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パワハラの被害にあったら

さて、大学生であれば、就職先をじっくり選べます。ただ、じっくり選んだにもかかわらず、就職してからパワハラの被害にあってしまうこともありましょう。ここでは、大企業に就職して2~3年くらい経過した社会人向けて書きます。

大企業以外の中小企業、スタートアップに就職した方は除外します。これらの会社は、資金が切迫していて忙しく働くことが前提です。余裕はありません。損害賠償に費やす資金はありません。

大企業であれば、さまざまな対策をしてきているはずで、注意を喚起し相談室を設けています。社員に向けて研修を実施し、相談室には弁護士資格をもったひとまで配置されています。ところが弁護士は会社に雇われている。謝金は会社から支払われているのであって、被害者がお金を支払うわけではありません。会社の味方をしているのであって、会社の不利になるようには動きません。見せかけの存在です。

ではどうするか。ひとりで悩んでいても解決しません。極秘に外部に相談していくしかありません。相談した時点で会社に対して宣戦布告の準備したことになります。医者、警察、弁護士の順番に書きます。

まず、医者です。身体的外傷を受けたのであれば外部に損傷がみられます。その場合は写真撮影をしておきましょう。身体的な傷だけでなく、服やかばんといった持ち物に害を及んだ場合も写真を撮りましょう。証拠になります。物的証拠がなければ、損害賠償額が計算されません。

精神的苦痛の場合は、結構、証明が難しいです。不快であることを証明することがそれほど簡単ではないからです。天気が悪いから不快。渋滞に巻き込まれたから不快。それでも不快です。それがパワハラの場合、どの程度の損害になっているのか客観的な証拠として押さえることができない。被害者の受け止め方の解釈にもなります。

証拠ということであれば、スマホを使って音声を録音。写真をとる。そして動画を撮影する。特に閉鎖されたところで上司とふたりきりで話すことは避ける。避けられないときは音声を録音しておきましょう。

医師から出る診断書。そしてもらった薬の記録をつけることです。これらには金銭的な価値がついています。それらの費用が賠償のときに証明できるものです。金銭で証明できない、単なる精神的苦痛をいうものを数値計算するのは難しい。

まずは健康状態を健常にもっていくことが大切です。これがこじれるとそれほど簡単ではない。やっかいなところです。被害を受け、医者に通いはじめたならば、一生つきあっていくしかない事件・事故にもなりかねません。

次に警察です。もよりの警察署に行ってみてください。生活安全課というところで刑事が会ってくれます。そこで30分程度話を聞いてもらえます。そして話の途中で被害届について話題になります。この被害届の欄に何が書けるかです。証拠としてどこまで具体的に記述できるかです。書式はネットでも公開されています。

警察は被害届が出てからしか動きません。動くというのは事情聴取です。ですので被害を証明できること。だれがみても被害であるという物的証拠を残すこと。損傷を受けたところを写真を撮っておいて、治る前に被害届を出す。治ってからでは証拠になりにくい。

刑事は、ドラマのようにかっこよくは事件を解決しません。これは実際に地元の刑事がいったことです。被害届を出すときに刑事に聞いてみてください。これは刑事事件なのか、民事事件なのか、それによって相談に乗ってくれる弁護士が変わってきます。

次は、弁護士です。ある程度の証拠がそろっていると仮定します。そうすると弁護士に相談です。法テラスに電話をかけて弁護士を紹介してもらう、あるいは、住んでいる市の法律相談を利用します。電話番号は広報誌に載っています。約束をした日に弁護士に会います。3人くらいの複数の弁護士に会うことをお勧めします。一度会えば、次の弁護士に会えるのは3か月後です。ですので1年がかりです。

会うときには心得ておくことがひとつあります。それは、弁護士は裁判になりそうでない事件でないと仕事をすすめません。そして勝たないと意味がない。報酬が得られない。そこで報酬について最初に聞いておくことです。事件解決の相談員ではないのです。

いくらの損害賠償であれば相談にのってもらえますかです。そのとき、弁護士は答えます。1,000万円でなければ引き受けないというひともいれば、300万円でもやるという良心的な人もいます。そこがはじきだせないと途中から聞いてもらえません。よほどでないと安い案件には手を出そうとはしません。

アメリカのある調査によると人権擁護のトラブルで被害者が使う費用は、年収の1割といわれます。これは現場に通常復帰するための費用。年収600万であれば、60万円の被害額になります。

弁護士というのは、時間で課金をします。なるべく短い時間でできるだけ多くを稼ぎたい。裁判で長くこじれるのはやりたくない。安い案件には興味を示さないものです。

医者、警察、弁護士とクリアしたのであれば、次は裁判所です。この裁判所に普段からいく人は少ない。わたしの住む市の裁判所は駅から近くでロケーションがいい。にもかかわらず駐車場はガラガラです。夏には空調が効いており、資料室は本を読むのには適しています。来年の夏は、noteのブログを資料室で書くのもいいですね。

ただ、開放型の資料室のすぐとなりでは、少年院の裁判が行われています。

こういった裁判所の雰囲気に慣れておくことです。証言をする日にいきなりいって、いい証言ができるわけはありません。場所に慣れることによって、普段とは違う雰囲気でつらい体験を淡々としゃべれるようになれます。

パワハラを受け、被害者となった時点で、出世はあきらめたほうがいいでしょう。残念ですが、どんなにいい大学を卒業し、どんなに一生懸命働いてきても、その時点で上には上がれません。こういった現実があることは理解しておきましょう。

もう一度、定義にもどります。上のものが立場を利用して、意図的にハラスメントを与える。下の者が嫌がっているのに、それを意に介さず、ハラスメント行為を繰り返す。そしてその結果、下の者が身体的あるいは精神的苦痛の被害を受けて、パフォーマンスが下がる。これがパワハラです。

いいかえるとまず意図的であることが証明されなければなりません。誰が見ても嫌がることをする。嫌がっているのにする。そしてそれを繰り返す。その行為は、音声、画像、映像でとらえられる。そして身体的損傷ができる。あるいは、精神的苦痛により、(医者の診断結果もあわせて)、ダメージが特定できる。それによりパフォーマンスがさがる。

この定義に従えば、パワハラというのは、よほどのことがないと起こらないはずです。どうもおこりそうもないことが頻繫に起きている可能性がある。どんなひとでも加害者になって下に被害を与える可能性があります。いつも会社で言動を見ているからといって、いたずらに馴れ馴れしくしないほうがよい。

パワハラが起きて、被害を受けたのに、何らかの方法で適当に仕事をやって給料をもらえるのならいいです。ただ、裁判となると結果にかかわらず離職しなければならない。そのために泣き寝入りが多いのでしょう。

泣き寝入りであれば、どんなことがあっても給料だけはもらっていきたい。適当に仕事をして、早く帰って、家でのんびりしたい。パワハラの被害者になったときには、それを選ぶしか方法しかないときがあります。それが選べるのが、日本の大企業のいいところです。それでクビになったと聞いたことがない。

離職したときに医者に通いながら裁判に持っていくのは大変です。そして裁判をしたら勝たなければならない。そして勝って、はじめて、損害賠償ができます。賠償額の事例を調べておきましょう。D1-Law.comで調べられます。図書館にいけば使えます。行く前に問い合わせてもいいでしょう。

最低ラインの健康とお金を確保しましょう。会社組織とはそんなものです。組織といっても文房具と同じような道具です。経済的には虚構にすぎません。社会的役割を担ったやさしいコミュニティと勘違いしてはいけません。コミュニティならば、NPO(非営利組織)で働けばよい。ただ、残念ながら、ほとんどのNPOは弱者の救済をしていません。

ここまで参考になれば幸いです。