ジェンダー・ギャップから考える就職先

<以下の文章は、3か月前の1月31日に書いたものです>

さて、ひさしぶりに大学生の皆さんに向けて文章を書いてみます。ここ最近は、社会人とのオンラインイベントが続きました。そのため、自分の意識が就業経験の長い人たちの目線になりがちでした。そのようなではあったものの、このnoteの大半の読者層は大学生。その人たちに向けてなにかないかと考えをめぐらしていました。ジェンダー・ギャップをテーマにします。

そもそも男女平等というのを最初に聞いたのは40年前になります。そのころ、わたしは大学生であって、アメリカの政治・経済を勉強していました。政治では法律をとりあげて、合衆国憲法をもとに話をしていたと記憶しています。アメリカと日本の比較も当然のことながらおこなわれ、日本における人権に対する意識の低さ、それに伴う日本国内での会社生活、家庭生活の男尊女卑のようなことが会話としてあがっていました。

そこでは、ジェンダーについて深く考えるということはせず、日本における封建制度の残滓や組織人の罪悪といったことで済ませてしまいました。

そして最近、オンラインイベントで話題になるのは、社会課題を扱ったものがとても多い。なかでも会社組織の経営に関わるものでも多く存在します。昨年、あるイベントで聞いたところ、日本の状況が紹介されていました。

World Economic Forum、通称ダボス会議というのがあります。そこで各国のジェンダー・ギャップ、男女間格差という統計が発表されています。日本は120位です。アジア諸国は、欧米に比べて比較的格差は大きいという傾向はあります。ただ、日本は先進国とG7では最下位です。40年経過してもそうなのか。

昨年、ダボス会議が同時に発表したレポートによると世界各国のジェンダー・ギャップを是正するには135年かかるといわれ、中でも日本の取り組みはいまでも遅れているという発表がありました。

これをうけて、わたしの中では、是正はいつまでたっても進むことはないだろう。このまま指をくわえて見ているだけではないか。日本企業がいつまでも取り組みをしないのであれば、どうしようもない、といったややあきらめに近い姿勢をとるようになりました。

そんな折、先週、ニューヨークに住む人が組織の外の人を集めてビジネスの話をするというイベントがあり、参加しました。そこでは、経営コンサルタントの方が発表をしました。多数派(男性)が気づいていない無意識に存在する偏見、それによって組織に悪影響を及ぼしていることが発表されていました。

このnoteでは、簡単にその発表の流れを述べ、ジェンダー・ギャップについて大学生の方に参考になるところ、就職活動や就職先を決める上でのヒントです。

結論からいいますとジェンダー・ギャップが大きい会社には就職しないほうがいい。その中でも特徴としては、年収の高いところ、女性登用率の低いところ、そしてIT企業はできれば避けた方がいい。それよりは社会課題に対して日ごろから号令だけでなく、積極的に取り組み、ESG投資をしている。エシカル消費をしている職員が多いところです。そちらのほうがコミュニティとして土台をかろうじて維持させています。これは発表後に3日程度考えたもので、発表の中にはありません。

そのような結論にいたった発表の流れはこうです。

まず、多数派である男性は、組織という場を支配しています。その支配していることを気づいていない。数の論理で意見を押すことができてしまう。そのため、男性であるということだけで特権、つまり、優位性があります。そのことに普段、気づいていないということでした。

これを多数派(男性)による特権(優位性)と定義していました。会社組織の中で男性であるということだけで優位に立てるのです。つまり、女性は、もともと不利な立場にあり、平等な環境にいないのです。どうしてこういったことが起こりうるのでしょうか。

それは、背景として組織構造上に歪みがあると指摘します。男性は、数が多いだけでなく、職位も上になるほど多い。そしてそれは、自然にほっておいても改善されることはないといいます。もともと平等でない場ですからハンディを背負って働くということになります。そのハンディを男性が気づかない。

その気づかない理由として無意識の慣習(バイアス)といったものがいくつかあげられていました。それは、人であればだれもが楽な方へ、楽な方へと流されてしまう習性です。それが3つあげられていました。

一つ目は、類似性。人は似ているもの、似ている人を好む傾向がある。異質なものを嫌う、避ける傾向がある。同類どうして固まりやすい、話をしやすいということ。二つ目は、確認性。確かめ合いたい。そのため、矛盾を嫌う傾向がある。その複雑が故に生じる問題を解きたくない。三つ目は、電池切れ。忙しくて余裕がない。それに由来する、そういったことにかまってられない。まあいいやといったあいまいにする性向。これらは楽をしたいという選択肢です。

これらはだれしもあるでしょう。わたしも発表者から言語化されたことでなるほどそういうことだったのかと気づきました。それから発表者の方たちは、取り組み例をあげながら、どうしていったらいいかということを述べていました。その施策についてはここでは書きません。

さて、大学生の方が会社を選ぶときにどのような参考になるのでしょうか。

まず、年収の高いところは注意した方がいいでしょう。30歳の推定年収が1千万円を超えるところ。その理由は30歳の働き盛りの若い人に長時間働いてほしいという企業側の思惑があります。また、30歳前後というのは、転職をしたくなる時期で、そういった時期に会社を辞めていってしまうことが多い可能性が指摘できます。そして、なにより年収が高いということは会社の姿勢が収益第一主義ということがあげられます。

次に会社役員の顔ぶれを見る。その中に女性役員がいるのかいないのか。いるとすれば何人いるのか。上場企業の女性役員の割合は11%。10人に一人が平均。管理職の中に女性はどの程度いるのか。平均は15%。なるべく平均以上のところにする。社外取締役に女性役員を登用しているかどうか。

そういった年収の高い人たち、また、女性役員が少ないところとしてあげられるのが、IT業界です。できればIT企業ははずしたほうがいい。

利益至上主義がどれだけの弊害をもたらしてきたのか。それは、ジェンダー・ギャップの現状を見ても明らかです。それらのことからなにがいえるのか。

大学生の方々にとって就職先が社会課題にどのように取り組んでいるかです。少なくとも社会課題に対して意識を向けて、号令だけでなく、本気で取り組んでいること。結果は問わないことにしましょう。男女問わず、機会の平等を与えているか。

ただ、ジェンダー・カードを議論の出発点にしない方がいい。あくまで男女平等に機会を与えているか、そういう工夫をしているか。しているならばそれはなにか。差別的な言動はあるのか、ないのか。そして結果は必ずしも男女平等にはなっていないのかもしれない。

アメリカの調査研究によれば、ジェンダーの差別行為による被害者の回復には、年収の1割が被害者自身で負担されており、やがて、離職してしまうといいます。

そして就職先の職員が家庭生活にてエシカル消費を実践しているかどうか。しているとすればどのようなことをしているのか。そういったことが問われるでしょう。

というのは、会社としての社会課題、家庭生活としてのエシカル消費、そのようなものは、コミュニティ形成・再生の取り組みをしている可能性が高いからです。いまどき、NPOで活動をしたことがないということはありえません。

いまは、国立大学に行ったから、国を変えてやる。そんなことを考えているひとはいないでしょう。ジェンダー・ギャップは、40年たっても解決の目を見ない。これから135年かかり、日本はいまだに遅れている。それが現状です。それに施策を提案するのがコンサルタント。経営コンサルティングをするというのは、それだけ簡単な問題ではないということです。

大学生の会社選びにとって参考になりますように。