見出し画像

AIドクターは現れるか

かなり前のことになる。日本人男性の2人にひとりはがんになる。がんと診断された場合は放射線治療をしなければならない。がん細胞が消えた後も通院をして再発しないようにする。このような話を聞いた。実際にこんなこと起こるのだろうか。

わたしの家系ではがんはほとんどいなかった。診断された人は少ない。父や母はどうではなかった。まわりで2人に1人というはない。

ところがここ20年でわたしの親戚でがんと診断された人たちがぽつりぽつりと出てきた。兄はそうだった。親戚のおばさんもそうだった。姉の親戚では若い時に妹をがんで亡くしている。とてもストレスの高い仕事についていたとは思われない。それでもがんと診断された。

さて診察を受けたとする。そのときAIのドクターがいてこう診断結果を伝えたとしよう。「残念ですが、あなたはがんに侵されています。このまま治療をしないと半年以内に他界します。」その声はパソコンから聞こえてくる機械音。言葉は一言一言はっきりと聞こえる。人間の声とほとんど変わらない。

あなたはどう反応するだろうか。わたしがそのような状況であったらあまり受け入れられない。AIドクターなるものにはどうも違和感があるからだ。

エコノミスト誌にAIドクターがいずれ来るのではないか。ただその道のりは険しいという記事が掲載された。確かにアメリカでは病院内でAIを使った様々な実験が行われている。しかしながらいずれも結果はよくない。いずれAIは広まるがその足どりは遅い。

理由としてまずプライバシー保護がある。また、新しい商品の暴走に対して規制ができるのかどうか。そして最後にメリットが不明確なことにある。それぞれどういうことだろうか。

まず患者としてはプライバシー保護は気になることだろう。AIによって診断された結果はどこかのデータベースに病歴として残る。それをだれかに盗まれたりしないだろうか。そういう危惧はある。悪用されれば損害を被ることになる。例えば会社においてがん患者ということが人事に判明してしまった場合にはどうなるだろうか。

配置転換や昇進に影響が出るかもしれない。するとひょっとしたら昇給にも響くかもしれない。こういったことは情報保護されなければならないだろう。特に若い人にとっては保護は大切なことになる。差別を受けかねない。

次にAIロボといった商品が開発されたとしよう。それを比較的貧困国に導入するとする。貧困国におけるデータにおいては信ぴょう性が低いことが知られている。せっかく性能のいいロボットを開発したとしてもデータに信頼がなければ誤診もありえる。あやまった治療をほどこしてしまいかねない。ここが懸念される。

最後にAIドクターによる診断。医者がAIを使ったとする。これで医療行為の質が上がるのだろうか。それとも病院の運営コストが効率化されるのだろうか。どちらになるだろうかという問題がある。さてあなたが院長であったらどっちを優先するのであろうか。その答えはだれもわからない。現時点において両方を狙うといった安易な回答はできない。

わたしはAIがアメリカで普及するには少なくとも2年以上はかかるというように理解している。データ保護の問題がある。実験ははじまったばかりということもあろう。

わたしの親戚の中にがんと診断されたひとたちが2人いる。間違ってもAIドクターによる診断はしてもらいたくない。なぜかというと診断を受けた後の治療そして心のケアというものが欠かせないからだ。

いずれAIによる診断は来るであろう。しかし願わくば無機質な声がロボットから出てくるのでなく、患者に寄り添ったロボットであってほしい。