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SNSイベントでしてはいけないこと

2020年の春。コロナ過によりオンラインでイベントが行われるようになった。家にいるばかりでは何も起こらない。仕事以外の世界はどうなっているんだろう。エンタメでは物足りない。ちょっとよくばって何か学習系のものはどうだろうか。

いろいろ探してみる。すると何かまともそうな学習系イベントがある。その中でもまともそうな表題を見つける。イベント案内文もきっちりとしている。しかも無料だ。試しにのぞいてみる。これならいいだろう。それが落とし穴である。しかも穴にはまると抜けれなくなる。有害だとわかっていても抜けれない。

こういった無料オンラインイベント。落とし穴というのは残念なことがおきる。それが不快をもたらす。ちょっとしたイベントルールを守らないことによる。場合によっては学習阻害が起きてしまう。集団ヒステリーに発展しかねない。

facebook上で公開されているエコノミストを読む会というのがある。これは2010年くらいに早稲田大学ファイナンス学科の大学院卒業生がはじめたものだった。優秀なひとたちだった。実際に始めた人は2009年くらいから五反田の自宅で何人かの人を集めて読書会としてはじめていた。それをオープンにして都内にいる社会人に広げていった。年齢層は20代後半から30代前半が中心だった。

この会は不思議と途絶えることはなかった。赤坂から渋谷、そして新橋と場所を変えた。そしてコロナ過になりZoom会議になった。そこからいろいろなことが起き始めた。

次第に大きくなっていき、大勢の人が集まってくるようになった。いまでは70歳を超えるひとも参加してくる。海外からも参加してくるという。

先週、エコノミストの記事で経営コンサルティング会社8社について記事が載っていた。それについて実際の日曜日の読書会では選ばれて話されることはなかった。わたしは参加しなかった。ただこの記事はこんなことが書かれていた。新聞であるからして事件を扱う。こんな内容だった。

どこからかメモのようなものがウェブサイトに投稿された。経営コンサルタント会社マッキンゼー社に勤務していたパートナー連中によるものらしい。それによるとその手紙にはマッキンゼー社に対して批判を浴びせている内容が書かれていた。いまやマッキンゼーの経営は集中を欠き、経営の失敗と指摘されていたという。

経営コンサルタント会社8社というのはこのマッキンゼー社に加えてボストンコンサルティング・グループ、ベイン・アンド・カンパニーという戦略系コンサルティングファームがある。そこに会計系から派生したE&Y、デロイト、PwC、KPMG。それにアウトソーシングを得意とするアクセンチュアの8社を合わせたものである。

ちなみにわたしはこの中でアクセンチュアに属していた。もともとアクセンチュアの傘下に入る前はカート・サーモン・アソシエイツといってアメリカのジョージア州アトランタに本社を構えていた。こじんまりとしたブティックのようなコンサルティング会社で東京では赤坂に支店があった。

流通と消費財の分野で物流・ITを得意としていた。しかしやっていることは経営コンサルティングである。

コンサルティング会社というのは成長が義務付けられている。成長しか成功とはいえない。結果を出さなければどんなひともクビである。雇われたら経営コンサルタントは顧客のために全力をつくすことにある。顧客がお金を払う。そのためには顧客の業績を伸ばすこと。それ以外に方法はない。こういった結果がすべてである。

その8社合計の売上推移がある。こう見ると順調そうだ。

The Economist, "Some advice to the corporate world’s know-it-alls", March 27, 2024

過去10年間は順調に推移してきた。ところが2023年は伸び悩み前年比5%になったという。エコノミストの記者はそこにつけこんで記事を書いたと思われる。どうもコンサルティング会社は順調にいきすぎた。人を大量に雇い、大きくなり過ぎた。そのように観察している。

そこでさらに物議を醸す。顧客との関係がうまくいっていない。特にアメリカでのことをいっている。それは顧客側の担当者の平均年収は750万円程度にしかすぎないにもかかわらず、これら8社のコンサルタントの年収は3千万円を超えるという。ほんとうであろう。この差があることで緊張が走っているという。実際、都内でもPwCは1時間あたり10万円をチャージするともいう。1日8時間として80万円になる。

次に顧客側が経営コンサルタントに何をさせたらいいのか。既存のビジネスにテコ入れするのか、それとも新しい分野に進出するのか。それはコンサルタントは決められない。そこを判断してくれというのは都合がよすぎる。両利きでは動けない。例えば人工知能を使ったプロジェクトを開始するのかどうか。これは経営コンサルタントが決めることではない。

そういった内容だった。

さて事件は読書会の前に起きた。この記事が選定候補として投稿された。そのあとにある参加予定者がこのような内容のコメントを投稿をしたのである。

「正直言って経営コンサルティング会社って必要なのだろうか。例えばマッキンゼーといったところ・・・」

ここまでは問題がない。

問題はだった。「マッキンゼー出身の大前研一氏は講演でこんなことを語っていた。トヨタ自動車にとってEVというのはおもちゃのようなものだ。」はたしてこのように大前氏が言っていたのかはさだかではない。しかしこの文章には2点問題がある。

ひとつは特定できる個人名を出してはいけない。マッキンゼー社の元パートナーというくらいであればよかった。そうであればわたしは問題視はしなかった。次にこれはどこから引用したのか全くわからないもので出所が不明であり、投稿者が都合のいいように文章をアレンジした可能性がある。

なのでわたしは反発した。

SNSで批判するときは個人名を出すのはよくない。それは誤解を招くからだ。

ここまで読むとこの文章の読者でさえ勘違いしてしまう。年収3千万円のコンサルタント。そのひとたちがトヨタ自動車に向かってEVはおもちゃとして走らせている。なんとも顧客を小馬鹿にしたように受け取られないだろうか。そうではないはずだ。

コンサルティング会社のニュースを読むときには注意しなければならない。よほどコンサルティング会社の内情に詳しくないかぎりは記事の内容をうのみにしないほうがよい。コンサルタントというのはそれほど表舞台で活躍するひとたちではない。それに大前氏はもう経営コンサルタントではない。

年収が高くて顧客をバカにしたとなればコンサルティング会社というのはなんとも悪い会社ともうけとめられることだろう。しかし実際の顧客とは契約関係にある。書面でどのようなアドバイスをするのかを約束している。それは契約に立ち会った人。あるいは契約書を読んだ人以外にはわからない。

そして最後にこれが最も誤解を生むところだ。記事を読み、読書会で話したとしても真実はわからない。物事を一面をとらえただけである。それはこのニュースがひとつの事件の存在にすぎないことだ。それがひょっとしたら大きな事件が起こる合図になることはある。しかし合図にしかすぎない。事件は起きてからその規模がわかるのである。起きてから誤解したまま議論をしないほうがいい。

このようにエコノミストといえども混乱を招く。それに対して不適切なコメントを投稿したのであればさらなる混乱を招く。その原因は永遠に究明されない。究明する必要すらない。

もうひとつ、わたしはどうしても反発するしかなかった。というのはこの読書会はマッキンゼー社に通ずるひとたちが14年前にはじめたものだった。早稲田大学ファイナンス学科の優秀なひとたちだった。しかもその卒業生を束ねていたひとはマッキンゼー社に勤務していたひとだった。その教授が授業で使っていた記事がエコノミストだったのである。

ただもうこれは昔の話になる。そのことは忘れて今のひとは今のやりかたでやろうという考えはある。しかしながら読書会のルールとしては名指しで批判をするのはやめようというのが明記されてある。ルール違反が起きてしまった。反則は取り締まらなければいけない。迷惑行為なのである。

特に個人が特定できるような形での批判は避けないといけない。イベント内では出してもよいかもしれない。しかし投稿はいけない。記録に残りSNSでは炎上するためだ。そういった決まりがあるにもかかわらずルールが守られてはいない。

さらに悪いのはルールを作った人がルールを守らないのである。野放にしてイベントにすら参加してこない。

これでは読書会は収束に向かうことであろう。個人名での批判は避けた方がよい。その批判をしてなにか得にことはない。憎しみを増進するだけでやがては毒になる。どうも毒を盛りたがる人が群がるイベントになってしまった。