映画の思い出②亡き母と「メリーに首ったけ」

「メリーに首ったけ」(1998年アメリカ)監督/ボビー・ファレリー、ピーター・ファレリー 出演/キャメムン・ディアス、ベン・ステイラー、マット・ディロン

キャメロン・ディアス主演「メリーに首ったけ」は、アカデミー賞作品賞受賞作「グリーンブック」のピーター・ファレリー監督によるお下劣下ネタラブコメディです。

本当にバカバカしくて笑える傑作で、ある意味突き抜けていて、なーんの思想性もないくだらなさが素晴らしいです。

この映画、1999年日本公開ですが、山口県では僕が勤めてた新聞社が試写会を主催することになって、募集から上映まで仕切りをさせてもらい、思えばこれが初めての「映画」に関わる仕事でした。

でもこの試写会の途中、当時入院中の母親の容体が急変してしまい、母はそのまま帰らぬ人になってしまいました。

僕は、医師から「命に関わる病気ではない」と聞いていたので、さほど気にも留めず、試写会の受付と司会の挨拶が終わるとそのまま携帯の電源を切って映画を観ていました。

そのため、父から何度も電話があったのに気づかず、終映後も打ち上げに行って、携帯電話の電源が切れたまま、お酒をたんまり飲んでいい気分になってしまい、そのまま帰宅して倒れ込むように寝てしまいました。

それで朝方の未明(4時ぐらい)になって、自宅アパートの固定電話に親戚から電話がかかってきて初めて事の次第を知り、今思うと飲酒運転にも該当したかもですが、いてもたってもおられず車で約1時間かかる病院に駆けつけました。

そこで僕は眠っているようにしか見えない母の遺体と対面しました。

そのまま腑抜けになっていた父の代わりに喪主を務めましたが、葬儀後は「映画を観ていて母親の死に目に会えなかった」ことを後悔するばかり。

「よりによっておバカ映画で…」と落ち込み、と言って映画が悪いわけでもない。僕は携帯の電源を切った自分を責め「俺、もう映画嫌いになるかも」とまで思い詰めてしまいました。

それから一カ月程経ったある日の朝、何と母親が夢に現れました。母は、最期に会ったときの入院着の着物姿でした。

思わず僕は「最後に会えんでごめん」と謝ったのですが、母は「ええよええよ。映画、よかったね」と言って抱きしめてくれました。

その「夢」は妙に生々しく、質感を伴っていました。

母は生前、僕が就職しても「映画」への夢を捨て切れていないことを気にしていました。夢とは言え母に許されたことで、僕としては何となく救われた気分になりました。

なので、僕はお陰で今も「映画」を嫌いにならず、このあとも「映画」と様々向き合いながら現在を迎え、この「メリーに首ったけ」を配信で久しぶりに観て、心からゲラゲラ笑ったのでした。

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