見出し画像

【ひろしまユニコーン10 STARTUP ACCELERATION 2023】挑戦者の紹介VOL.12⦅ルラビオ株式会社⦆

「広島から、ユニコーン企業に匹敵するような、企業価値が高く急成長する企業を10年間で10社創出する」ことを目標に掲げた「ひろしまユニコーン10」プロジェクト。このプロジェクトの一環であり、事業の急成長を伴走支援する「ひろしまユニコーン10 STARTUP ACCELERATION 2023」に挑戦中の16社に、改めて事業の概要や今後の展望などをインタビューしました。

■ルラビオ株式会社 代表取締役 白川 晃久さん
「豚などの雌雄産み分け技術の実用化」

代表取締役 白川 晃久さん


プロフィール

2021年4月、広島大学大学院統合生命科学研究科の島田昌之教授らの研究グループの「哺乳類の簡単な雌雄産み分け技術」を実用化するためにルラビオ株式会社を設立し、代表取締役に就任。前職の商社では事業全体を見据えたメーカーに近い事業開発を行っていた。九州大学発ベンチャーのエディットフォース社の技術探索から設立まで手掛けたほか、大阪大学発のプロテクティア社、三重大学発のユナイテッドイミュニティ社などのスタートアップやベンチャー企業のハンズオン支援を行ってきた。2018年に NEDO SSAフェロー登録。


― 創業のきっかけは ―

広島大学大学院統合生命科学研究科の島田昌之教授らの研究グループの研究成果を生かすため、2021年4月に設立。Ⅹ染色体を持つ精子とY染色体を持つ精子を分離することによる産み分け法で、第28回ひろしまベンチャー大賞を受賞。豚の雌雄産み分けのための試薬開発では2~3年内の実用化を目指しています。島田教授が社長を務め、豚の精液保存に強みがある広島クライオプリザベーションサービスが33%を出資。雌雄産み分け技術の特許を持つ広島大学と特許使用のライセンス契約を結んでいます。


実証試験のようす


― 豚の人工授精の現状と雌雄産み分け法のニーズは ―

2050年に人口が90億人を超える試算が出るなど、今後の食品不足は深刻化していくと予想されます。牛は細胞分離で用いられるフローサイトメーターを利用した産み分け技術が実用化されていますが、装置費用や保守コストが高く、販売価格が安い豚には利用されていません。豚の雌雄産み分け法は精液採取後、試薬による処理で精子を選択的に受精させるもので、豚1頭当たり数百円の費用で、種豚(母豚)や肉豚生産の効率化を図るものです。当社の技術を使って実用化することで、豚も効率的に生産ができ、養豚業界の救世主を目指したいと思います。


― 雌雄産み分け法の仕組みと特徴は ―

簡単で安価な点が特徴です。2018年に広島大学が「哺乳動物精子の分離方法、人工授精方法及び体外受精方法」で特許出願し、2019年に特許公開されています。哺乳類の雌雄産み分けの決め手となるⅩ染色体を持つ精子とY染色体を持つ精子に機能の違いがあり、島田教授らはⅩ精子にだけ外部刺激に反応する受容体があることをつきとめました。マウスの精液に受容体と結合する試薬を投入すると、Ⅹ精子だけが沈殿し、Y精子と分離できる。人工授精でⅩ染色体を持つ卵子と結びつけば、「ⅩⅩ」で雌、「XY」で雄になる仕組みです。


豚の精子の✕とYの違い


― 今後の事業展開は ―

現在、国内の種豚業者・養豚業者6社・8農場で実証試験をしています。試薬の量産化には設備などの資金も必要です。技術的には豚の品種や個体差に対応し、雌雄産み分けの精度を高め、2~3年後に実用化したいと考えています。


― 事業の社会的意義は ―

世界では培養肉などが注目されていますが、新技術は既存の食料システムを壊してしまう懸念もあります。養豚業界も種豚・養豚業者だけでなく、流通業者などすそ野が広い。豚の雌雄産み分け法は種豚(母豚)や肉豚生産の経営効率化を図るもので、養豚に使う飼料量の減少、飼料代金の減少、養豚場のスペースが空くといったメリットがあり、既存の養豚システムを維持しながら豚肉の安定供給を行うものです。培養肉や昆虫食に比べ、受け入れられやすい点も優位性があります。ただ、雌雄産み分け方は一般消費者から見えにくい分野で、投資家からも分かりにくいという声があります。分かりやすい情報発信を心掛け、認知度を上げていきたいと思っています。


― 編集後記 ―

広島大学の島田昌之教授らの研究グループの「哺乳類の簡単な雌雄産み分け技術」の実用化に取り組んでいるルラビオ株式会社。牛で用いられる産み分け技術のコストが高く、販売価格が安い豚に利用されていないことを踏まえ、簡単で安価な雌雄産み分け法の実用化を目指しています。白川社長は、「100年後もおいしいトンカツを食べてほしい。養豚業者、消費者、地球環境にとってメリットが享受できる技術で、将来は世界展開を目指したい」と話されています。培養肉や昆虫食など食料問題が注目される中、養豚業界の豚肉の安定供給、経営効率化などの面で、実用化が期待されます。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?