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申請からわずか1.5h、NYが進める行政DX(2)

ニューヨーク市都市計画局でCity Plannerとして働く、山崎清志氏がその疑問に答えてくれた。山崎氏によると、新型コロナウイルスの感染拡大によって飲食店が壊滅的な被害に遭ったのはニューヨークも同様だったという。

特に第1波、第2波の頃は社会的にも大きな不安に包まれていた。「どうやって3密を回避するか」と飲食店が頭を悩ませていた中、「空気が滞留しない換気の良い状態であれば、飲食店の経営を継続してもいいのではないか」という声が飲食店から相次いだ。換気の良い状態を確保できる場所、それがお店の外というわけだ。そこでパークレットという仕組みに注目が集まったという。

ブルックリンブリッジ

ブルームバーグ市政以降、公共アセットを活用したマネタイズ(収益化)に力を入れていたニューヨーク市とはいえ、当初は日本と同様、道路管理は厳しかったそうだ。それでも新型コロナ禍における飲食店の経営継続のためには「背に腹は代えられない」ということで、道路活用が一気に進んだ。

ここからが目を見張るところ。当初、道路をパークレットとして活用する際には、道路の使用許可や占有許可をニューヨーク市に申し出なければいけなかった。もちろん、その手続きは市役所に出向いて行う。そこは日本と同じだった。

ところが、パークレットの設置を認める政策にかじを切ると、その申請が一気に増えた。このままでは窓口はパンクしてしまう。これも日本でもよく似た風景があったように思うし、既視感が漂う。

リトルアイランド

ただ、ここからがNYの面目躍如だ。米グーグルが提供するアンケート機能である「グーグルフォーム」を活用した申請フォームに切り替えた。グーグルフォームにお店の名前と住所を入力すると、なんと1時間半後にはパークレットの設置許可が下りるそう。

ここに日本にとって大きなヒントがある。日本では、申請フォームを独自で開発する、あるいは開発できるベンダーを探してしまうところだが、ニューヨーク市は既にあるツールを使って、申請フォームを用意したことが特筆すべきところだ。それが結果的にマンハッタンにパークレットが普及する起爆剤となった。

夜のタイムズスクエア

新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着きつつある今、世界的に観光業が復活していくだろう。ニューヨーク市はその筆頭株と言っていい。ハドソンヤードの再開発はもとより、ハドソン川に浮かぶ人工島を開発し、リトルアイランドと呼ばれる公園が誕生している。新型コロナ禍でも着々と進んでいた再開発で、再び世界から観光客がニューヨークを目指すだろう。その時に、街のそこかしこにあるパークレット。夕方になれば、市内各所にあるパークレットでお酒を片手に、料理に舌鼓を打つ観光客があふれ返っていくんだろう。


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