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クラブ創設30周年目のシーズンを終えて

たまに「note楽しみにしてます!」と言われるものの、一向に年一回更新ペースから上がりませんが、今年も懲りずに自分としての(事業面での)シーズン振り返りをしておきたいと思います。
今年はクラブ創設30周年目のシーズンということもあり、例年にも増して印象深い出来事が多かったです。

クラブフィロソフィー


30周年を節目にクラブ理念を再整理した「クラブフィロソフィー」。一年弱掛けてきたものを1月の新体制発表でお披露目したことが遥か昔のことのように思います。
どんな反応になるのか、はたまた反応すら起こらないのか、正直不安もありましたが、発表直後のファン・サポーターの皆様からの反応が本当に嬉しかったです。クラブとして取り組んで良かったと言う気持ちと、良いシーズンのスタートが切れたという思いを抱いたことを思い出します。
そう言えば、前回書いたnoteの内容もフィロソフィーについて触れていました。

部に吹いた新しい風


今シーズンはACLの日程変更あり、開幕直後からなかなかの連戦でした。ホームゲームも数多くあり、選手のみならず我々ビジネススタッフも怒涛の日々を送っていました。
今シーズン、自分がいる部署は、部の約半数のメンバーが新たな役割を担うことになったり、新たに加わったメンバーでした。
シーズン序盤はバタバタで、とにかく次々とやってくるホームゲームになんとか立ち向かっていっている状況でした。コロナ状況も良くなく、入場者制限が設けられたこともあり、ビジネス観点ではあまり良い入りが出来ませんでした。
4月以降は入場者制限も緩和され、またホームゲームの連戦も序盤ほどではなくなり、徐々に部の体制も整ってきました。
それにしても、約半数のメンバーが新しい役割もしくは新加入であったにも関わらず、部としてのパフォーマンスも落とさず、むしろかなり良い状態を作れたのは、予想以上でした。
役割が変わったメンバーや新しく加わったメンバー自身の能力は言わずもがな、元々いたメンバーが作り出してくれる雰囲気や姿勢のお陰だと思います。周りのメンバーによって自分が刺激を受けて引き上げられる、そんな循環になっているように思います。
非常に良いことですし、とても誇りに思っている点です。最高のメンバー、いつも刺激をくれるチームに感謝です。

30周年記念試合


4月2日の30周年記念試合は、試合告知のクリエイティブや当日の演出も含め、クラブとして当然気合いを入れていました。
過去・歴史へのリスペクトは当然のことですが、我々らしく、振り返るだけでなく未来に向けたメッセージ性を意識して試合を組み立てていました。
「ともにその先へ」
シンプルながら、我々の想いを端的に凝縮したコミュニケーションメッセージを決めました。
ご存知の方もいらっしゃると思いますが、この日の試合前の暗転演出ではトラブルが発生しました。
完全に暗転するはずのシーンで、一部照明が消灯せず、明るいままの状態になってしまいました。
過去一度もないことで、かつ当然リハーサルでも起きなかった事象でした。
クラブの大事な一戦での出来事に、クラブスタッフはもちろん、演出チームやスタジアムの方々がかなり緊迫したやり取りを行いましたが、結局完全暗転は出来ずに中途半端な演出になってしまいました。
誰が悪いわけでもない事象だったので、本当に悔しい思いのぶつけ先がなかったのですが、印象に残っているのはトラブル後のやり取りです。
クラブスタッフ、演出チーム双方、想いをもって時間をかけて作ってきた演出を実現させたいに決まっています。
一方で、プロの興行として考えると試合を成立させることは何よりも大事であることも事実です。
照明が完全に消えなかった時、半ば強制的に消せる可能性がある手段がありました。
演出だけを考えると、その手段を取るという選択肢もありました。
ただ、現場では誰からともなく、「もうこのまま行きましょう。強制的に消すと、明転時に着かない可能性がある。そうすると試合自体が出来なくなる可能性すらある。」という判断に行きつきました。
その間、恐らく体感で1~2分くらいだったでしょうか。もっと短かったかも知れません。
この判断が出来たことがとても誇らしく、演出チーム含めて本当にプロの方々と試合を作らせてもらっていることを再認識しました。
(もちろん、言葉に表せないほど悔しい気持ちを抱きました。同時に、絶対どっかでやり返そうという強い思いも生まれました)
※ちょうどその辺りの映像がこちらのYouTubeでもご覧いただけます。


I ⭐︎ YOKOHAMA SERIES

お互い30周年という節目を迎えた、横浜DeNAベイスターズさんとコラボした「I⭐︎YOKOHAMA SERIES」も印象に残っています。
これまでも何度か一緒に取り組みをさせてもらったことがありますが、ここまで深く、色々な部署が関わりあったことは未だかつてなかったのではないでしょうか。
お互いのイベント対象試合を全勝で終えるという縁起の良さも記憶に新しいところ。
ビジネス面でも、このイベントを実施した試合では、新規来場者が多いというデータが残りました。イベントはもちろん、チケット施策やプロモーション施策が掛け合わさった結果でしたが、ここまで綺麗に結果が出る事例は少なく、非常に示唆に富んだ取り組みでした。

The CLASSIC


先述の30周年記念試合でのリベンジという想いもあり、気合いを入れて臨んだ鹿島アントラーズとの「The CLASSIC」。
ホームゲームの演出という面もさることながら、30周年記念OB戦の実現やマリノス君500試合出場記念試合という節目も重なり、30年の歴史を感じる要素満点の試合となりました。
この時点では今シーズン最多となる方々にお越し頂いたことももちろん印象に残っていますが、実は自分が一番印象に残っているのはクラブ内の裏の出来事でした。
ホームゲームという公式戦の日に同じピッチでOB戦の準備・試合実施を行うことは、想像以上に難しいことです。
最初計画を聞いた時は、ピッチ面はもちろん、ロッカーを2試合分設けることやタイムスケジュールのやり繰りなど、正直ハードルは高いと思いました。が、クラブ内の色々な方の尽力、スタジアムの方々の多大なる配慮と協力、多くの関係者の皆様の力を合わせて実現しました。
このクラブの良い点の一つとして、「運営」と呼ばれるホームゲームの競技進行・イベント企画を行う役割を経験したスタッフが数多く存在し、このような時にあちらこちらの部署からその経験者の方々が力を貸してくださる点が挙げられると思います。
不測の事態が起きた時や、このように並行して大規模イベントを準備・進行する時に、頼りになることこの上ありません。
30年間J1で続く唯一のカードで、クラブみんなの力を結集して臨んだと言う点が、個人的には深く印象に残りました。

台風で延期になった湘南戦


こちらはマイナスの意味で強烈に記憶に残った試合です。
台風接近で開催が危ぶまれていたこの試合。
夏休み期間中の試合であり、ユニフォーム付きチケットを仕込んだり、大きなスタジアムという特徴を活かして試合前に豪華アーティストの方々のライブをお届けするという新しいチャレンジをしようとした試合でした。
事前にチケットもかなり多く売れており、自分自身もとても楽しみにしていた試合でした。
当然、入場料収入という観点でも大きな試合になるため、なんとか試合が実施出来るように祈りながら数日前から天気予報を入念に眺めていました。
結果的には残念ながら、当日昼に試合延期の判断をすることになってしまいました。
先程書いたように、クラブとして新しいチャレンジをし、順調に売上も見込めていた試合だったので、気持ちとしては何とか開催したい思いで一杯でした。
しかし、プロの興行・イベントとして何よりも優先されるのは「安全」です。
想いと判断は全く別であり、天気予報や交通情報を入手してクラブとして下した判断は、そう難しいものではなかったように感じました。
とは言え、見込んでいた入場料収入は無に帰し、代替試合は予想通り平日開催となったため、部としては「これからの試合で頑張らないといけない」と良い意味でピリッとしたことも事実です。
残念ながら中止になってしまった当日の様子は下記YouTubeよりご覧いただくことができます。

ホームゲームラスト3試合


ホームで優勝を決められるチャンスが出てきたガンバ大阪戦とジュビロ磐田戦で連敗するという経験をした時には、「やっぱり勝負は甘くない」というありきたりな感想と、「全ての可能性・シチュエーションを想定しておかなくては」という思いを抱きました。
正直、個人としてはホーム三連戦どこかで優勝が決まるのではないかと思っていたことは否定出来ず、自分の甘さを痛恨しました。
ホーム最終戦の浦和レッズ戦では、起こり得る全ての可能性・シチュエーションを考えて、最終戦セレモニー「THANKS CEREMONY」を複数パターン準備しました。
この「THANKS CEREMONY」もクラブとしては今までとは違うチャレンジをしてみました。
トップパートナーのDRAFTさんにご協力頂き、例年よりも華やかに、エンタメ性を強化して実施することにしました。
硬いセレモニーになりがちなところを、DRAFTさんの視点から刺激を頂き、あのような形で実施しました。前日遅くまで行ったリハーサルで細かい修正を加えたのですが、その場に最後までお付き合い頂いたDRAFTの皆様や演出チームの皆様の力がなければ実現しなかったセレモニーでした。
セレモニーの様子は以下よりご確認いただけます。

「それ、良いじゃないですか!」誰も止めないパブリックビューイング計画

ホーム最終戦を無事勝利で終えたものの、優勝の行方は最終節に持ち越しに。
浦和戦終了後、撤収作業中に「日産スタジアムでパブリックビューイングやったら面白いのではないか」とふと思い、一緒に働いている仲間達に話をしてみると、「良いっすね、面白いかも知れませんね!」「やっちゃいましょう!」という反応。記憶している限り、誰からも反対されなかった気がします。
いやいや、ちょっと待て。冷静になろう。
一週間しかない中で、実現可能なのか…?
クラブが日産スタジアムでパブリックビューイングを行うことは、恐らく初めてで、まさに前例のない企画でした。
スタンドのどこを開放するのか、万が一予想より多くの方が来場した場合はどのように席を拡張するのか、どのような内容にするのか、ちゃんと大型ビジョンに綺麗に試合映像が映るのか。思い付きは簡単に出来ても、いざイベントに落とし込む際には詰めることが山のようにあります。
浦和戦が土曜日。パブリックビューイング実施のニュースを出したのが火曜日。
クラブの仲間の他に、スタジアム関係者の皆様や演出チーム、キッチンカーに急遽お声掛け頂いたCDAさん、警備・案内をしてくださる皆様、スタジアムDJを務めて頂いた光邦さんと栗原勇蔵クラブシップキャプテンなど、短期間に多くの方々の力をお借りして実現することが出来ました。
手作りのイベントではありましたが、来場頂いた皆様のお陰で本当に良い雰囲気・空間になり、やって良かったと心から思った一日でした。
シーズン最後も良いチャレンジが出来ました。

優勝

そしてついに迎えた優勝の瞬間。
自分は日産スタジアムのオペレーションルームでその瞬間を迎えました。
2019年の時とはまた違う心持ちでしたが、喜びは全く変わらず、心の底から嬉しかったです。
その場にいたクラブスタッフや関係者の皆様が喜んでいる姿を見て、DAZN上に映る選手・スタッフの方々・現地まで応援に駆けつけてくださったファン・サポーターの歓喜する姿を見て、またスタンドで喜んでいるファン・サポーターの方を見て、これだけ多くの方々を笑顔にしてくれる優勝は、何度も味わっても素晴らしいものだと思いました。
そんな中でも、本当に自分も選手であるかのように喜びを爆発していた光邦さんや、優勝決まってすぐにその場にいた各スタッフ一人一人と握手&ハグしていく栗原クラブシップキャプテン、1人じっと喜びを噛み締めるかのように座っていた今回自身初優勝となる仲間の姿など、印象的な光景が今でも目に焼きついています。
本当に色々なことがあり過ぎた一年、いやここ数年だったので、グッとくるものがありました。
改めて、ファン・サポーターの皆様、優勝おめでとうございます!!

Beyond Together

ザッと書き殴っただけでも、こんなにも多くの印象的な出来事があった30周年目のシーズン。
そんなシーズンに、チームだけでなくクラブに密着したドキュメンタリー映像を制作しています。
タイトルは「Beyond Together」。
30周年という記念すべき年に優勝するという、出来過ぎな一年でしたが、きっと見応えのある作品になるはずです。
2023年3月に劇場公開を予定していますので、楽しみにお待ちください!

23シーズンに向けて

今シーズンもチームだけでなく、クラブへも本当に多くのサポート・励まし・ご意見・叱咤激励を頂き、ありがとうございました。
皆様からクラブへの信頼を感じ、だからこそ、その信頼を裏切らないように、期待を超えるものを提供出来るようにと邁進したシーズンでした。
厳しい時や辛い時に、励ましてくださるメッセージや発信を拝見すると、本当に力や勇気が湧いてきます。ありがとうございます!
クラブとして目指す姿はまだまだ先だと思っていますので、来年もどんどんチャレンジしていきます。
現状維持は退化。
優勝翌年のシーズンは新しい方々にスタジアムに来て頂けるチャンスが例年以上にあると思っているので、このチャンスをしっかり活かせるように準備します。
今年より良いシーズンに出来るよう、全力を尽くしますので、また来シーズンもどうぞよろしくお願いいたします。

今シーズンも本当にお世話になりました!
ありがとうございました!

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