これを見て、ぼくはこんな謬説(間違った説)を唱える曲学阿世の徒がいることに絶望し、嘆息して天を仰いだ。こんなものを「完璧な解説」とか言っているやつまでいた。世も末だ…。
なぜかって? その前に、ちょっと前に出たこんな記事を覚えているだろうか。
読んでいなかったらいま読んでほしい。最初の記事を読んでぼくのような反応をしなかった人は、こちらの記事を読んだら、こんな謬説を唱える曲学阿世の徒がいることに絶望し、嘆息して天を仰ぐはずだ。というのは、最初の記事とこの記事では、完全に相矛盾する主張がなされているからだ。
これに対して、最初の記事の主張はこうだ。
何ということだ。これが本当なら、ノア・スミスの野郎、「金利が上がると,政府はより高い金利コストを払わないといけなくなる」とか、「財政の支配」とか、わけわからないことを言いやがって、それこそ曲学阿世の徒じゃないか…。
さて、どちらが正しいのか。ここで、人間としての尊厳を捨てて、AI(ChatGPT-4o)様にお伺いを立ててみよう。
意見2はノア・スミス。思い通りだ。だが、AIの答えは順番に左右されることがあるので、順番を逆にしてみよう。
今回の意見2はWilly OES。本当に意見を変えやがった!!(順番を逆にしてもノア・スミスのほうが正しいと言うことを期待してたのに…)*1
しょうがないので主張を後退させる。本来なら、「ほら、AIもノア・スミスが正しいと言ってる」と言いたかったところだが、「ほら、AIもノア・スミスの意見が正しいと言うこともある」にしておく。少なくとも、明らかに間違っていると言えるようなものじゃない。
さて、二つの記事を読んで、次のような意見があると思う。*2
これらの意見は、(1番目はぼくの意見とは違うが)どれも問題ない。最悪なのは、次のようなものだ。
これは影響されやすい自分を皮肉ったユーモアかもしれないが、問題は無意識にこういう行動を取っているような人間だ。ノア・スミスの記事を読んで日本は利上げできないと言い、Willy OESの記事を読んで日本は利上げできると言うような人間。それじゃ、後から聞いたほうを正しいと思うAIと同じじゃないか。それなら、「自分にはよくわからない」と言うほうがはるかに誠実な態度だ。
それにしても、AIの「後から聞いたほうが正しいと思うバイアス」がここまで強いとは思わなかった。当面の間、二つの意見のうちどちらが正しいのかを尋ねるのには使えなさそうだ。
これまでの感触では、AIは基本的な知識を解説させるのに使うのがよい。以下は「日本の財政について、できるだけ客観的に、潜在的な問題点等を含め、基本的な知識を解説してください。」というプロンプトで聞いた答えだ。
この内容に納得できない人はAIに反論してみるのもいいと思う。「内国債なのにリスクがあるとかお前は何もわかってない!」とか。AIは影響されやすいので、お望みの答えを返してくれるかもしれない。
*1 AIは一般的に英語で回答させたほうが精度が高い。英語で回答させるのもやってみたが、結果は同じだった。
*2 単純化するために、「どちらも一定の理がある」という穏当な意見は省いている。
*3 ここでの「利上げ」とは、通貨防衛に意味のある程度の利上げとする。