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ネット依存への罠

だれもがネットを気軽に使える時代が来ました。同時にだれもがネットに依存をしてしまい、大きな損失を被るようにもなりました。その損失とは、時間を奪われることです。失った時間はもどってきません。危険です。そのため、わたしは慎重にネットで奪われる時間を考えてから使うようにしています。大学生の皆さんはどうでしょうか。

今回のシリーズも経済学部と工学部に所属する大学生の方たち、そして卒業をしてまもない、社会人になって2~3年くらいの方たちを対象にします。内容はネット依存症とその罠をどう仕掛けるのか。どのようにはめようとしているか。そしてどう抜けていくかです。抜けるのは簡単ではありません。

ネット依存症とは

現在、読んでいる本、「『依存症ビジネス』のつくられかた、僕らはそれに抵抗できない」 アダム・オルター著、上原裕美子訳、ダイヤモンド社、2019を参考にします。

この本の20ページにある簡単なテストをしてください。インターネット依存症テストです。実際のテスト(IAT)は20項目あります。ここでは、5つの項目をひとつづつ回答し、0から5までを選択してください。

*ふと気づいたら、思った以上に長くネットをしていた
*ネットをしている時間のことで人から注意をうける
*他のことよりメールチェックを優先する
*遅くまでネットをして睡眠時間が短い
*ネットしながら「あと数分だけ」と思う

0=当てはまらない
1=滅多にない
2=ときどきある
3=よくある
4=しょっちゅうある
5=つねにある

いかがでしょうか。わたしは、合計5でした。内訳は、上から2,0,0,2,1です。合計が7以下なら依存症の気配はありません。8から12なら軽度の依存症で自分でコントロールできている。13から20なら中度。21から25の場合は重度と判断されます。

ここでは13以上の人にはぜひ読んでいただきたいものです。めやすとしては、平日の月から金曜日の過ごし方として以下のようになります。睡眠7時間、ワーク10時間、基本活動3時間、自分だけ時間は4時間。

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出典 TED Adam Alter, "Why our screens make us less happy", Aug 2, 2017

ワークは、大学生は勉強あるいは授業、社会人は仕事あるいは会議です。勉強というのは、図書館で調べ物をする。友人と話すなどの知的活動。仕事というのはデスク上での作業です。ワークには通学・通勤時間が含まれます。基本活動は、食事、お風呂、運動など生活していくために必要な活動。そして自分だけの時間はそれ以外です。

問うているのは、自分だけに使う平日4時間です。図でいうところの白の部分です。この4時間のうち何をしているのでしょうか。アダム・オルター氏によるとこの時間はリクリエーションをするパーソナルな時間だといいます。空いた時間を使ってのんびりする余暇タイムです。娯楽性が高く、生活する上で特に必要でもなくほとんど何も生み出さない非生産的な活動のことを指します。

このタイムにネットを使っている時間はどのくらいでしょうか。オルター氏によると近年ほとんどのひとがネットを使っている。特にSNSだといいます。このSNSがとても危険である、罠であるといいます。

めやすとしては、4時間のうち3時間以上SNSを使っている場合はネット依存症でしょう。2時間でも危険です。2007年時点では2時間でした。

ある調査によるとアメリカ人は、1か月のうち、丸2日48時間、facebookを使っているといった結果がありました。1日あたり1時間40分にもなります。別の調査では、大人は1日平均35分間使っているそうです。これは明らかに使いすぎです。

SNSといわれるサービスは、どれも危険です。その中には、facebook, Instagram, Twitter, LINE, LinkedIn, Medium、そして場合によってはこのnoteも含まれます。次回は、なぜfacebookが危険でどういう方向にいこうとしているのかを書きます。

今日のところは、自分がネット依存症なのかどうか、パーソナルな4時間のうち、2時間以上使ってしまうのかどうか。特にSNSに使ってしまう人に該当するかどうかです。自分は該当しないようであれば、次回から読む必要はありません。

依存への仕掛け

依存症テストの合計点はいかがでしたでしょうか。スコアが12以下であることを願ってます。それであれば自分でコントロールできてます。13以上の方は、これから書いてあることを読んでいただければ幸いです。

この回ではfacebookや類似するSNSはどういう仕掛けをしているか、です。ひとことでいうとfacebookは娯楽サイトです。非生産的でなんの役にも立ちません。ただ、時間を奪うでだけ、徒労に終わる手間をかけるであり、ほとんどのひとにとって必要のないものです。ギャンブルとでもいえましょう。問題なのは中毒症状を起こす仕掛けがちりばめられています。そのひとつがlike(スキ)ボタンです。

likeボタンはいくつ集めても意味がありません。意味があるように思わせる仕掛けです。そして読者が反応を示してくれてあたかも注意をひいたと思わせるものです。そこで仕掛けてます。投稿者が投稿するのに5分使ったとします。読者が1分で読んでlikeボタンを押したとします。これで二人合わせて6分の時間を奪ったことになります。

facebookはユーザーが時間を使ってもらえれば広告収入になります。収益の98%が広告です。利益を追求する民間組織です。どのような投稿をして、読者がどう反応したかというデータをAIで解析します。その結果を使って広告を右上に見せます。また、ニュース・フィードに載せます。つまり、投稿者の嗜好(データ)を解析して、広告主に課金をします。ユーザーにはお金は請求されません。しかし、時間と手間が請求されてます。そこが問題です。

これは、カジノのスロットマシーンの仕掛けに似ています。スロットマシーンでは、$1.50をかけて$1.00もどってくることがあります。これでは$0.50損失していることになるのです。投稿に5分($1.50)かけて、Like($1.00)もどったとあたかもご褒美があったと思わせるのです。ネット上のギャンブルです。間違えるとギャンブル行為につながる危険があります。

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これは5年前にもアダム・オルター以外の識者から指摘がありました。このプレゼンテーションは複数の査読付き論文にもとづいています。それらが深刻な(脳への)影響を繰り返し報告しており、Multiple well-documented significant harmといっています。アメリカの論文報告は実証科学です。科学的に人の脳内を調べて仮説を検証しています。その検証結果を学会で報告しています。

大学というところは研究をするところです。もちろん授業をして教育をするところでもあります。ただ、この授業、つまり業(わざ)を授ける(さずける)ことですが、皆さんは授かっていますでしょうか。10年、600回登壇しましたが、どうも授かっているかは怪しい。教える側も講師控え室の談話を拝聴すると授けようとしているかも怪しい。

教える側も学生がネット依存症であるかどうかは気にしていない。気にしていないどころか、とても危険なことであるという前提で授業をしていない。研究室を持たない講師は、講義の30分くらい前にきて、終わったら帰るだけです。危険なことを注意せず、学生をほったらかしにしてます。そもそも講師に配られる業務委託契約に学生を注意をせよという記述はありません。そのあたりは、別の場所でお話ししました。

となると大学生が自ずから問題意識を持たないとネット依存症になりえます。それどころか授業料を払って大学にいく意味がありません。オール公立で770万円、オール私立で2,200万円の教育費がかかります。2歳から22歳まで20年、毎月支払ったとしてオール公立であれば月3万円。オール私立であれば9万円です。これは家計への大変な負担です。コロナ過で台所事情が厳しいのです。

授ける側の方もこれをすれば成功するという成功の方程式がないのです。方程式がないため、これさえしておけばいいというものを確実にいえません。ただ、私の経験からひとついえることは、これをすれば確実に失敗するということはいえます。つまり、大学は、失敗しないことを学ぶところといえるでしょう。

その失敗しないことを学ぶ大学で、ネット依存になりSNSを毎日2時間以上使う。ギャンブルとわかってこれを4年間すれば確実に就職に失敗します。就職に失敗するだけでなく、ひょっとしたらその後にも影響するかもしれません。依存症から抜けるのは簡単ではありません。そのため就職先の企業では、ネット依存症を救済するだけの環境も資金を用意するような余裕ありません。

次回はfacebookがこれから何をしようとしているか。この後にウォール・ストリート・ジャーナル紙で放送されたWhitelist(ルールからはずれたリストの存在)、human trafficing (人身売買)、そしてInstagramにはまった10代の少女の結末について述べます。

Facebook (Meta)は何をしようとしているか

ここまで大学生の皆さんはどうでしょうか。まさか、スコア12以上の依存症ではないことを願ってます。平日月から金曜日の5日間、毎日2時間以上で中度、3時間以上で重度のネット依存症の疑いがあります。そうでない方はここから先は読む必要ありません。ただし、どのような人でもちょっとしたことでハマってしまいます。

33年前に結婚式をした後、新婚旅行をしました。旅行でたまたま泊まったすぐ隣にカジノがあったのです。そのカジノに夕食を済ませたあといきました。そこにはスロットマシーンがあり、まあ、ちょっと遊ぼうという軽い気持ちでQRT硬貨($0.25、30円、¥/$=110)をいれて遊びました。

しばらくすると急にじゃらじゃら機械がうなりはじめてとまらなくなりました。そして受け皿に硬貨があふれるばかりたまっていきました。それを袋にいれてホテルにもどったのです。それに女房とわたしはすっかり気に入ってしまいました。あの重みは快楽でした。

その重みに取りつかれたわたしたちは、翌日なんと朝8:30にカジノにいったのです。案の定、電気がついていなく、掃除をしているひとしかいませんでした。その清掃人は、わたしたちを見るとこのカップルはなにを勘違いしているのかとあきれた表情をしていました。それから反省をし、旅程はもとどうりになったのです。

さて、facebookはこれから何をしようとしているのでしょうか。まずこの営利組織の現状を記述します。この記事を参考にしました。営利組織は業績で表します。第二四半期(4~6月)の売上(Revenues)は、前年同期比+56%の$29bn(3兆円+、¥/$=110円)です。これにより暦年(1~12月)で$100bn(11兆円)に到達見込みです。

この数字から計算すると1か月で約9,200憶円を売上げます。それは1日あたりにして305億円です。1時間で12億円。1分で210万円。さらには1秒で3.5万円売上げます。いいでしょうか。たったの1秒で3.5万円です。これは、ビルゲイツが稼いでいた時の2倍です。

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出典 The Economist, "faceworld", July 29th, 2021

コスト(費用)を引いた営業利益(Operating profit)は、第2四半期で$10.4bn(11兆円)で前年の2倍です。稼ぐ力が株式市場で評価されてます。期待されており、時価総額(持ち金、Market capitalization)は、110兆円です。その収益源の98%が広告収入です。30億人分のアカウントが登録されていて、世界の総人口の3分の1。アカウントあたり$8(100円)を売上げます。アメリカのおとなは平均して毎日35分使います。それだけ投稿とLikeボタンで時間を失い、わざわざ手間をかけてデータ(個人の嗜好)を無料で渡しています。

そしてアメリカの広告費全体の60%がfacebookに支払われています。その広告主は、ほとんどが中小企業です。その数は1、000万社といわれます。中小企業は広告費にそれほど費用をかけれません。そのため、facebookと契約します。ここまでが現状です。

facebookはこれから次へのステージにいこうとしています。3つの領域に踏み込んでいきます。ひとつは、動画投稿サイト、ふたつめは、e-commerce(電子商取引)、三つめは、メタバースというゲーム開発者とゲーマーのためのサイトです。時間と手間を奪い、ネット依存症をさらに誘発しそうでしょうか。ひとつづつ見ていきましょう。

ひとつめは、Creator economyといって、主にTikTokやYouTubeのように動画を投稿する人たちを増やしていきます。現在、アメリカ人はTikTokの動画に毎月21時間使います。毎日ほぼ1時間使う。facebookには18時間です。この数字を増やしたいのです。動画ですから、クリエイターは制作に時間と手間がかかり、視聴する側もそれだけ注目します。ザッカーバーグ氏は、動画投稿者に$1bn(1,100億円)をばらまくといっています。

ふたつめは、e-commerce(電子商取引)で、チャットの使用頻度をあげてもらうことです。フレンド同士、あるいは、見知らぬひとどうしがチャットをしながら、これがいい、あれがいいとチャットしながらサイト内に掲示されたものを買っていくという状況をつくりだそうとしています。これは、e-commerceからc-commerceつまり、会話(Conversation)による取引を促す可能性があります。偽情報が氾濫しえます。

三つめがとても危険なものでメタバースです。これは、ゲーム開発者のコミュニティをつくろうとしています。世界に800万人の開発者がいるといわれ、そのうち、300人は、Robloxから$100,000(1、100万円)の報酬がありました。アメリカ人の10代は、4人のうち3人がRobloxのユーザーです。まぎれもなくゲーム廃人への道でしょう。

いかがでしょうか。ある程度、理解できているはずです。なにも禁欲をして修行僧になれといっているわけではありません。そうする必要は全くありません。しかしちょっとしたことでのめりこむと破滅につながるかもしれません。そうなっても現在の法律ではだれも訴えることなどできません。

広告を収入源にしたSNSにのめりこまないほうがいいです。できれば1時間以内にしたいものです。

次回は、ウォールストリートジャーナルから引用してfacebookの社内でどのようなことが起きているかについて紹介します。

Whitelist

facebookをはじめとするSNSのほとんどがギャンブル仕掛けを持ち合わせています。その仕掛けは巧妙でカジノのスロットマシーンのようです。マシーンからときどきご褒美をもらっても実のところ損してます。ユーザーは快楽をえる。それをネット上で再現した。知らず知らずのうちに広告型SNSで時間と手間を奪われていく。ここまでそのようなことを書きました。

9月にウォール・ストリート・ジャーナル紙がfacebookの特集をしました。特集は、ポッドキャストで4回。その中で5人の記者が司会のブライアン・クーツェンにこたえています。ひとりの記者は、2年半に渡り、facebook担当として社内文書を閲覧しました。他の4人の記者のうち何人かは、はっきりと聞き取れることを二ついっています。

ひとつは、冒頭で、犯罪組織(Criminal organizations)のアカウントが存在していること。もうひとつは、人身売買(Human trafficing)に使われていると述べています。これは、facebook上に人を売買する知らせが掲載されていること。アメリカの報道記者が公の場で、しかも、著名なメディアを通して話しているときは、本当のことをいっているのです。

このラジオ番組を簡単にまとめてみます。Whitelist(ルールからはずれたリストの存在)とInstagramにハマった十代の少女のストーリーです。まず、Whitelistに至るまでの経緯です。

これまでfacebookでは、閲覧者を不快にする投稿がされてきました。ネット上における政治・宗教への勧誘、誹謗中傷、露出した写真、プロパガンダ、破壊工作などのルール・マナー違反です。

その対策として社内でシールド(Shielding)を施しました。これにより投稿が人に閲覧されないようにしました。投稿はされてもほかの人には見られない。さらに悪質で過激な投稿には、Cross-checkということをしたそうです。これは何か。ブライアン・クーツェンが記者にたずねています。チェックといいながら、Delete(削除)することではないか、と。その問いに記者は、そのとおりだと述べています。

著名な政治家やタレント、アスリートたちのアカウントをいくつか凍結しました。凍結したとはいえ、アカウントはたくさんあります。いろいろ試したあげく、10%のアカウントでMess-up、つまり混乱をきたした、と。そして放置せざるをえない状態といいます。

30億のアカウント、世界人口の3分の1である約30億人がサインアップされています。そのうち、5.8m、580万ものアカウントは違反アカウントです。それらをWhitelistに分類し、制御不能で放置しています。それらは秘密のファイル・アカウントへと持っていかざるをえない。

違反者リスト(List of violators)にいれています。放置しているだけのため、違反者は別のアカウントをつくって投稿し続けます。その違反投稿の閲覧数が、ある時点で、16.4bn(1兆6,400億)回に達していると報道しています。

ただ、facebookを悪いと結論づけていません。過去において投稿のコンテンツを精査するために30,000人を雇い、彼らがコンテンツ・エンジニアとして投稿内容を見てきました。行政による法の執行はされていません。facebookはあくまでビジネスであり、受益者は投資家と広告主です。検閲機関でもなく、警察でもありません。表現の自由、報道の自由という観点もあります。

さてユーザーである読者ならどうするか。自制しながら、節度を持って使うしかないのかもしれません。次回は、インスタグラムにはまった少女の結末です。

インスタグラムにはまった少女の結末

インスタグラムは10代の女の子にとても人気だそうです。その人気は過熱気味ともいえます。アメリカでは、8th grade (中学2年生、11歳)が使っているといいます。中学2年生がスマホを持ってSNSに自分の写真を投稿をするというのは考えられませんね。しかも、写っている容姿やボディを友人やパブリックに公開をするというのはどうなんでしょう。

スマホを開発したシリコンバレーでは、11歳まではスマホを持たせないそうです。また、タブレットを寝室に置かない。私の家族もそうしてます。

ウォール・ストリート・ジャーナル紙のラジオ番組。そこではティーンズがインスタグラムにハマってしまい、どうなったかを伝えています。結末は、ホッとするものにもかかわらず、そこに至る過程は10代がたどるものとは考えられない。ティーンズはまだ発達段階にあります。そんなエピソードです。

エピソードに登場する女性は、11歳にはインスタグラムで写真投稿をしていたそうです。インスタグラムは写真を載せるだけのサイトです。一方でfacebookにある投稿サイトは、facebook社内ではBlueといわれています。このBlueは大人に人気があるものの、10代にはややハードルが高いといいます。もっと気軽に簡単に写真というインパクトだけということでインスタグラムが広まったのでしょう。

インスタグラムは10代の女性にとってはあこがれのモデルをたくさん見ることができます。それでひょっとしたら自分もそのようになれると信じてしまう。そして自分もアピールできるところでもあるそうです。

そのため、容姿をアピールして、友達に反応ボタンをもらうことであたかもスターのようになったという錯覚を起こしてしまった。それをエスカレートさせてしまったと証言しています。証言の中には、次第に現実の自分との違いに悩みはじめました。SNS内の他人との比較(Social comparison)で不安や自己嫌悪を募らせてしまったそうです。

それが積み重なった結果、2年後の13歳の時から自分に対して不必要な罰を与えるようになった。スタイルを保つためには食べてはいけないものを口にしない。いっさいそのようなものを口にしない。ところが期間をすぎるとファーストフードを次から次へと食べる。偏食症(Eating disorder)を起こしてしまった。そうなると体調不良になります。栄養の偏在ですから。

フィットネス産業にいる人たちのように魅力的なボディを保ちたい。そのため、夜の9:30に母親に頼んで車を出してもらった。それからジムに連れて行ってもらい、ランニングマシンで6マイル(10㎞)走った。誰が考えても、そんなことをすれば身体は壊れますよね。栄養が行き届かず、疲労回復はできない。フィットネス業界からアパレル用品が家に届けられていたため、抜けることができなかったのでしょう。

成績も落ちていき、16歳のときにカウンセラーと話をはじめるようになったそうです。16歳というのは高校生一、二年生です。まだ発達段階の途上にある時期にセラピスト(精神科医)に会うというのは、感心しません。確かにわたしがミシガン州の大学に通っていた時、隣に高校3年生が引っ越してきました。彼もセラピストに会っているといっていました。37年前のことです。

実は、アメリカにはこのような10代がたくさんいることがわかってきました。ある調査に答えた10代のうち、3人にひとりがSNSにより不快になる、不安を覚えると証言しています。それにより抑うつ症、うつ状態、自虐的になるとのことです。メンタルヘルスへの悪影響を与えるSNS。その中でもインスタグラムが最悪だともいっています。

中には命を落としたひともいます。

だれもが有名人になれるわけではありませんね。図書館にいってタレント名鑑を見てください。例えば、日本橋にある図書館7Fの資料室にいけば見つかります。そこに載っている人たちの数はどうでしょう、せいぜい1万人くらいでしょうか。大学卒はどのくらいいるのでしょうか。大学というのは学問を学び、専門分野を磨くところです。

東京都の人口は、1,300万人。1都3県合わせれば3,000万人です。そのうち、有名人1万人としたら、3,000分の1です。であれば、大学生であれば、当然平均を狙いに行きます。上場していて、つまり、財務情報を開示していること。できるだけ規模の大きい会社に就職する。人材が豊富だからです。そこでお金をもらって働き続ける。そうやって生計をたてる。その生計を基盤に社内外でつながる。

どうやらアメリカの10代は、つながっていることを勘違いしているのかもしれません。Blueやインスタグラムで友達申請をして承認されれば、つながった、と。はたしてそうでしょうか。わたしにいわせれば、たまたま何かのきっかけでオンライン上で偶然出会った。出会いは大事ですけど。

都内にある交差点でたまたま出くわした人くらいでしょう。人と人が行きかう信号交差点で会った。ネット上と路上交差点の違いはあるのでしょうか。おそらくないのかも。

つながりはどうでしょうか。わたしにはつながっているというより、連絡がとれるという関係にしか見えない。でもユビキタス、つまり、いつでも、どこでも、だれとでも。時空を超えて連絡がとれる。そう捉えることは可能です。この超えてというのが罠に近い。

時空を超える。時間(時)と空間(場)を超えるというのはどういうことか。これは、いつでも、どこでも、である反面、時がずれて、場が異なっていても連絡がとれてしまう。それがつながる、意味あるつながりというには、ちょっと違和感があります。ずれて屈折する可能性がある。というのは、ずれれば状況が変わってしまっている、感情が変わってしまっている。

つながるというのは、感情が一致していないといけないでしょう。何かひとつのことに向かうこと。関心の輪の中にいること。そうでなければ、どこか期待外れなことが起きて、時には裏切り行為に近いと勘繰ることも起こりえます。わたしの場合は、オンラインでも対面でも、出会ってから3年間は、じっくりと観察する。そして、いっていること、やっていることが継続して一貫性があるのかどうかをチェックしています。

次回は、このシリーズの締めくくりとして、どうしたらネット依存症から抜けることができるかを紹介します。特効薬はなく、簡単ではありません。

どうしたら抜けることができるか

そもそもこのネット依存症をとりあげたひとつの理由に首都圏の大学生に結構いるのではないかというのがありました。大学生を対象に10年間、講義をしていてどうも様子がおかしい。授業中、ほとんど寝ている。おしゃべりをして、集中が続かない。その傍らで学生はスマホを見ていた。目と目が合わず、うつろな表情。素行もおかしい。次第に期待を下げていき、卒業しても犯罪を犯して投獄されなければいいけど・・・、と。ひょっとしてネット依存症なのでは・・・。

あれから2年。コロナでひょっとしたら悪くなったかもしれない。紹介した本によると中国には2,400万人以上が依存症。北京市内には治療施設が400か所あり、1か所あたり6万人。そこでは4か月間、強制的に投薬治療を受ける。中には毎日6時間以上ゲームをしていた人もいる。

日本国内はどうか。東京圏内にもそれなりに依存症はいるのかもしれない。東京には、見渡す限り、病みつきになる依存型ビジネスがあり、まさにネット廃人を製造する仕掛けがちりばまれている。秋葉原周辺にいけばわかりやすい。特に西側の裏通りはその気配がある人が行きかう。

依存から抜け出すことはできるのか。この答えは、たいへん苦しいものになります。まず、抜け出せることはできない。重度(SNS3時間)ではまず無理でしょう。施設にはいっても抜け出せない。中度(2時間)はどっちにも転ぶ。軽度(1時間)でひょっとしたら。というのが本を読んだ後のわたしの見立て。だれもがもうテクノロジーから完全に決別することはできない。

完全に決別できないとなるとどうしたらいいのでしょう。ここでは、最初に紹介をしたアダム・オルター氏の本の中で、わたしが印象に残ったところを参考にして、解釈を加えて述べてみます。最後にわたしが意識してきたことをご紹介します。

まずは、自分が依存症と断定はせず、日ごろの自分の体調や気分を見つめながら、体調がよくないことが2週間続く、気分がすぐれない日が2週間続くとなればちょっと疑う。それでも病気とは認定されていないものです。

本の305ページに時間区分と人の活動について述べているところがあります。睡眠、運動、家族との時間、そして想像的な時間。この4区分が10代の発達段階では必要とあります。20代でも十分に必要です。

睡眠は通常ならば、11時には床にはいり6時まで、ひとによっては、7時くらいまで寝ます。睡眠にはレムとノンレムが90分間隔で訪れます。そのため90分刻みの睡眠がよいとされてます。6時間は少なすぎ。よって7時間半(1.5時間 x 5)くらいが理想。6時半に起床する。24時間のうち7時間を睡眠に使えば残りは17時間。これが月~金曜日できていますでしょうか。

まずは良質な睡眠。マット・ウォーカー氏も推奨しています。50代になると20代の2割くらいしか睡眠ができないとシカゴ大学の研究にあります。それほど20代は、脳が活発に動き、休みを要求します。わたしは、30代、40代はほとんどよく眠れず睡眠不足でした。仕事が忙しすぎた。

ワークは、10時間。勉強か運動。勉強は大学の授業に出ているか友達と話をしているか、オンラインを含む、あるいは図書館で調べ物をする時間。オフィスでは、会議に出ているか机の上で作業をしているかのどちらか。通学・通勤を含む。

運動は、2日間隔で夕方に30分から60分程度のウォーキングかジョギングくらいでいいでしょう。運動クラブに所属しているならば、ストレッチと関節を柔らかくする可動域を広げることでしょう。残り7時間。

生活に必要な時間、家族と過ごす時間で3時間。これは、食事、お風呂、掃除といった生活する上でなくてはならないもの。直接、家族から安心や配慮をもらう時間。できれば、直接肌と肌で触れ合うことで反応をみる。手をさわることで相手がどれほど体温が高いのか、低いのか、とか。熱があるときは、体温計だけでなく、直接おでこを触ってみる。つまり、若い時には愛情を受ける時間。できてますでしょうか。あと残り4時間。

想像的なことをする自由な時間4時間。余暇であり、ひとによっては、エンタメ。音楽を聴いたり、映画を見たり。スポーツ観戦をしたり。芸術の好きな人は、建築物を眺める、彫刻を見る、絵画・音楽、特にクラッシックを聞く。学習や仕事で集中する時間でもなく、脳をゆっくりと休めながら楽しむ時間ともいえます。週末には上野の美術館にいく。

良質なテレビ番組を見る。例えば、『セサミストリート』を推奨する識者は複数います。紹介本の著者もダニエル・ゴールドマン氏も推奨しています。

これだけするとして、SNSをしている時間があるのでしょうか。おそらくないはずだけど・・・。

それでもハマってしまった場合、抜け出すことはできるか。これはとても難しい。簡単であったらこれだけ依存型ビジネスが業績を伸ばすわけがないでしょう。SNSに仕掛けれれている罠は人間が快楽を覚える本能として科学的・生物学的に実証されています。本の著者も抵抗できないとしています。

それでもやれるとしたらふたつ。ひとつは強く意識する。罠を意識する。いつでもその張り巡らされた罠にかかって破滅する危険がある。もうひとつは、いいきかせて自制する。常日頃から自制・予防をしていくことは可能です。自分で毒を盛っているのですから、解毒するのも自分次第。

私の場合です。デバイスとSNSに分けてみます。まず、恐ろしいデバイスは、家に12台あります。3台のiPad。2台のiPhone。1台のiPod。PCは、ノート5台、デスクトプ1台。これだけあっても家庭内のWiFiでつなげているだけです。外出先には持ち歩かない。

SNSは、facebook、Twitter, LinkedIn, Medium, noteのみです。LINEは使っていません。facebookは2008年より使っています。ただし、つながっている友人の数はずっと100人以下。入っているグループは1つだけ。そして2019年より以前の投稿をすべてTrash(ごみ箱)にいれたあとに削除しました。削除してもどこかのサーバーには残っているけど。

TwitterとLinkedInは、週1度くらい。Mediumは、ライターのブログサイトで週1回、あるいは、月2~4回の頻度で投稿しています。noteは最近、多く投稿するようになりました。時間を決めて投稿しないといけませんね。そうでないと、だらだらと書いてしまいますから。

SNSで知ったオンラインイベントは、月3~4回程度。ひとつのイベントは2時間。オンラインイベントは、裏側の運営がたいへんですから、主催者のことは労うものの、運営には深入りしないように注意しています。

スマホをいつも持ち歩かない。持ち歩いても必要なのは、天気情報と交通情報くらいでしょう。大学や職場に持っていくのならわかります。近所をうろつく程度なら必要ないでしょう。メールは、1日1度見る程度。

ニュースは、帰宅してから見ても十分なのではないでしょうか。見ても速報性はありますが、再現性がない。事件・事故ばかり見てもそれほどたいしたことにならない。

SNSは、週末にまとめて1時間くらいでどうでしょうか。まあ、普段の生活をしていれば、土・日のどちらかは、のんびりしているか。公園やショッピング・モールに出かければ時間が過ぎていくはずです。

ネット依存症になりませんように。