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エディ・ヴェダー「アースリング」

これぞ王道のロックンロール

エディ・ヴェダーのソロアルバム『アースリング』はご機嫌なロックンロールを聴かせてくれる最高の1枚だ。

今までのソロアルバムは、映画のサントラやウクレレの弾き語りアルバムで、直球勝負のロックンロールで作られたソロアルバムは本作が初めてだ。

では、本作がパール・ジャムと大して変わらない作風かと言うと全くそんなことはない。

パール・ジャムでのエディはどこか張り詰めた緊張感を感じさせることが多く、何かに怒っていたり、かなり暗かったりすることが多いのだが、本作では肩の力が抜けた自然体でリラックスしてロックしているのだ。

とは言え、脱力しているかと言えばそんなことは全くなく、要はイケイケのロックナンバーからバラードまで幅広い楽曲をパール・ジャムの時よりも力まず歌っている。誤解を恐れず断言すると、王道感満載のアメリカンロックを鳴らしてくれている。曲によってはスプリングスティーンばりに力強くスケール感ある楽曲に仕上げているのだ。

パール・ジャムにおけるエディは、どこか神々しくカリスマ性に溢れる存在で、前述したとおり緊張感が張り詰めているキャラクターだ。
しかし、今作におけるエディは自由に自分の好きなラウドなロックからゆったりとしたスケールの大きいアメリカンロックまで様々なタイプの楽曲を歌っている。

ポップで分かりやすいリラックスした作風

私の勝手な先入観だったのだが、彼がこれほどまでに様々なタイプの楽曲を書ける器用なソングライターであったことにまず驚いた。
本作に収録の楽曲は、ポップで分かりやすい曲も多数あるし、メロディーメイカーとして印象的な、シングルカット向きなナンバーを多数用意することができている。

こうしたポップと言っても差し支えない才能は、パール・ジャムではあまり発揮されてこなかった。
ある意味、分かりやすい要素より、バンドの攻撃的なアティテュードの方を優先して、その時々に彼らが抱えている怒りや疑問に対峙するためにはポップな楽曲より攻撃的な演奏や鬱屈とした楽曲が優先されてきたのだろう。

自由な創作環境がもたらした傑作

今回のソロアルバムでは、バンドの攻撃的な一面の制約から解放された素のエディ・ヴェダーがイキイキと表現されている。

ロックバンドに在席するメンバーが作るソロアルバムの場合、バンドの作品よりポップに舵を切ると売れ線狙いのセルアウトだとか、丸くなったと揶揄されることが多くなるが、本作におけるエディ・ヴェダーの創作はポップでありながらもロックとしての苦みを目一杯感じさせることに成功している。

本作は、パール・ジャムのファン以外のロックファンにも是非とも聴いていただきたい傑作であり、パール・ジャムの作品を含めても彼のキャリアにおける屈指の名盤と断言させて頂こう!

なお、本作にはレッチリのメンバーやスティーヴィー・ワンダー、エルトン・ジョンといった大御所まで多彩なゲストが参加しており、印象的な演奏やデュエットを聴かせてくれる。こうした共演も本作を風通しの良いものにしている理由のひとつだろう。

追伸

さて、余談だが、エディ・ヴェダーの名前を聞くとビッグ・バン・ベイダーを思い出してしまうんだよな。
そんなの私だけだろうか?

ビッグ・バン・ベイダーさん


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