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失敗を「ナイスチャレンジ」に!!《「ひろしまユニコーン10」STARTUP ACCELERATION2023》説明会開催in広島

 「広島から、ユニコーン(時価総額10億ドル以上)企業に匹敵するような、企業価値が高く急成長する企業を10年間で10社創出する」ことを目標とした「ひろしまユニコーン10」プロジェクト。このプロジェクトにおいて、事業の急成長を伴走支援するアクセラレーションプログラムが「ひろしまユニコーン10」STARTUP ACCELERATIONです。
 昨年度の採択者からは「外部からの信用度が高まり問い合わせが増えた」「事業連携の提案があった」「資金調達時の与信につながった」「ネットワークが広がった」という声が寄せられました。
 そして、この「ひろしまユニコーン10」STARTUP ACCELERATIONが2年目に突入し、新たな挑戦者を募集しています。
 今回は、7月11日に開催された、このアクセラレーションプログラムの説明会の様子をレポートします。


●トークセッション1

「昨年度採択者に聞く、「ひろしまユニコーン10」STARTUP ACCELERATIONの魅力」

 7月11日にイノベーション・ハブ・ひろしまCampsで説明会を開催。初年度のユニコーン10プロジェクトに採択された事業者から、セディカル(株)の宮田和季社長、(株)Flying Cellの兼古憲生社長、SKY SOCIAL(株)の池田昌平社長が体験談を話してくれました。
 ◇モデレーター:小田健博さん(フォースタートアップス (株)マネージャー)

セディカル(株) 宮田さん


 (事業概要)糖質制限中のがん患者などでも食べられるように、血糖値が上がらないチョコレートを開発。これをベースに、洋菓子や和菓子も商品化。小麦、砂糖、添加物、乳製品を使わない「フリーフロム」の分野で世界市場を目指す。

 山口県で起業した際のメンバーで「ユニコーンみたいな企業が地方から出ないと、日本の将来は明るくならない。ならば自分たちで目指そう」と話していたところ、広島県の「ユニコーン10プロジェクト」を知り、「これは参加しなければ」と義務感に駆られました。無茶なチャレンジではないかと不安もあったため、受け入れてくれる場の存在には、とても勇気づけられました。自分たちの思いと〝共通の言語〟で進む人たちがそばにいてくれることも大きい。
 参加して一番良かったのは、覚悟が決まることです。皆さんに応援してもらうことで後に引けなくなるし、しっかりやりたいという欲も出てきました。実は当初、スタートアップの形をよく知らないまま事業を進めていたため、知識面でも役に立ちました。
 自分たちの事業をたくさんのに人に知ってもらい、交流が活発化。プログラムの中で私は「2050年までにGAFAMを超える産業を創出する夢を達成します」と宣言しました。普通は「何を馬鹿なことを」と言われるでしょうが、メンターの皆さんは「よくぞ言った」と励ましてくれたのです。モチベーションがぐんぐんと高まりましたね。できれば毎年採択されたいと思うくらい、皆さんにはお勧めしたいです。

(株)Flying Cell 兼古さん


 (事業概要)磁場を使って細胞を移動させることで効果を上げる治療法の普及を図る。広島大学病院整形外科の越智教授(現広島大学長)の開発した同技術を事業化した。既に資金調達を2回行い、国内で治験中。

 プログラムに参加したのはちょうど国内の治験がひと段落し、それを踏まえて経営資源を投入するネクストステップを検討する段階でした。国内展開や海外進出などの選択肢があり、プログラムの支援を受けながら方向性を整理するためです。ユニコーン10のことは、出資を受けたベンチャーキャピタル(VC)から紹介してもらいました。東京をベースにしているVCにも、このプログラムが伝わっていたわけです。
 実際に専門家から多様な視点で助言をもらえ、ディープテックを広げる上での気づきは大変ありがたかった。実は当社のように、大学発の事業は研究に大学の協力が得られる一方で、意思決定に時間がかかります。それがプログラムのタイムスケジュールに沿うことで、大学やVCとの協議をスムーズに進められました。結局、はじめの選択肢の中から海外進出を選び、プログラム修了後にはすぐ行動に移ることができました。
 参加すれば直ちに経営課題が解決するわけではありません。しかし、いろいろと考える場を与えてもらい、このスケジュール感の中で行動するタイムラインが大切だったのだと思います。自分で考えれば解決をサポートしてくれるよき環境だと思います。

SKY SOCIAL(株)池田さん


 (事業概要)地域特化型クーポンアプリ「みせとく!」を運営している。例えば裏メニューや悩み相談など独自性のある特典を掲載することで、誘客効果を狙う。クーポンを活用した来店予測などのデータ事業も計画。

 2021年5月の創業当時、スタートアップについて全く知らず、韓国ドラマ「スタートアップ」を見て用語や資金調達などを学びました。そのころスモールビジネスを支援する広島県の「RING HIROSHIMA」のことを聞き、これも最初はよく分からないまま参加したのですが、ここでアクセラレーションプログラムというものの良さを実感。その縁でイノベーション・ハブ・ひろしまCampsへ相談に通っており、「そろそろユニコーン10にステップアップを」と提案されて応募しました。
 参加して良かったことといえば、まず会社の信用が上がったことです。名刺にロゴを勝手に入れさせていただき、中四国はもちろん東京など、県外でも「ユニコーン10プロジェクト」から話が広がるんです。まだ契約にはつながっていないものの、地場の工務店と事業提携ベースの話が進んでいます。
 広島県はユニコーン10以外にも支援メニューが豊富です。リングひろしまから始まり、今回ユニコーン10に採択されて、会社だけでなく、私自身も成長を実感しています。スタートアップ同士が出会い、ネットワークが広がる場は貴重であり、その後も続く関係を事務局がつくってくれます。ぜひ飛び込んできてほしいですね。

フォースタートアップス(株)小田さん


 参加者はプログラムを通じて事業内容がブラッシュアップされ、他人に説明する機会をたくさん得ることで出資や業務提携のプレゼンもうまくできるようになります。
 このプログラムは地元の銀行、中国経済連合会など、地域の産業を元気にしようという人たちに賛同と協力をいただいています。私たちはそういった方々との接点づくりに注力しており、うまく活用して事業成長につなげていただければ幸いです。

●トークセッション2
「広島県のスタートアップ・エコシステムと支援環境」

 中国経済産業局産業部経営支援課長の髙城幸治さん、当プログラム運営者の一人、(株)エル・ティー・エス執行役員の星山雄史さん、広島県商工労働局イノベーション推進チーム スタートアップ企業創出担当主査の歳森靖子さんが登壇。広島のスタートアップの見通し、支援の状況などについて聞きました。
 ◇モデレーター:小田健博さん(フォースタートアップス (株)マネージャー)

中国経済産業局 髙城さん


 国が7月7日にスタートアップ育成支援プログラム「Jスタートアップ インパクト」を立ち上げ、募集を開始。ここでは社会課題解決と経済成長の両立が強調されています。諸外国に比べて進行している人口減少、高齢化など多様な課題の解決を通じた新しいイノベーションは将来、日本の得意領域として世界に展開できるでしょう。日本独特の繊細な感性も相まって、これから伸びていくと思います。
 広島の海、島、山、大きな街、歴史の中で育まれた感性を礎にして社会課題にいち早くチャレンジすることは意義深く、これからの世界をつくっていくという意味でもすばらしい舞台ではないでしょうか。多くの人が「私が当事者」、「主人公」として参加していけば、自ずと広島がさらに注目エリアになると思います。
 中国地方では企業の新規開発セクションにおける連携をはじめ、オープンイノベーションによる外部リソースの取り込みなどが図られていますが、スタートアップ支援に関与する企業は少ないのが現状です。大多数の中小企業は課題感も意欲もあるけれどリソースがなく、現状への対応が精いっぱい。そういう人たちに対しても継続的に必要性を発信することが求められています。

(株)エル・ティー・エス 星山さん


 スタートアップはシーズ(種)と言われるように、自分で発芽して初期の根を張りますが、そこに土と水がないと大きくなりません。私の起業体験もそうでした。サークルをつくって一つのソリューションを生み出し、それがお金になってスタートします。チームメンバーと共に大きくなる過程では助けてくれる人がいっぱいました。起業するまでの間にそういう土壌をつくっていたから、会社がうまく成長したのだと思います。
 広島県は湯﨑知事が2011年にイノベーション立県を宣言し、その土壌ができてきました。イノベーション・ハブ・ひろしまCampsに来れば起業の初めの一歩を助けてくれる人たちがいる。それはすごくいいですね。地元企業の皆さんも新しいものを受け入れる空気はかなりあるのですが、まだ出資者が多くありません。
 そこで少し視点を変えてほしいのです。社内で新しいものを自社の中だけで作ろうとすると時間がかかって失敗も多く、結構な資金も必要です。それを、若い人たちに小額でいいから出資の観点で支援すると、100%が自社のソリューションにはならなくてもアセット(財産・資産・価値)が生まれ、そのスタートアップの人たちが必死に頑張ったノウハウなどを定期的に聞けます。たとえ失敗しても得られるナレッジ(知識)は非常に大きい。大企業だけでなく中小企業でも、利益が毎月出ているのであれば、その中の一部を未来への投資、チャレンジとして考えるのもいいと思います。

広島県商工労働局 歳森さん


 私見ですが、このユニコーン10は挑戦する人を誰でも応援するプロジェクトだと思っています。ユニコーンとなる企業が産業を牽引するのが目標ですが、同時にロールモデルになってもらう。例えば身近で会う人がユニコーンになると「自分もやってみよう」と思う人が出てくるし、挑戦が当たり前になり、文化になる。それを広島で生み出すのが目的です。
 VCの方に企業の目利きや判断の決め手を聞くと、「絶対に折れない心を持っている人」、「志の高い人」という声をよく聞きます。やはり、一番大事なのは気持ちなのだと思います。
 広島にはそんな熱い人が多い。私は岡山出身で、広島に来たときに広島の人のカープへの熱量に度肝を抜かれました。広島全体でカープを応援しているんだ、と。文化からして本当に熱い方が多いと感じます。広島出身の人も、たまたま広島にいる人も、〝広島からやるぞ〟という人はだれでも応援する雰囲気や条件がそろいつつあります。とてもいい土壌が備わっているので、あと2、3個の要素がそろえばユニコーンが生まれると考えています。

フォースタートアップス(株) 小田さん
 広島にはスタートアップが生まれ、支援する土壌があり、歴史と文化が育まれてきたことが強みです。これらの既存の要素をしっかりと組み合わせ直すだけでも、いろいろなものが生まれるはず。そのお手伝いをしたいと思っています。
 ユニコーン10プロジェクトには「挑戦を文化に」という考えがあります。挑戦には失敗が付きものですが、応援者が増え、失敗を「ナイスチャレンジ」と言えるような広島県になってほしい。そうなれば周辺にも伝播し、そういう中国地域になり、結果的に日本がそうなる。そういう形を、ここから皆さんとつくっていきたいと思います。

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