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申請からわずか1.5h、NYが進める行政DX(1)

年の瀬もせまってきたので、色々と書き溜めたものを書いていきます。まずはNY。

2023年6月、NYに行ってきた。かつては廃線跡地で治安の悪かったニューヨーク市のハイラインも今や代表的観光地となった。は2000年代初頭、第108代ニューヨーク市長に就任したマイケル・ブルームバーグ氏が繰り出す様々な政策によって、ニューヨークの公園や廃線跡地などを官民共創で再生したからだ。

NYのハイライン

経済に与えた影響は大きく、ブルームバーグ氏の就任期間中に外国人観光客数は500万人から1140万人へ約2.2倍に成長し、ホテルの稼働率も約10ポイントアップと過去最高を記録した。

コロナ前には年間800万人の観光客が訪れており、周辺の不動産価値を押し上げている。自治体としても長年の懸念だった財政赤字を解消したことでも知られており、まさに官民共創の成功都市と言っていい。

さて、6年ぶりのNYは、アフターコロナのNYでもある。、市内の交通渋滞は相変わらずで、経済はすっかり以前の姿を取り戻しているように見えた。

街の至るところにパークレット

で、気づいたのは、「行政と企業の境界線がぼやけた姿」だった。マンハッタンは基本的には道路が碁盤の目のように配置されている。南北を貫く5thアベニュー、6thアベニューのような大きな通りはもちろんのこと、東西を結ぶ各通りに至るまで、どの通りを歩いても、道路に「パークレット」が設置されていたのだ。

パークレットとは、歩道とフラットにつながる形で車道に設置する憩いの場のことだ。パークレットに机と椅子を置けば、あっという間にオープンカフェになる。レストランやカフェの前にパークレットを設置すれば、人が滞留するようになり、カフェで購入したコーヒーやパンを、暖かい日差しの下で食べることもできる。公共空間の新しい活用方法だ。

マンハッタンでは、道路という行政が管理するアセットの上に、パークレットという民間が管理・所有する構造物が設置され、そこに経済活動が生まれていた。まさに行政と企業の境界線がぼやけた姿と言っていい。これは6年前には見られなかった風景だ。

パークレットの発祥の地はサンフランシスコといわれている。日本でも渋谷の宮益坂、新宿の紀伊国屋書店前、神戸の三宮中央通り、大阪の御堂筋などに設置され、ここ数年、社会実験が相次いでいる。

パークレットは車道に設置するため、国内はもちろん、海外でも道路の管理者の許可が必要になる。行政による許可だ。車道は車の通行を目的に整備したものであって「にぎわいが生まれる」「小さなエリアに経済循環を生み出せる」と言っても、道路の管理者からすれば関係のない話だ。つまりパークレットを設置するのは、そう簡単ではない。日本におけるパークレットが、まだ社会実験にとどまっている理由でもある。

では、そんなパークレットがなぜ、ニューヨークで爆発的に増加したのだろうか。その答えが新型コロナウイルスの感染拡大にあった。(続く)

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