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「オズボーンのチェックリスト」と「意味のイノベーション」は何が違うんだ!?


最近低い雪山では「テムレス」という手袋をはめている山登らーをよくみかけます。雪山業界(?)では、結構なヒット商品になってると思います。

この商品はもともと水産加工等の冷水作業のための手袋ですが、その種の手袋としては蒸れが少ないという点が売り文句です。
「手蒸れ レス」→「テムレス」。みたいな。

「テムレス」(第4893859号)第9類「事故防護用手袋」

ワークマンなどのホームセンターでよくみかけます。

思うに、きっと、ワークマンに、アウトドア用ウェアを買いに来たユーザーが、リーズナブルな価格のテムレスに気が付いて、「安いからいいや、イチかバチか雪山で使っちゃえ~」のノリで使ってみたら、予想外に使えるじゃん?となって、人気に火が付いたのではないかと(知らんけど)。

そうこうしているうちに、アウトドア専用として、黒バージョンが発売されました。黒バージョンは、アウトドア用品店や山道具屋でしか売ってません。しかも、「TEMRESS」という外国語みたいな表記になった(てゆか「TEMLESS」じゃね?(笑))。

「§TEMRES」(第6172567号)第25類「手袋,ミトン,スキー用手袋,スノーボード用手袋」、第28類「登山用手袋」


えー。
この現象って、「オズボーンのチェックリスト」でいうところの「転用」だよなー。


そーいえば、こないだ書いた記事で「意味のイノベーション」の事例として挙げた「Yankee Candle」なんかも、いわば用途の「転用」だよなー。


「オズボーンのチェックリスト」と「意味のイノベーション」とでは、なにが違うんだろ?


と思ったことがきっかけで、今回は、

「オズボーンのチェックリスト」と「意味のイノベーション」は何が違うんだ!?

をテーマに書いてみたいと思います。


「オズボーンのチェックリスト」

「オズボーンのチェックリスト」とは、ブレーンストーミングの考案者オズボーンが、「普通の人は、画期的アイデアなんてそうそう浮かばない」という観点で発想したものです。
ラテラルンキングのフレームワークとして紹介されることも多いです。

「オズボーンのチェックリスト」

①転用(Put to other uses)
 他の分野・用途・需要者層・地域などでの活用

②応用(Adapt)
 他の分野・歴史などからの借用

③一部の変更(Modify)
 色・形・機能・匂い・音・動き・仕組みなどの変更
 
④拡大(Magnify)
 サイズ・時間・頻度・強さ・機能・種類の増大、まとめ化など
 
⑤縮小(Minify)
 サイズ・時間・頻度・強さ・機能・種類の減縮、細分化など

⑥一部の代用(Substitute)
 素材・成分・動力・場所・方法・人などの代用

⑦置換(Rearrange)
 要素・成分・部品・パターン・配列・レイアウト・位置・ペース・スケジュールなどの置換

⑧逆転(Reverse)
 位置・数値・役割・時間などの逆転

⑨結合(Combine)
 異なる分野などのもの/コトの組合せ・混合などによる結合


「オズボーンのチェックリスト」は、いまあるものを土台とする発想方法なので、商品開発の際にこのチェックリストを活用すると、1から開発せずとも商品/サービスの提供価値を変換できるところがメリットですね。


「オズボーンのチェックリスト」と「意味のイノベーション」

先日書いた記事で「意味のイノベーション」を紹介しました。

「意味のイノベーション」の提唱者であるベルガンディ氏によれば、
「人々は、実利的な理由(モノの質・機能等)だけでなく、深い感情的な理由や、心理的・社会文化的な理由からモノを買う。つまり、人々は製品を買うのではなく、その意味を買っている。」
とされています。

そして、上の記事で紹介した事例もすべて、「五感」「感情」「フィロソフィー」といった、人々の感覚やココロに訴える「意味」を変えることでヒットした商品/サービスです。そして、事例を下記のようにカテゴライズして、紹介しています。

(1) 必要材をプチ贅沢品に
 「Yankee Candle」「PITTA」

(2) 面倒を遊びに
 「富士山消しゴム」「うんこ漢字ドリル」

(3) "脇役"機能的価値を極める
 「といういちクレヨン」「ゴキブリムエンダー」

(4) マイナスをプラスに
 「TABETE」「竹島水族館」

(5) 少・小に光を当てる
 「FURIKAKIX」「Fenty beauty」「食べチョク」


それで…

ここで紹介した事例は、つまるところ、昔からある「オズボーンのチェックリスト」の応用じゃないの?

「(1) 必要材をプチ贅沢品に」や「(4) マイナスをプラス」の事例は、「①転用」ともいえそうだし、
「(2) 面倒を遊びに」や「(3) "脇役"機能的価値を極める」の事例は、「③一部の変更」とか「⑥一部の代用(Substitute)」ともいえそうだし、
「(5) 少・小に光を当てる」の事例は、「⑧逆転(Reverse)」とか「④拡大(Magnify)」ともいえそうだし。

「意味のイノベーション」て、「オズボーンのチェックリスト」となにが違うの!?


「オズボーンのチェックリスト」と「意味のイノベーション」を比較してみる

というわけで、「オズボーンのチェックリスト」の項目のうち、①「転用」を一例としてピックアップして、「意味のイノベーション」との関係を検討してみてみたいと思います。


①「転用」


1.「オズボーンのチェックリスト」の「転用」の事例

「シュレッダーハサミ」

「転用」の有名な事例です。
全然売れなかった"きざみ海苔はさみ"を「シュレッダーハサミ」にしたら売上が○倍になった。
…というエピソードで紹介されていることが多いのですが、エビデンスが見つからないので、ひょっとしたら都市伝説…?

エピソードの信ぴょう性に疑問ありですが、「なるほど」と思わせる説得力はありますね…ってことで挙げました。


「ポストイット」

誰もが知っている「ポストイット」です。

3M社が、接着剤として開発した失敗作(すぐ剥がれてしまう)を「転用」した例として紹介されていることが多いですね。


「テムレス」

冒頭で触れたように、この商品は、おそらくユーザー(山登らー)発信の「転用」と思われます。


2.「意味のイノベーション」の事例

一方の「意味のイノベーション」の事例で、「転用」に相当するものは、以下のもの。

「(1) 必要材をプチ贅沢品に」の「Yankee Candle」「PITTA」、
「(4) マイナスをプラスに」の「TABETE」「竹島水族館」


3.「オズボーンのチェックリスト」と「意味のイノベーション」の対比

「オズボーンのチェックリスト」の事例

「シュレッダーハサミ」:「細断できる」という機能を他分野に転用
「ポストイット」:「はがれやすい」という機能を他用途に転用
「TEMRES」:「防水なのに手蒸れしにくい」という機能を他分野に転用

これら事例をみる限り、商品の持つ機能をダイレクトに活用し、他の分野・用途に「転用」した事例となっています。

ラテラルシンキングが、"知識をもとにして"多面的にものごとをみて解決策を導こうとする発想法なので、まずは商品/サービスの「属性」に着目することが多くなるからでしょうか。


「意味のイノベーション」の事例

「Yankee Candle」:(「明るくする」がメイン機能だけど)「暗い部屋で雰囲気を出すものに」
「PITTA」:(「埃やウィルスから防御する」がメイン機能だけど)「お洒落アイテムに」、
「TABETE」:(「廃棄物」は商品としての機能ないけど)「売り手にも買い手にもメリットを生み出すものに」
「竹島水族館」:(「キモい生物」は展示物としての機能低いけど)「日本一の展示種数で触れ合えるという特徴に」

これら事例は、商品/サービスの「属性」をダイレクトに活かしているわけではありませんね。

「五感」「感情」「フィロソフィー」といった、ユーザーの感覚やココロに働きかける「意味」を変えて、他の分野・用途などに「転用」しているといえます。

商品/サービスが世界観をかもしだしていて、それを表現しているというか。


つまり

「オズボーンのチェックリスト」は、商品そのものの「属性」に着目し、それをダイレクトに活用して変化させることが多い発想手法。
マーケティング的に有効な手法ですね。
「意味のイノベーション」は、「五感」「感情」「フィロソフィー」といった、ユーザーの感覚やココロに働きかける「意味」を変える発想手法。
世界観を表現できることが多く、ブランディングに資する手法だと思っています。


被るものもありそうだけど

「オズボーンのチェックリスト」でも「意味のイノベーション」でも、どこに着目して発想しているかの違いだけなので、発想の結果として表出する商品/サービスには被るものがあると思います。

しかし、結果として世界観を表現できているか否かの違いは、ユーザーとのコミュニケーション方法や商品/サービスのデザインやネーミング等の見せ方によるところが多く、これにはやはり、ユーザーの感覚やココロに刺さる要素が必要だと思います。

そして、そのような活動の積み重ねによって、企業イメージそのものを形づくっていくように思います。



なんとかまとまった(笑)。


そして、知財のハナシがいっこもない(笑)。まあいいか(笑)。



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