ホロコーストはほんとうではなかった

40年前に20代の前半だった私はなにもわからないままアメリカの大学のキャンパスに住み始めた。たまたま一緒に住んで学業をともにしたのはミシガン大学の学部生。9人のユダヤ人男性だった。彼らのことは友達からジューイッシュ(Jewish)と聞いただけだった。しばらく他のアメリカ人の学生と違いはないだろうと勘違いした。

しかし少し時間が経つとどうもちょっと違う。友人の親友であるユダヤ人のマイク。彼はそれほどしゃべらない。背が高くて無口。何をいっているのかよくわからなかった。彼のガールフレンドはニューヨーク出身のブリジットだった。こんなお人形さんみたいにきれいな人だった。彼女もユダヤ人だった。

そしてもっと違ったのは彼らの進学先だった。おい、日本人。お前はミシガン大学を卒業したらどうするんだい。どっちの職業を選ぶのか。医者か弁護士か。なんだ、この質問は。わたしは国連の職員になるかビジネスの世界に行きたい。そう答えた。すると彼らの顔つきがみるみる変わっていった。なんだ医者じゃないのか。弁護士でもない。じゃ、どうして大学にきているんだ。そういいたげだった。それからまともに相手にしてもらえなかった。

彼らとはイスラエルのことを話したことは一度もない。また第二次世界大戦中にナチスドイツがユダヤ人を大虐殺した話などしようもない。ホロコーストというのは禁句だった。

12月7日付の英紙エコノミスト。その中にある記事にこういうのがあった。アメリカの5人にひとりがホロコーストというのはほんとうの話ではないという調査結果があるという。またホロコーストというのは現実の話を誇張してひどい話にしていると信じているひともいる。そんなことがどうして起こるのだろうか。記事はいくつかその理由を説明している。

ひとつはSNSの情報を信じ切ってしまっているらしい。特に18歳から29歳までのアメリカ人で20%のひとたちがホロコーストを信じていないという。年齢が上がるにつれてそれはなくなっている。これほどまでにSNSというのは影響があるのかと驚かされる。SNSで嘘の情報を流せばそれだけ鵜吞みにする人たちが多いということだ。SNSは嘘の情報であふれている。

次に記事によると中国発のTikTokは反ユダヤ傾向があるという。これもどこからきた説なのかはさだかではない。TikTokがユダヤ系に対して批判的なSNSであるということが書かれている。ここは調べる必要があろう。

また調査によると黒人とヒスパニックではそれぞれ27%、19%の割合でホロコーストのことを現実ではないと回答している。彼らはどうしてそう回答したかというとユダヤ人が権力を持ちすぎているためだという。この権力があることがどうしてホロコーストが現実ではなかったということを信じるのか。因果関係が不明である。とにかくそういう理由で信じてはいない。

わたしは歴史は正しく伝えないといけないと思っている。わたしの知り合ったユダヤ人はとても勤勉だった。ほとんど勉強しかしていないような連中だった。ほとんどが大学院に合格した。それだけアメリカで成功しなければならないというプレッシャーがあったのだった。

彼らを含めてアメリカではユダヤ人が人口の2%だという。そのうち70%が民主党であってリベラルな支持者が多い。彼らはアメリカの北東部、ボストンからニューヨーク、そしてワシントンDCに多く住む。またマイアミやシカゴにもいる。残りの30%は共和党で超保守派であるといわれている。

わたしの知り合いはほとんど北東部の都市から来ていた。あのとき間違ってもホロコーストはほんとうではなかったといったとしたら。その結末はとても恐ろしいことになっていたに違いない。