留意点
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